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三年生編 第92話(6) [小説]

「論点を整理します。僕が思うに、問題が二つあります」

「一つ目。さっき言ったように、まだゆるい時代のぽんい
ちのイメージを引っ張ってる生徒がいる」

「もう一つ。学校への反発で、わざと規則を破りに行って
る生徒をどうするか」

「校長先生、大高先生、どうですか?」

校長がいる前では、さすがに吠えられなかったんだろう。
むすっと黙り込んでる大高先生を横目に、校長が静かに口
を開いた。

「そうだな。一つ目は私に、二つ目は沢渡くんに責任があ
る」

校長は、僕らの責任にはしなかった。

いや、それは違うね。
生徒指導は学校側のマターだから、責任を持ってやる。
それを具体的に言っただけだ。

逆に言えば、僕らはそれに従う義務がある。
指導されるのがいやなら、学校を止めればいい。
そういう冷徹な宣言だ。

「もし僕らが風紀委員会として何か議論するなら、二つの
問題点をこれからどうするかしかないと思うんですが」

「生徒の意見として、だな」

「もちろんです。最初に校長先生がおっしゃったように、
僕らは今回違反した二十三人の擁護も非難も出来ません。
ああ、そういう子が出ちゃったんだ。なんだかなあ……そ
れだけです。でも、それだけなら委員会なんか何の意味も
ない」

最初から意味なんかないんだけどさ。
そう言ってぶん投げたら、損するのは僕らだけなんだ。

「だから、少なくとも風紀委員の僕らは、みんなに新しい
意識を持ってもらうまで何度でも議論を繰り返します。生
徒と学校側に問題提起を続ける。それが委員会の意義だと
思ってます。どうですか?」

今度は校長にではなく、大高先生に直に投げ返した。

「……」

返事がない。
相当頭に来てるんだろう。だめだこりゃ。

やれやれという顔でゆっくり立ち上がった校長が、散会を
宣言した。

「今日はここまでにしておこう。学校側の公式見解を準備
しないとならん。次回、それを論議して欲しい」


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