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三年生編 第108話(6) [小説]

あくまでも希望的観測。
僕のは、甘めの宣言だったと思う。
実際には、この四人で次にいつ集まれるかすらわからない。

かっちんの進路は聞いていないけど、なっつは初志貫徹で
教育大だろう。
僕の志望してる県立大と同じで、ここから通うのはしんど
いはずだ。

かっちんの進学先次第では、四人が物理的にばらばらにな
るんだ。
そして僕はしゃらとの時間を、かっちんはなっつとの時間
を最優先するだろう。

大きな変化を乗り越えて、今と同じ気持ちで四人で顔を合
わせることができるか。
それは……冗談抜きに挑戦になると思う。

僕の顔をじっと見ていたかっちんが、どわっと笑った。
僕の大好きな、屈託のない笑顔。

「はははっ! まあ、大丈夫だろ。俺らはタフだからよ」

「そうね」

かっちんの頭をごんとど突いたなっつが、にやっと笑った。

「わたしが毎日どついても壊れないんだから大丈夫よ」

「ええー?」

しゃらがぷうっと膨れた。

「ちょっと、やめてよ。そんなことされたらわたしは壊れ
ちゃう。ねえ、いっき」

同意を求められたから、思い切り混ぜっ返した。

「そりゃそうだ。しゃらをどついたら、百倍で返ってくる
から」

「いっきーっ!」

「ほら」

わはははははっ!
お母さんも含めて、五人で力一杯笑い転げる。

変化は来る。来てしまう。
でも、その変化に翻弄される前に……こうして少しだけ
『今』を楽しませてほしい。

そう思いながら。


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三年生編 第108話(5) [小説]

「沙良?」

お母さんの穏やかな声がして、ドアがすうっと開いた。

「おばさん、引っ越しで疲れてるんだから休んでないとだ
めだよ」

さっと立ち上がったなっつが、お母さんをたしなめる。
その口調に苦笑したお母さんが、持っていたトレイを床に
下ろした。
トレイの上で、オレンジジュースの入ったグラスが四つ、
うっすら汗をかいていた。
なっつとしゃらが、手際よくグラスを配る。

「手伝ってくれて、ありがとね。本当に助かるわ」

「いよいよ明日ですね」

にんまり笑ったかっちんが、改めてしゃらの部屋をぐるっ
と見回した。

「そうね。いろいろあったけど……。やっとここまでたど
りついたっていう感じ」

「ああ、おばさん座ってください。疲れますよ」

かっちんが、しゃらのベッドを指差した。

「ありがと。じゃあ……」

そろっと入ってきたお母さんが、ベッドに腰を下ろして僕
らを一人一人見つめる。

「あなたたちも、とうとうここまで来たのねえ」

お母さんの感慨深げな言葉に、僕らは思わずうなずいてし
まった。

もちろんお母さんは、僕としゃらの付き合いだけじゃなく
て、かっちんとなっつがまとまったことも知っている。
商店街ってとこは、そういう情報が回るのが早いから。
でも、誰もそれに突っ込まない。

商店街の人たちにとって、最初から規定事実だったみたい
な。
それくらい、かっちんとなっつのコンビは歴史が長かった
んだ。

だけど、二人の関係の微妙な変化は一番近くにいた僕と
しゃらにしかわからない。
お母さんにとっては、いつの間にかまとまったっていう感
じなんだろう。でも、実際はそうじゃないんだ。

三年に満たない時間の中で、ものすごくたくさんの変化が
起きて、僕らはそこを泳ぎ切ってここにいる。
四人でここにいる。
その変化がここで終わりになってくれれば、どれほど嬉し
いだろう

でも。
変化はきっと僕らを再び押し流そうとするだろう。
今のこのつながりをずっと守ろうとするなら、僕らは変化
に挑まないとならないんだ。

昨日と今日とが違うように。
明日は今日と同じにはできない。

僕は思わず口に出していた。

「ここまで……来ましたね。でも、ここから、ですよ」

しゃらもかっちんもなっつも、引きずられるようにうなず
いた。

「僕は、来春大学に合格したら家を出ます」

しゃらにはもう何度も言ってるけど、念のため。
すっと俯いたしゃらが唇を噛んだ。

「同じ校舎で学ぶ時間も残りわずか。プロジェクトの最前
線からも下がりましたし。四人が四人、これから自分の道
を探します」

「そうね」

「僕らがこれから来る変化を乗り切って、笑顔でここにま
た集まれるように。別の意味でここまで来たのねって言っ
てもらえるように」

ぐんと胸を張った。

「御園理髪店は明日からリスタートですけど。僕らは毎日
がリスタート。それくらいの気持ちで行かなきゃなーと」



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三年生編 第108話(4) [小説]

