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てぃくる 1006 双頭 [てぃくる]


 双頭は、それぞれの頭が別方向を向いている。
 互いに見つめ合うことはない。

 視野を広くして見出せるものを増やすためというポジティブな解釈もできるが、互いにそっぽを向いているため何一つまとまらないという諧謔にもなる。

 だが。実際に頭が二つなくとも、我々はしばしば双頭になる。是か否かの判断が即座に下せぬ状況下では、二つの己がせめぎ合うからだ。どちらも己であり、どちらに従っても選ばれなかった方が口汚くなじるのだ。

 俺の身を勝手に使うな、と。

 双頭が厄介なのは、頭が二つあっても動かせる身が一つしかないことなのだ。その上、身はしばしば頭の命令を無視する。動かなかったり、勝手に動いたり。

 ああ、頭は一つだけでいい。
 二つあっても知能が二倍にはならないのに、二日酔いの頭痛は二倍になるからだ。



yur.jpg



「おっさん、おっさん。俺らはどっちも頭じゃないんだけど」


(^^;;





 大きくなりすぎたユリノキの梢を落とした時、切り口の周囲から伸びた新梢が二つ立つことがあります。どちらか一方が優勢になれば単なる芯替わりですが、画像のように並立すると独特の樹形になりますね。

 優劣を常に求められる味気ない世の中ですから、互いにそっぽは向いていても双頭で存在し続けられるというのはむしろ幸せなのかもしれません。





  そんな自分でいたくない と思ったら
   頭が二つになっていたとさ






2 Heads by Coleman Hell



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てぃくる 1005 山椒が小粒でちっとも辛くない [てぃくる]


【身内から出た賛美】
 実績がないものほど、同族のよいしょに頼るということ。

【薮だから坊主】
 薮医者にかかってしまったら、結局坊主の世話になる。

【酒に交われば赤くなる】
 下戸でねえ……。

【厚物に懲りて生足を拭く】
 さすがにもう毛糸のパンツはないでしょ。蒸れるよ。

【蔕の横が好き】
 蔕(へた)のところは硬いから嫌だってやつが多くてよ。そこがうまいのに。

【待てよ 懐炉の日和あり?】
 いくら寒がりでも、そろそろ暖房器具を片付けましょう。

【雀のお涙頂戴】
 戸締りしてる場合じゃないと思うんだけど。

【早起きは三文芝居】
 得だって言われても、飯炊きさせられるだけじゃん。

【言わしとけ新人だから】
 若造の言うことなんざだあれも信じやしねえって。

【心傷膨大】
 ろくでもないこと膨らませて吹聴するやつぁ、地獄に堕ちろ!

【旅に道連れ要はお情け】
 はいはいはい。荷物持ちとご機嫌伺いでございますね。はいはいはい。

【尻に轢かれる】
 かあちゃん、頼む! ダイエットしてくれ! 俺の身が保たん。

【石橋を叩いて検査する】
 打音検査は知ってる! だからって、叩いて壊すな!

【水魚のまぐわり】
 交わるだけで済むわけないじゃん。

【歓呼 通りが湧く】
 そりゃあ優勝したんだから、パレードは賑やかになるよ。

【OBが短気で助けにならない】
 じいさんは、教えるのは好きでも教わるのが嫌いだからなあ。

【口から先に倦まれる】
 べらべらしゃべるやつはうっとうしいんだよ!

【安物がいいと銭を要しない】
 結局のところ、安物で間に合う。

【一緒の県名?】
 未だに佐賀と滋賀の区別がつかない。

【完全超悪】
 そんなのいないなあ。小悪人ばかりでねえ。


sns.jpg


【三勝じゃ小粒でぴりっとしない】
 オータニサンくらいとは言わないけど、もうちょい勝ち星計算できないと……。



 とか。ことわざを徹底的にいじって遊んでみました。
 ちなみに、画像のサンショウですが。小粒どころか実がなりません。山椒は雌雄異株で、雄株は花がいっぱい咲いてもそれだけなんです。まあ木の芽としてはオトコノコも使えますから、それでいいかと。




  ことわざは 逆の解釈をしても意外に通じる






Proverb Of Ashes by Brad Mehldau



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てぃくる 1004 白い蝶が飛ぶ [てぃくる]


 俺たちの蝶は紫色と相場が決まっている。
 バイオレットというくらいだからな。
 だが、中には白い蝶を飛ばすやつがいるんだよ。

 顔がなまっ白い蝶なんざ願い下げだが、だからと言って呼吸困難で紫色になられても困る。白い蝶禁止令が出ているわけじゃなし。目くじらを立てない方がいいんだろう。

 ただ、菫色という表現だけは使わないでくれ。たとえあんたが菫であってもだ。わかったか!


ara.jpg


 なんか、普通のスミレが彼らを見てぶつくさ言ってますが。
 白地にほんの少し紫色の筋が入ったアリアケスミレの花は、濃紫色のスミレやヒメスミレに比べると地味です。

 でも、芝生にぽつぽつ生えていると、普通のスミレより白い蝶の方が目立つんですよね。刈り取りにも結構強く、意外にしぶとく生き延びますし。毎年、こいつが飛ぶのを楽しみにしています。




  幼児が 菫を摘んでいるのを見て
  母親が かわいそうだよと嗜めている
  ねえ貴女 その足を退けて
  わたしを 踏んづけてるのよ





White Butterfly by Desi Oakley



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てぃくる 1003 わさわさ [てぃくる]


 クスノキの新芽が一際鮮やかです。


kus.jpg


 今年は三月下旬から四月頭にかけて平年以上に気温が高かったせいか、常緑樹の開葉も早いように思います。芽が開いたかと思ったら、次の瞬間にはわさわさと大盛り。もうちょいゆっくり時を進めて欲しいんですけど。

 勢いのある新葉に目を奪われますが、樹下には古い葉が一面に散り敷いています。常葉のイメージが強いクスノキですが、葉はきっちり一年で入れ替わるんです。落葉樹のような裸木になる期間がないだけなんですね。

 クスノキは成長が早く、あっという間に大樹になります。盛り上がって空を塞いでいく新葉を見上げて、さもありなんと深く納得。
 わたしゃどんなに頑張っても、こんなにわさわさにはなれません。ちょぼちょぼがいいとこ。(^^;;




  万木の芽吹き揃わずそれぞれに






Turning A New Leaf by Nazareth



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てぃくる 1002 じじいが偉そうに! [てぃくる]


「白髪頭のじじいが、俺らを見下ろして偉そうにしてるな」
「しっ! 余計なことは言わんでいい。放っとけばすぐに禿げる」



ddl.jpg


 いや、あんたらもじきにじじいになるし、禿げるんだけど。(笑


 セイヨウタンポポがてんこ盛りに咲いています。職場構内ではカンサイタンポポと棲み分けているような印象が強いですね。もっとも二者の雑種もあるそうなので、真偽のほどはわかりませんが。今のところ、セイヨウタンポポと同じ外来種で種子が赤いアカミタンポポはまだ侵入していないようです。

 なんにせよ、黄色い坊主頭は元気があってよろしい!




  口肥えてサラダのたんぽぽ食べ残す





Dandelion by Tevin Campbell



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てぃくる 1001 雑巾は洗ってから干しましょう [てぃくる]


雑巾は洗ってから干しましょう



narag.jpg

誰が雑巾やねん!
ぼけえっ!





 さすがに雑巾呼ばわりはかわいそうかもしれませんが、決してきれいではないものがいっぱいぶら下がっています。

 ナラガシワの雄花です。風媒花なんですが、あまり遠くに花粉が飛ばないようで、近くにもう一本くらい生えてないとなかなか結実しないみたい。モップにしてはデリケートですね。



誰がモップやねん!
ぼけえっ!

(^^;;





  美醜を問わず花は咲く 君は?






Dirty Clothes by Lo La



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てぃくる 1000 千 [てぃくる]


千の花が咲く
千の花のどれ一つとして
同じものはない


osm.jpg
(オオシマザクラ)



千の花が咲く
全て違う花でも千集まると
一つの景色となる


千の一つとしての私
千集めた私のかけら

私はどこにいる?
私は何になる?






