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三年生編 第108話(6) [小説]

あくまでも希望的観測。
僕のは、甘めの宣言だったと思う。
実際には、この四人で次にいつ集まれるかすらわからない。

かっちんの進路は聞いていないけど、なっつは初志貫徹で
教育大だろう。
僕の志望してる県立大と同じで、ここから通うのはしんど
いはずだ。

かっちんの進学先次第では、四人が物理的にばらばらにな
るんだ。
そして僕はしゃらとの時間を、かっちんはなっつとの時間
を最優先するだろう。

大きな変化を乗り越えて、今と同じ気持ちで四人で顔を合
わせることができるか。
それは……冗談抜きに挑戦になると思う。

僕の顔をじっと見ていたかっちんが、どわっと笑った。
僕の大好きな、屈託のない笑顔。

「はははっ! まあ、大丈夫だろ。俺らはタフだからよ」

「そうね」

かっちんの頭をごんとど突いたなっつが、にやっと笑った。

「わたしが毎日どついても壊れないんだから大丈夫よ」

「ええー?」

しゃらがぷうっと膨れた。

「ちょっと、やめてよ。そんなことされたらわたしは壊れ
ちゃう。ねえ、いっき」

同意を求められたから、思い切り混ぜっ返した。

「そりゃそうだ。しゃらをどついたら、百倍で返ってくる
から」

「いっきーっ!」

「ほら」

わはははははっ!
お母さんも含めて、五人で力一杯笑い転げる。

変化は来る。来てしまう。
でも、その変化に翻弄される前に……こうして少しだけ
『今』を楽しませてほしい。

そう思いながら。


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