SSブログ

三年生編 第95話(3) [小説]

放課後、えびちゃんのところに行って英語の勉強の相談を
する。

「うーん、やっぱり伸びてないのね」

「時間も多めに当ててますし、自分では手抜きしてるつも
りはないんすけど」

「効率が悪いってことね?」

「はい。数学や物理みたいに、原理さえわかればなんとか
なるみたいなとこがないので。取りこぼしがどうしても」

「そうなのよねー。これも相性があるから」

えびちゃんは、僕が持ち込んだこれまでの模試の答案用紙
を丁寧に見てくれた。

「英単語や慣用句を徹底的に叩き込む。それで、読解の方
はかなり上げられるわ。こればかりは、かけた時間と成果
が比例する。ぎりぎりまで地道に積んでくしかない」

「やっぱそうかあ」

はあ……。

「それでもね。積み木の絶対数を増やしておけば、組み立
てたり、積み木の構造や種類を理解したりしやすくなる
の。たとえばね」

「はい」

「文脈の中で一つどうしてもわからない単語があったとし
ても、他が分かっていれば類推出来るのよ。あ、こんな感
じの単語じゃないかなあって」

うん。確かにそうだ。ジェニーとやり取りしてる時はその
繰り返しだったもんなあ。
おっと、もう一つ。

「せんせー、ディクテは?」

「てきとーでいい」

「へ?」

「そこは、配点との兼ね合いね。外大目指すとかならあれ
だけど、受験英語では会話術はほとんど求められてないの」

「そっかあ……」

「それより、知識としての英語の地盤をきちんと固める方
が先。地力が出来れば、点数の揺れが小さくなるから、そ
れを目指して」

「はい!」

やっぱ、実力を上げる特効薬っていうのはないってことか。
しゃあない。時間の配分を調整しよう。

「あ、そうそう、工藤くん」

「はい?」

「学園祭のタマ出し。わたしが仕切っちゃったけど、みん
な大丈夫?」

えびちゃんは、せんこーが偉そうにって見られることが心
配なんだろなあ。

「大丈夫だと思いますよ。他のクラスもきっと似たり寄っ
たりじゃないかなあ」

「ふうん……」

「ぽんいちは、ちょっと特殊なのかもしれませんね」

「え? 特殊って?」

「僕は最初からぽんいちなんで、ここのスクールカラーは
ほんとに肌に合うんですけど、転校してうちに来た子は、
極端から極端ていう変化になじめないかも」

「どういうこと?」

「先生は、三年生の担任は初めてですか?」

「そう。初めて」

「それなら分からないかも。体育祭の時もそうだったと思
いますけど、ものすごーくシラけた感じを受けませんでし
た?」

「思った。一番馬力が出る年代なんだから、もっとバカに
なって楽しめばいいのにって」

「ですよね。僕は一、二年の時はものっそ楽しみました
よ。でも三年になってからは無理」

「どして?」

「三年で飛び越さないとなんないハードルが高すぎるから」

「……」


nice!(49)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー