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三年生編 第95話(2) [小説]

カバンの中からノートパソコンを出したえびちゃんは、
ゆーちゅーぶの動画を再生して、僕らに聞かせる。

「トッド・ラングレンていうおじさんが、一人で全部作り
上げたアカペラっていうアルバムがあるの。その中の『ホ
ジャ』って曲ね」

わ! 洋楽か……。

アップテンポの軽快な曲。確かに合唱になってるけど、こ
れってかなり難しいんじゃ……。

みんな、うーん……て感じになっちゃった。

「あはは。楽譜見てパート分けしてって、そんなめんどく
さいこと要らないでしょ。楽しく一緒に歌えば?」

おおーっ!

そんなら出来る。英語の歌詞覚えなくても、ハミングでも
鼻歌でもいいってことだもんね。

練習なしの一発ドンなら、お遊び要素入れよう。

「提案!」

「お、工藤。なんかあんのか?」

「鳴り物足そうぜ。音の出る好きなもの持ってきて、曲と
一緒に鳴らすってのはどう?」

「あ、いいねー」

えびちゃんは、自分の提案が通った時点で満足したみたい
で、僕のオプションを歓迎した。

「それなら簡単だし、アピールできっか」

「いろいろごたごたあったからよ。がっつり鳴らして気晴
らしだ!」

「おーし! どうだ、みんな?」

「いぎなーし」

「おけー」

「やろー」

どおっと盛り上がる感じではなかったけど、ただ歌うより
は賑やかになっていいじゃんて感じで。
すんなり提案が通った。

まあ、どうせステージに立つなら花火上げた方が楽しい。
五分くらいの音の花火をばんばん打ち上げればいいよな。

にやっと笑ったえびちゃんが、余計なことを言い足した。

「あとで、歌詞を配ります。せっかくだから、ちょっとだ
けでも英語の勉強してね」

だああああっ……。


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