てぃくる 1195 食べ残す [てぃくる]
好き嫌いしてはいけませんとどれほど注意されても、食べたくないものは食べたくないんだ。
それは見目とは全く関係ない。美しいものが全て美味いわけではないし、逆に見た目がげろげろでも食味のいいものはあるからな。
そんなわけで。
俺は絶対にこんなもん食わんからな。

と。
悪食のヒヨドリですら滅多に口にしないヒヨドリジョウゴの赤い果実。
味ですか? 腐ったトマトの味がします。
ちなみに。有毒です。
ナス科雑草の果実は、見た目がよくても味が悪くて有毒のものが多いんですよね。ほんまに、誰が食べるんだろう?
食わず嫌いと言うが
食ったらもっと嫌いになるんだ
無理に食わせるやつの気がしれない
Bad Taste by Lana McDonagh
てぃくる 1194 冬の骨 [てぃくる]
春に柔らかい花でふわりと包まれる桜の木。
でも、幹や枝はむしろ武骨です。長枝と短枝の組み合わせが連なる造形には、ケヤキのような流麗さがありません。また、枝はしばしば腐朽や強風で折れて失われ、その部位から先の寸が詰まって樹形を不規則に歪めます。
生き残るために苦闘を重ねた姿を、曲がりくねった骨として主張する。そう捉えれば、春の爆発的な開花が素晴らしい生命讃歌であることを素直に受け入れられるのです。
薄明に鉛のごとき冬の骨
Winter Bones by The Stars
てぃくる 1193 ずれ [てぃくる]

鮮やかに色づいているナツヅタの葉よりも
わずかな日差しを受けて照らし出されている樹皮の方が、なぜか暖かく感じられる。
色が我々に与えるイメージは必ずしも固定されていない。
もし日差しを受けている部分が少しでも青みを帯びていれば、受ける印象が逆転していたかもしれないのだ。
ほんの少しの色のずれ、ほんの少しの印象のずれ。
ずれで生み出されるものがあれば、ずれて損なわれるものもある。だからこそ、ずれは愛しいしおもしろい。
ともあれ。
もうとっくに落ちているはずの葉がまだ残っていたというずれは、しっかりと味わいたいね。
想いのずれは補正できるが
すれ違いの補正はとても難しい
The Gap by Thompson Twins
てぃくる 1192 燃え落ちる [てぃくる]
メタセコイアの葉が真っ赤になりました。
紅葉の盛りには実に見事な火柱になるんですが、鮮やかに色づくまでには一ヶ月以上かかっていますし、画像のように真っ赤に染まればすぐ落葉してしまいます。まさに一瞬の美。

燃え落ちるときは。
葉がぱらぱら散るだけではなく、羽片が枝ごとばさっと落ちることも多いのです。まるで、早く消火しないと木全体が燃え落ちてしまうと慌てているかのように。
地上が降り注いだ火の粉で埋まる頃には。
夕日の残照が、寒そうな幹や枝をほんのり温めるだけ。
寒風で枝が軋む音だけがかすかに響くようになります。
消し炭のうへに証紙の燃へ残り
果たされぬまま消ゆるものあり
Burn the Red by Karliene
てぃくる 1191 とんがる影 [てぃくる]
俺を見て
こいつとんがってると
敬遠するやつがいる

見た目ほどとんがってはいないんだが
最初から棘のないやつよりは
とんがって見えるんだろう
けどな
どれほどとんがって見せたところで
意味がないんだ
とんがって
誰かを傷つけることはないし
とんがって
自分を守ることもできない
せめて
影だけでも危なそうに見えないかなあと
日がな一日
日光浴をしている
かさこそ
◇ ◇ ◇
影。
本体の性質がぼやかされることも、強調されることもある。
だが、それらはしょせん影にすぎない。
本体がなければ存在しえず、本体が去ると同時に消える。
にもかかわらず。
影にしか目を遣らない御仁のなんと多いことよ。
閑居して我が身を日時計にする
Shadows of Longing by Mona Slowly
てぃくる 1190 見かけによらない [てぃくる]
「なんや、黒くて汚いもんがぶら下がっとるな」
「そういうやつには分けてやらん」
「そんなばっちいもん、頼まれたっていらんがな」
「おいしいんやで。味も知らんと、かわいそうに」
「他にいっぱいうまいもんあるから、いらん」
「ほう。買う銭あるんか」
「……ない」

(^^;;
確かに、高い銭こを払えばおいしいものはいくらでも食べられます。でも、野生動物はそもそも銭こを持ってないんです。秋は、餌がひどく少なくなる冬が来る前にしっかり栄養補給をしておかなければならない時期。どの動物も甘くておいしい果実をこぞって食べ漁ります。
画像の『黒くて汚い』果実はムクノキの実。樹木の液果の中では大きい部類に入るでしょう。しっかり熟すととても甘くなり、タヌキが喜んで食べます。ムクノキが豊作になった翌年には、タヌキのトイレからムクノキが山のように生えてきます。
残念ながら、今年は不作年。タヌキのトイレをチェックしているんですが、出てくるのはイチョウの種子(銀杏)とセンダンの種子。いずれも臭いわ有毒だわで、いかな悪食のタヌキでも喜んで食べているわけじゃないはず。でも、好物のムクノキもマメガキも不作なら、食べられるものをしっかり食べないと冬を越せません。
飽食の時代と言われて久しいですが、わたしたちにもいずれ食べるものを選べない冬の時代が来る……そんな予感がします。
あ、ムクノキの実はわたしたちが食べてもおいしいです。野生樹木の果実の中では、酸甘のバランスがいいトップクラスの食味でしょう。
狐狸の里には『人』という妖怪が出る
Forbidden Fruit by Kandace Springs
てぃくる 1189 師走の紅葉 [てぃくる]
「紅葉ってのは秋のものじゃなかったのかい?」
「細かいこと言いなさんな。師走に紅葉狩りができるんだ。プラスに考えなきゃ」

「楽観的に考えられるあんたがうらやましいよ」
「ほう?」
「値上げ値上げで、体だけでなく懐まですっかり寒くなったガラの悪いのがうろうろしててよ」
「む!」
「そいつらが紅葉を狩らずに親父を狩るんだ」
「世も末だな……」
(^^;;
こういうのがギャグではなく現実化しつつある世の中ってのは、実際どうなんでしょうかねえ。『闇バイト』が『病み売人』に見えて仕方がない昨今です。
ともあれ、師走が始まりました。あと一ヶ月。多忙な時期をなんとか乗り切りましょう。(^^;;
Arbeit Macht Frei (働けば自由になる)
第二次世界大戦中、ユダヤ人強制収容所のゲートに掲げられたスローガーンです。自由って……なんですかね。
Arbeit Macht Frei by Area
てぃくる 1188 横顔 [てぃくる]
てぃくる 1187 お味はいかが? [てぃくる]
枝ごとちぎれて落ちたクロガネモチの実が、路上にぽとりと落ちていました。

色だけ見ればおいしそうに見えるんです。でも、鳥が寄ってたかってせっせと食べているというわけではないようです。
モチノキの仲間は、葉、茎、実……どの部位も苦いです。罰ゲーム並の苦さですから、人間だけでなく他の動物も喜んで口にするものはいないでしょう。
わたしは、モチノキ、タラヨウ、ナナメノキ、ソヨゴと一通り実を食べてみました(もちろん、赤く熟したものを)が、味は予想通りだったものと意外だったものとに分かれました。
モチノキ、ナナメノキ、ソヨゴの実。しっかり赤くなって地面に落ちたものを拾って齧ってみたんですが、苦くないんです。酸味がなく、わずかに甘い。熟すと苦味が消えるんですね。ただ……味も素っ気もありません。決しておいしくはないです。
タラヨウの実。どうしようもなく苦かったです。色が赤くなっても、熟すまでまだ時間が必要だったのかもしれません。
で、画像のクロガネモチなんですが。まだ試していません。モチノキより開花や結実が遅いので、まだ苦いんじゃないのかなあと齧る前からびびっています。
# いや、本当に苦いんですよ。(^^;;
モチノキの仲間には飲料として使われているものがいくつかあり、いずれもかなり苦いのが特徴です。タラヨウの新芽を加工した苦丁茶、南米でよく飲用にされるマテ茶は、機会があればぜひ試してみてください。美容と健康にいいノンカフェインの健康茶です。……苦いけど。(^^;;
現実以上に苦いものはない
Bittersweet by Blanks
てぃくる 1186 嫌われ者が黄金になる [てぃくる]
誰であっても、最初から嫌われたいと望んでいるわけではない。出自なり生い立ちなりが性格形成に干渉して、嫌われ者になってしまうことが多い。そして。全ての嫌われ者が嫌われ続けることを是としているわけではないのだ。むしろその逆であろう。愛してほしい、理解してほしい、受け入れてほしいと強く望んでいるのに、差し出せば届くはずの手は誰にも届かず、逆にどんどん遠ざかる。最後まで隣に留まっているのは、孤独という名の始末に追えない餓鬼だけだ。
嫌われたくないという願望と嫌われているという現実がかけ離れている人間と異なり、他の生物には嫌われることを生き延びる術にしているものが多い。棘を備えたり、悪臭を放ったり、毒を帯びたり。それらを歓迎する者は極めて少ない。しかし、彼らが生涯嫌われ続けるとは限らない。
そこに生きて残り続けることと子孫を新天地に導くことは、時として背反する。それゆえ、嫌われ続けた者が突如として美の化身へと変身することもあるのだ。

ヘクソカズラの果実。まさに黄金の雫です。
完熟すると悪臭が薄くなり、実をついばむ鳥も現れるのでしょう。美味しくないと思うんですが、冬の間に少しずつ消費されていきます。
つやつやの粒は乾かしても劣化しにくいので、リースの材料にも使われます。我々もまた、彼らが臭い臭い嫌われ者であったことをすっかり忘れるのです。
時として嫌われても、時として好かれる。そんなのがいいなあと思うものの、なかなか思うようにはいきませんね。それが、動かしにくい感情に縛られる人間のもっとも厄介なところなのかもしれません。
朝陽を受けて輝く黄金の露は儚い
Dewdrop Cherryoak by Arborist