「確かに、おばあちゃんの家や借りてた部屋だと限界があ
るもんなあ」

「そうなの。なんかね、最後まで自分の部屋っていう感じ
じゃなかった。いじりきれなかった」

「うん」

「ここは違う。今度は間違いなくわたしの、わたしだけの
部屋。誰にも気兼ねしなくていいよね」

「んだ」

「うふふ」

嬉しくてしょうがないという顔でぱっと立ち上がったしゃ
らが、まだ真新しい壁をそっと触った。

その光景は……僕、かっちん、なっつの三人にとって、地
味だけど最高の一瞬だったかもしれない。

高校入学の時、全ての不幸がいっぺんに押し寄せて崩れる
寸前だったしゃら。
何も悪くないしゃらが気の毒で気の毒で、僕らは思わず手
を伸ばした。
でも本当は。必ずしも純粋な善意だけでしゃらに手を貸し
たわけじゃないと思う。

最悪の中学時代を過ごした僕だけでなく、環境が変わって
大きな不安を抱えていたかっちんもなっつも、しゃらを取
り囲んで賑やかに過ごすことで自分の不安を薄めようとし
た。
そしてしゃらは、僕らの中核にぴたりとはまったんだ。

それは、決して必然とか運命じゃない。ただの偶然。
だから僕らは……本当に運が良かったんだと思う。

これまで、四人べったりの時間をずっと過ごしてきたわけ
じゃない。
クラスも、オフの過ごし方も、興味の方向も、もちろん性
格や嗜好もそれぞれに違っていて。
違うことが反目に変わったら、互いの距離が離れても仕方
なかったんだ。

実際、一年の時によくつるんでいたメンバーから、しきね
とてんくが脱落してる。
夢を追ったしきねはともかく、親友を失ったてんくは今で
も僕を恨んでいるだろう。

しきねとてんくのような離脱は、僕らの間にいつ起きても
おかしくなかった。
でも……。
僕らの結束は、出会ってから今まで揺らぐことはなかった。

一度も。
ただの一度も。

僕らの間に危機がなかったわけじゃないよ。

僕がしゃらと激しく揉めてた時。
そして、どつぼったかっちんがなっつとぎくしゃくしてい
た時。
誰もが自分自身のことで精一杯だった。
もしその時に衝突していたら、僕らの友情には深いひびが
入っていたかもしれない。

でも四人が四人、僕らの間のトラブルを誰かのせいにはし
なかった。
相手から逃げない。ちゃんと向き合う。僕らはその原則を
崩さずに、ここまで来れたんだ。
だからこそ面と向かってきついことも言えたし、耳の痛い
ことを言われてかちんときても最後に消化できた。

親友という言葉を、軽々しく使いたくないけど。
やっぱり、いっぱいいる友人の中でも、一番最初に友達に
なって、一番深くまでお互いに刺さって、一番自分をさら
け出せるようになった友達は他にいないんだ。
かっちんとなっつ以外にはね。

ただ……。
最高の時は、最高であるからこそ一番辛い。
こうして四人が何も構えず自然に集まれる日は、もうそん
なに残っていない。




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三年生編 第108話(3) [小説]

僕もかっちんもなっつも兄弟がいて。
しゃらも最初はそうだったんだ。
お兄さんがまだ小さかった頃は、きっとしゃらの家も部屋
もすごく賑やかだったんだろう。

でも。
お兄さんが姿を消してから、しゃらへの露骨ないじめが始
まって、しゃらは外で遊びにくくなったんだと思う。

自分の部屋にいるのが一番安全。
だけど、そこは一番孤独な場所だったんだ。

僕は……最初にしゃらの部屋に入った時のことを鮮明に覚
えている。
女の子の部屋にしてはシンプル……っていうより、シンプ
ルすぎるくらいデコレーションが少なかった。

