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三年生編 第105話(3) [小説]

「あのー」

一年の高橋くんが、こそっと校長に聞く。

「どうして、僕ら見られているんですか?」

「人数が多いからだよ。それだけさ」

「あ、そうか」

校長の説明で一安心。
確かに、部員総勢で七十人超すもんな。
ほとんど全員来てるし。

「ほら、もう少しで始まるぞ」

「あれ? 校長は前には……」

「行かないよ。学校側の代表責任者は顧問の桧口くんだ」

そっか……。

「今回の受賞は、彼女のキャリアにとっても非常に大きな
箔になる。顧問はお飾りなんかじゃないよ。大勢の生徒を
預かり、指導し、その資質と能力を高めるための重要な触
媒だ。真剣勝負で成長したのは工藤くんだけじゃない。彼
女もまた、いろいろなことをこなして、教師として一回り
器を大きくした」

うん。

「その晴れ舞台だよ。大いに胸を張っていい」

校長が、嬉しそうに目を細めた。

会場の明かりが少し薄暗くなり、壇と来賓席のある前の方
がライトアップされた。

会場のざわめきが落ち着くのを待っていたかのように、女
性の声でアナウンスが流れた。

「お待たせいたしました。これよりHGCC主催第十九回
全国高校ガーデニングコンテストの総合結果発表及び授賞
式を行います」

「開会に先立ちまして、会場のみなさまにお願いがござい
ます。会場内では携帯電話、スマートフォンの電源をお切
りください。また、式典中の入出場は極力お避けください
ますようご協力をお願いいたします」

慌てて、みんな携帯の電源を切った。

「最初に、大会審査委員長、小熊忠之(おぐま ただゆ
き)よりご参集のみなさまに一言ご挨拶申し上げ、引き続
き審査結果を発表させていただきます。なお、本コンテス
トの最終審査結果についてはすでにコンテストサイトで公
表してございますので、アナウンスのみにとどめさせてい
ただきます」

アナウンスが終わると同時に貴賓席の一番壇に近い席に
座っていたおじいさんが立ち上がって、しっかりした足取
りで壇に登った。

「大会審査委員長を務めさせていただきました、小熊忠之
と申します。高校ガーデニングコンテストも、回を重ねて
十九回となりました。おかげさまで多くのみなさんにご応
募いただけるようになり、手作りの大会を盛り上げようと
奮闘してきた我々HGCCの初期メンバーは大変嬉しく思っ
ております」

「受賞された六校のみなさんだけでなく、応募してくだ
さった全国各地の高校でみなさんの創意工夫が盛り込まれ
た素晴らしい庭が造営されたことを、審査員一同とても心
強く思っております。今後ますますの活動発展を望んで止
みません」

うん。
特別変わったところはないと思う。
発言を書き取っているしのやんの表情にも、大きな変化は
ない。

「それでは、これより結果発表および表彰に移ります」

最初のアナウンスと同じ女性が、淡々と結果を読み上げて
いく。グランプリ、準グランプリ、そして優秀賞三校。
最後に審査員特別賞としてぽんいちがアナウンスされた。

コンテストサイトを見た時にもそうだろなあと思ったんだ
けど、うち以外は全部私立校で女子校だ。
うちは、異色中の異色だってことになる。

結果発表のあとで賞状と記念品目録の授与があって、鈴
ちゃんは緊張していたみたいだけど、ちゃんとこなした。
ここまでは、まあこんな感じかなという淡々とした進行。

でも……。


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