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三年生編 第105話(2) [小説]

一時間ちょっとかかって、授賞式の会場になっているホテ
ルに到着。
地味なのかなあと思ってたんだけど、予想以上に立派なホ
テルで、やっぱりびびる。

大広間に向かう廊下の絨毯の上を、部員全員こそ泥のよう
にこそこそ歩いていった。

「どわあ!」

「ひええ!」

ひ、広い!
何百人かは座れるんじゃないかって感じで、ぎっしり椅子
が並べられていて、一番奥に僕らと向かい合わせになるよ
うに来賓席と壇がしつらえてある。

「校長先生、こんなに来るんですか?」

鈴ちゃんの足が震えてる。

「わははっ! 親とかも見に来るのさ。だから席は多い」

「あ、そうかー」

「コンテスト自体がものすごく大掛かりな音楽系や演劇な
んか、もっとすごいよ。全国大会の授賞式にしてはこじん
まりの方だろ」

うーん……僕は賞とかそういうのにはこれまで全く縁がな
いから、この規模だって十分びびっちゃうけど。

一応、事前に参加人数を事務局に伝えてあったらしくて、
会場係員さんが僕らを席に案内してくれた。部長の鈴ちゃ
んとマネージャーの四方くんは、壇の上。

学校が授賞式会場に近い僕らは一番乗りだったみたいで、
僕らの着席後に続々と他校の生徒さんが会場に入ってきた。
それがまた、見事に女の子ばっか……。

その様子を鼻の下を伸ばしながら見ていたかっちんは、
なっつにがっつり尻をつねられていた。わははっ!

「そっかー。やっぱ、そうなっちゃうんですねー」

菅生くんと高屋敷くんが、顔を見合わせて複雑な表情。
校長がすかさずフォローする。

「まあな。うちの男女比は異例中の異例だよ。だからこそ
の審査員特別賞さ」

「そうっすよね!」

生徒だけでなくて、先生や保護者も続々入場して千近い席
はほとんど埋まった。

「うーん、壮観だなあ……」

ぐるっと見回したしのやんが、うなってる。

「予想以上に規模が」

「うん。もっと地味かと思ったけど」

黒ちゃんとみぽりんがひそひそ。

でも、きょろきょろしている田舎者の僕ら自体が、他の人
たちからものすごく見られていることに、みんながだんだ
ん気付き始めた。

どうしても、その視線が気になって小さくなっちゃう。
とほほ。


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