三年生編 第90話(6) [小説]
会長の出産予定日をぺろっと忘れるっていう大失態を犯したけ
ど。
津川さんから嬉しい話を聞いて、気分がぐんと持ち直した。
津川さんが最初に現実的って言ったみたいに、会長の提案は必
ずしも津川さんへの善意からだけじゃないんだと思う。
船員の奥さんが抱えているハンデ。
一年のほとんどを、ご主人抜きで過ごさないとならないってこ
と。
そのマイナスをうまく解消出来なくて娘さんを失った会長は、
どうしてもその失敗を繰り返したくないんだろう。
育児や家事を少しでも分担してくれる、信頼出来る同居人が欲
しい。
期限付きだったあっきーの補助がすごく機能したことで、会長
にも津川さんを呼ぶ踏ん切りがついたんじゃないかなと思う。
会長は、一人が好き? 賑やかなのが好き?
最初は、静かで一人きりが好きなのかなっていう雰囲気だった
んだ。
違うね。会長はずっと一人だった。
好きも嫌いもなく、どうしようもなく一人だったんだ。
芯が強い会長だから耐えられてたけど、本当はものすごくしん
どかったんじゃないかな。
会長がスナックでアルバイトなんて、最初はどうしても信じら
れなかったんだけど。
津川さんと同じで、会長も家にいる雰囲気が欲しかったのかな
あと……そう思えてしまった。
−=*=−
病院から戻ってきた実生とバトンタッチする形で、今度はしゃ
らが病院に出かけていった。
サポートする方も一人じゃないから、出来ることを人数で割り
振れる。
手伝えることは限られているかもしれないけど、大一番を控え
ている会長に、僕らがいるから安心してって言えることが大事
なんじゃないかなって。そう思う。
「いっちゃあん!」
母さんの呼び声に、部屋を飛び出した。
「なに?」
「お隣に、陣中見舞いを持ってって」
「らじゃー!」
母さんから、でっかいお重をぼんぼんと渡される。
そう。会長の家は住人が増えたんだ。
これから、炊事も洗濯も量が増えるだろう。
家事負担が重くなるのは大変だけど……。
きっと会長は、それを楽しみにするんだろうな。
ああ、こんなにいっぱい大事な家族が出来たんだなーって。
今日の花:ネマタンサス(Nematanthus gregarius)
ど。
津川さんから嬉しい話を聞いて、気分がぐんと持ち直した。
津川さんが最初に現実的って言ったみたいに、会長の提案は必
ずしも津川さんへの善意からだけじゃないんだと思う。
船員の奥さんが抱えているハンデ。
一年のほとんどを、ご主人抜きで過ごさないとならないってこ
と。
そのマイナスをうまく解消出来なくて娘さんを失った会長は、
どうしてもその失敗を繰り返したくないんだろう。
育児や家事を少しでも分担してくれる、信頼出来る同居人が欲
しい。
期限付きだったあっきーの補助がすごく機能したことで、会長
にも津川さんを呼ぶ踏ん切りがついたんじゃないかなと思う。
会長は、一人が好き? 賑やかなのが好き?
最初は、静かで一人きりが好きなのかなっていう雰囲気だった
んだ。
違うね。会長はずっと一人だった。
好きも嫌いもなく、どうしようもなく一人だったんだ。
芯が強い会長だから耐えられてたけど、本当はものすごくしん
どかったんじゃないかな。
会長がスナックでアルバイトなんて、最初はどうしても信じら
れなかったんだけど。
津川さんと同じで、会長も家にいる雰囲気が欲しかったのかな
あと……そう思えてしまった。
−=*=−
病院から戻ってきた実生とバトンタッチする形で、今度はしゃ
らが病院に出かけていった。
サポートする方も一人じゃないから、出来ることを人数で割り
振れる。
手伝えることは限られているかもしれないけど、大一番を控え
ている会長に、僕らがいるから安心してって言えることが大事
なんじゃないかなって。そう思う。
「いっちゃあん!」
母さんの呼び声に、部屋を飛び出した。
「なに?」
「お隣に、陣中見舞いを持ってって」
「らじゃー!」
母さんから、でっかいお重をぼんぼんと渡される。
そう。会長の家は住人が増えたんだ。
これから、炊事も洗濯も量が増えるだろう。
家事負担が重くなるのは大変だけど……。
きっと会長は、それを楽しみにするんだろうな。
ああ、こんなにいっぱい大事な家族が出来たんだなーって。
今日の花:ネマタンサス(Nematanthus gregarius)