自分の部屋が持てた途端にこれでもかと部屋をデコった実
生とは、そこが徹底的に違ってたんだ。

なんでかなーと。
その時はちょっと違和感を覚えただけだったけど。
今から考えれば、理由がよーくわかる。

自分の部屋を自分の好きなもので埋めると、それだけで完
結しちゃうんだ。
自分の作ったお城から出られなくなる……いや、出る気力
がなくなるんだろう。

いじめの影響で人に対して不信感を持ってるけど、それで
も人との繋がりは絶対に否定したくない。
自分の中だけには閉じこもりたくない。
しゃらの部屋は、そんな微妙な心模様を正確に表していた
んだと思う。

僕もそうだったな。
自分が間違いなく認められるもの。信じられるもの。
それだけで部屋を整えたい。

でも、そんなものは実在しない。
人だけでなく、物にだって全てに表裏や盛衰があるもの。
これなら絶対と思い込んだものほど、あっさりその逆サイ
ドが見えてがっかりするんだ。

鉢植えに例えるとわかりやすい。
ものすごく欲しかった花の鉢植えは、花が終わった途端に
化粧が剥げちゃう。ただの緑色の塊にしか見えなくなる。

それと……同じ。

だから、僕の部屋には何もないんだ。
しゃらの部屋以上にね。

もちろん、そんなのは自慢にもなんにもならない。
何もない薄ら寒い部屋は、そのまま僕の心象風景だと思わ
れてしまうから。

外でどんな楽しいことがあっても、僕はそれを心の中だけ
に留めて形に残さない。
大事なものは人に渡さず、自分だけのものにしておきたい
んだ。
でもそれを他人が見ると、何にも興味を示さない無感動で
冷たいやつっていう印象になってしまう。

見えるもの。
見せるもの。
見えないもの。
見せたくないもの。

部屋っていうのは……そういう感情のディスプレイになっ
ているんだなあと、しみじみ思う。

「おい、いっき。なに、にやにやしてんだ?」

おっと、かっちんに突っ込まれちった。

「いや、しゃらがこれから部屋をどう作り込んでいくのか
なあと思ってさ」

「うふふ」

しゃらが自分の部屋をぐるっと見回して、目を細めた。

「もう……ここから動くことはないよね。今度はしっかり
わたし色に染めるわ」

「なある。そっかあ」

なっつが納得顔で頷く。



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三年生編 第108話(2) [小説]

「おせーぞ、いっき」

「すまんすまん」

すでにねじり鉢巻で気合い十分だったかっちんが、手ぐす
ね引いて待ってた。

「荷物は?」

「大物は兄貴がほとんどやっつけた。あとは段ボール系だ
けだ」

「おっけー! しゃらの荷物は女性軍任せだろ?」

「そう。そっちはなっつと恩納先輩が仕切ってる。俺らの
出番はねえよ」

「わあた!」

仮住まいだったアパートの荷物は、もう引き払い済みだっ
た。
最初から、最低限の家具や電化製品しか持ち込んでなかっ
たものね。

商店街の人に借りた倉庫に収めてあったものが、荷物の本
隊になる。
車を使うほどの距離でもないので、レンタルのリヤカー二
台でピストン輸送。
倉庫から荷物を出して乗せる組、運んで新居前で荷下ろし
する組。新居に運び入れる組の三部隊に分かれてさくさく
と片付ける。

前の引っ越しの時もそうだったけど、手伝いの人数が多い
からあっという間だ。

おばあさんの家を引き払う時には、みんな湿っぽくなっ
ちゃったけど、今回は誰もが明るい。
そりゃそうだよ。新築ぴかぴかの家への引っ越しだから!

当然のこと、しゃらもご両親もテンションが高い。
アドレナリン出し過ぎて、あとで燃え尽きなきゃいいけど。
ちょっと心配。

商店街にとっては書き入れ時の夕方の作業だったから、本
業がある大人たちは荷物搬入終了と同時にさっと引き上げ
た。
そういう制限のない僕ら学生だけが、新しいしゃらの部屋
でささやかなお疲れさん会をやった。
と言っても、恩納先輩とりん、ばんこはバイトがあるから
すぐ離脱しちゃって、残ったのはいつ面。
僕としゃら、かっちんとなっつの四人だ。