 ということで。とうとうてぃくるが千になってしまいました。総記事数が四千数百なので、まだ本編を上回ってはいないんですが、話数で見るととっくに本編を追い越してます。本末転倒ですね。とほほ……。

 でも、本編が書き上がったあとはのんびり小ネタでブログを続けていこうと思っていたので、その予行演習なのでしょう。ええ、そうですとも。

 本編用のブログ容量を確保するため、一年分を残しててぃくるの記事はnoteに移行しています。なので、本編完了後は一度リセットをかけて新たな性格のブログにするつもりなんですが。その前に本編がエタりそう。(T^T)

 いえいえ千の風にならないよう、がんばります。(^^;;




  幾千の想いか ゆらとかぎろひぬ






Mirage by Satin Jackets



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てぃくる 999 まだかいな [てぃくる]


「もうだいぶいろんな木々の葉が開いてるようなんだが。俺らはまだかいな」
「まだだ。俺たちは眠の木だからな」


nem.jpg


違う!

合歓の木だよ!


(^^;;





 マメ科の樹木は南方系のものが多く、ネムノキもそのご多分に漏れません。
 しっかり暖かくなってからじゃないと動き出さないので、まだ枯れ木モードです。

 莢だけはいっぱいぶらさがってますけどね。
 いつ裂けて種が落ちるんだろ?




  春眠といひて昼夜をとはづ寝る






Sleepy by Gong



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てぃくる 998 競演 [てぃくる]


「あなた、わたしと張り合おうっていうの? そのきったない色で?」
「余計なお世話だ。俺は見た目より量で勝負なんだよ。マッチングが風まかせだからな」

「ふふん。わたしの花を見に来てくれる人がいっぱいいるのよ。あんたは無視されるでしょ」
「その代わり、秋は俺の方がどんぐり豊作で目立つからな。その頃あんたは老ぼれだろ?」



kun.jpg


 満開のソメイヨシノと競い合うように、クヌギの開葉が始まりました。もう少ししたら花も咲き始めますが、クヌギの花は超お地味ですので花見の対象にはなりません。なかなか花の競演とは行かないようです。




  梢で咲き残った桜花一輪を
   緑の額に収めて飾る





U & Me by Illenium



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てぃくる 997 嘘 [てぃくる]


 がんばって嘘を吐こうとしてみたんだけどさ。
 嘘しか吐いたことがないからできないんだ。

 本当のことを言えよって言われるけど。
 誰が本当のことを知っているんだろう?

 真実を上回れる嘘はないって言うけど。
 嘘を上回れる真実もないと思うんだ。

 人を傷つけない嘘なら吐いていいの?
 人を傷つけない真実があるって以上に嘘くさいね。

 嘘で世界を手玉に取れると豪語する人も。
 自分は永遠に生きられるっていう嘘だけは吐かないんだ。

 嘘で固めた真実なんてものはないっていうけど。
 真実はそもそも固まらないものだよ。嘘以上にね。

 どれほど嘘に嘘を重ねても嘘はもう大きくならない。
 だって、それが嘘っていうものだから。


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 シラカシの円盤。切り口に現れるいろいろな模様は、この木が過ごしてきた履歴を刻み込んでいます。

 芯が腐っていること。中がきのこにさまざまに腐らされていること。虫が出入りしていること。木と材に侵入したきのことの間で攻防戦があったこと。入り込んだきのこ間で争いがあったこと……などなど。いろんなことがわかります。
 でも、それは必ずしも『今』ではないんです。終わったことであり、現在進行中のことであり、これからの変化を予兆として示すものであり。断面は、過去現在未来の連続体におけるほんの一瞬を示しているに過ぎません。

 断面に見える全ての事象を嘘偽りであると笑い捨てることはできません。確かに目の前にありますからね。
 でもこの断面を見て、全ての真実を明かせる人は誰もいません。誰も……いないのです。





  何も言わなくたって嘘は吐けるよ






Lies For A Liar by GERD



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