上機嫌のかっちんが、音頭を取る。

「おいおい、とうとうここまで来ちまったよ。一昨年には
想像もつかんかったよなあ」

「そうだよねー……」

自分の部屋をぐるっと見回して、しゃらがふっと笑った。

「最初の家、おばあちゃんの家、仮住まいのアパート、そ
してここ。いつも自分のスペースがあるっていうのは、恵
まれてるなーと思う」

「そっかー」

ぷっと膨れたなっつが、文句をぶちかます。

「わたしも自分の部屋はあるけどさ。もうちょい静かな方
がいいなあ」

かっちんが苦笑いしながらうなずく。

「下が作業場だもんな」

「弟も騒がしいし」

「いつも賑やかでいいじゃない」

しゃらの一言で、場がさっと静まった。

「あ、ごめん。嫌味じゃなくって」

慌てて、しゃらが手をぱたぱた振った。

「わたしの部屋は、いつも必要以上に静かだったから」

「そうか……」



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三年生編 第108話(1) [小説]

10月2日(金曜日)

「じゃあ、いっき。四時半に」

「おけー! 楽しみだな」

「うんっ!」

ホームルームが終わるまで待てないっていう感じで、しゃ
らが教室からぶっ飛んでいった。

「いよいよか」

学内が、学園祭に向かって少しずつ盛り上がりつつある中。
しゃらにしか大きな意味がないもう一つの大イベントが、
すぐそこにまで来ていた。

しゃらのお父さんが下した大きな決断。
自分の店を再興すること。
それはお父さんだけの問題じゃ済まない。

ずっと調子が悪いお母さんのケアをどうするか。
しゃらの進路をどうするか。
生活と借金の返済が両立できるか。

きっと、いっぱい悩んだんだと思う。
でも、お父さんは決断した。

自分一人ではなく、かんちゃんという共同経営者と働ける
から、きっと山は乗り越えられる、と。

坂口地区の理髪店がお父さんの店一軒だけになってしまっ
たので、お客さんを確実に確保できるという見通しもある。
実際、林さんから借りた店舗で営業してた時はすっごい忙
しそうだったから。

決めたら揺らがないのは、お父さんの特徴だ。
そこは、しゃらがそっくり。
本当に頑固で、一度決めたら安易に引かない。

しゃらの家族が最後に拠り所にしていたおばあさんの家を
売って、それを元手に借りていた林さんの土地と店舗を購
入し、改築ではなく新築で新しい店舗兼住宅を建てる。

夢も大きいけどリスクも大きい、まさに一世一代の賭けだ
と思う。
僕ならとてもそこまで出来ない。

でも、お父さんがお店を再興しようとした理由は、単なる
プライドとかじゃないと思う。

林さんに借りていた店舗は、もし林さんが亡くなったらす
ぐご家族に返さなければならないだろう。
そうしたら、お父さんは職も居場所も失ってしまう。
しかも、窮地にかんちゃんまで巻き込んでしまう。

自分や自分の家族だけでなくかんちゃんも含めて、この先
誰もが足元の不安を考えずに済むようにしたい。
それなら、まだ元気でばりばり働けるうちに思い切って
打って出よう……ってことなんだろう。

三ヶ月ちょっとという突貫工事で、何もなかった更地の上
に立派な店舗がどーんと建った。
でも、その中身はまだ何もなかった。

店という容れ物に、何をどうやって満たしていくのか。
お父さんとかんちゃんは、開店後それに全力で挑んでいく
んだろう。
新しい店は、単なる出発点にすぎないんだ。

そんなことを考えながらぼんやり机を見下ろしていたら、
ゆいちゃんがちょろちょろっと寄って来た。

「二人でどっか行くのー?」

「ん? どこも行かんよ。これから、しゃらの家の引っ越
しなんだ。手伝いさ。同じ町内だけどね」

「引っ越し?」

「そ。親父さんが新しく住居兼用の店を建てたの。これま
では借りてた店舗だったから」

「ふうん。でも、一緒に作業するんでしょ? いいなー」

「なに、マカとわ倦怠期かー?」

ぐわっつーん!
後頭部にゆいちゃんの本気パンチがめり込んだ。

「ぐえー、ぐーかよ」

「ろくなこと言わないんだからっ!」

ゆいちゃんの表情が冴えないのは、マカがいよいよ臨戦態
勢に入ったからだろなあ。
やっぱ、医進は勉強量はんぱないよ。
あのマカでさえ苦戦してるみたいだから。

そんなゆいちゃんを見て、永見さんがざまみろって顔で
笑ってる。
永見さんも、ルックス上々の割には浮いた話が一つもない
んだよなあ。

本人にそっち系興味なしってわけじゃなく。
アプローチしてほしい人は誰も来ないのに、ハエだけは
いっぱいたかるという図式なんでしょ。ぐひひ。

おっとっと。
ゆいちゃんや永見さんをいじってる場合じゃない。
さっさと行かなきゃ。

「ほんじゃお先ー」

「ういー」

教室の何か所かで、気のない返事が響いた。
そろそろみんな、てんぱってきたなあ……。




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ちょっといっぷく その214 [付記]

 いつもお読みいただき、ありがとうございます。
 本編休止、お弁当休暇中です。

 てぃくるを二巡させましたが、このあと本編の最後の在庫を吐き出します。これで在庫ゼロ。わはは。(^^;;

 2010年のスタート時は怒涛の勢いだったのに比べると、まさに竜頭蛇尾ではあるんですが、だからと言ってつまらないエンディングにはしたくはないので、たっぷり仕込みの時間を使います。これからしばらく、ほとんどてぃくるだけになると思います。

 三年生の10月後半部分が書けない限り、半端に本編を継ぎ足しアップしないつもりです。

 ◇ ◇ ◇

 さて。これからお届けする第108話と109話ですが、大きなイベントをお届けします。

 本作は、父親の転職に伴っていっきが山形から田貫市に来るところから始まりました。誰も知り合いのいない高校で、早々に知り合ったのが恋人のしゃらでした。しゃらがいっきに対して好意を寄せるようになったのは、しゃらの家族の再生に真剣に取り組んでくれたからなんです。

 一度店を潰されてしまったしゃらの父親は、いっきたちのサポートもあって家業を再開。そのあとかんちゃんを巻き込んで一気に再生を加速し、店のリニューアルに踏み切ったのが三年になってすぐ。林さんという同業者の土地家屋を買い取って上物を建て直し、いよいよ新装オープンです。それが今回お届けする二話になります。

 いっきが手伝ったのは、あくまでもスタートアップだけ。自分の再生も不十分なのに、人に手を貸すことはできませんから。でもいっきが起点になった再生アクションは大きな流れに乗りました。その集大成が、御園理髪店のリニューアルなんです。

 とてもめでたいんですが、いいことばかりではありません。資金に余裕のない御園家は大博打を打ったことになりますし、しゃらの母親の体調も一向によくなる気配がありません。それでも。賽は投げられたんです。

 いっきは、店の再生に関わった人たちと喜びを分かち合うだけでなく。人生の厳しさ、困難さについてもじわりと思い知らされることになります。

 好ましいイベントではあっても、全てを薔薇色に塗ることはできない。そういう苦さも込みで、お読みいただければと思います。

◇ ◇ ◇

 閑話休題。バレンタインデーですね。
 おっさん……というか、すでに爺さんのわたしには縁のないイベントですが、息子の受験も終わりましたし、気分あげあげでいきたいところ。でも、新型コロナのとばっちりで業務がぎちぎちに詰まっています。
# 再雇用後の方が忙しくなるって、どうなのよ。(^^;;

 まあ、ぶつくさぼやいていても仕方ありません。麦チョコを買って、自分にご褒美をやることにしましょう。安いし。(笑 


 ◇ ◇ ◇

 定番化させるつもりでコマーシャル。(笑

 アメブロの本館で十年以上にわたって書き続けて来た掌編シリーズ『えとわ』を電子書籍にして、アマゾンで公開しました。第1集だけ300円。残りは一集400円です。最新作は第25集で、第26集も近々刊行予定です。
 kindke unlimitedを契約されている方は、全集無料でご覧いただけます。







 ◇ ◇ ◇

 つーことで、三月後半までてぃくるを挟みながら本編をお届けしてまいります。どうかお付き合いください。


 ご意見、ご感想、お気づきの点などございましたら、気軽にコメントしてくださいませ。





ugk.jpg


寒さに耐えて赤くなってるわけでも

春を先取りしてるから赤いわけでもないの

ただ単に 赤いの

それでいいでしょ?




 ウグイスカグラの花。
 本来の花期はもっとあとなんですが、真冬からもう咲き始めます。がんばるなあ……。





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