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三年生編 第100話(3) [小説]

「それだけ、穂積さんが激しく孤立してるってことさ」

「あ、なるほど。そっかあ……」

今穂積さんが抱えている、どこにも頼れる人がいない絶望
的な孤独と不安。
同じ不安を、僕もしゃらも経験してる。だから、穂積さん
の心境がすっと理解できてしまうんだ。
それがいいことなのかそうでないのか、わからないけどね。

「まあ、どっかに接点は必要だと思う。レンさんは、それ
は理解してくれたはず。レンさんが対応してくれるとして
も、いきなり色っぽい話になんかならないよ。まずは様子
見。お見舞いからでしょ」

「だよねえ。今までずっと面会謝絶だったんでしょ?」

「そう。本当に状態が悪かったみたいで」

「大丈夫かなあ……」

「僕も心配なんだ。ただ」

「うん」

「待ってるだけじゃ、転換点はこない。そして、穂積さん
もそれはわかってると思う」

「そっか。穂積さんなりに、エスオーエス出したってこと
なんかなあ」

「僕はそう思ってる。だから、そこからでしょ」

「そだね。元気になってくれるといいけどなー」

「うん」

「あ、そだ。いっき」

「なに?」

しゃらの本題は僕の様子見じゃないんだろう。
なにか別ネタがあると見た。

「昨日りんから電話があってさー」

しまったあああっ!!
親がリコンしたってことをしゃらに流しといてくれって、
りんに頼まれてたんだ。大ちょんぼ。ううう。

「親のことでしょ?」

「うん……」

「ごめん。最初にりんから電話があって、しゃらにも事情
説明しといてくれって頼まれてたんだ。ごめん」

「いや……びっくりはしたけど、わたしもなんとなく……」

だよな。
プロジェクトの方で、僕より濃くやり取りしてるんだから、
りんの態度からなんとなく気配を嗅ぎ取ってたんだろ。

でも、しゃらの関心事はそっちじゃなかったみたい。

「りんからの電話で、とんでもないこと聞いちゃったの」

「は? 親の離婚のことじゃなく?」

「違う。そっちは、りん的には解決済みみたい」

さもありなん。
でも、とんでもないことって? うーん、なんだろ?

「爆弾ニュース?」

「間違いなく巨大爆弾」

「うーん、りんからの爆弾ニュースか。なんだろ? うー
ん……」

「おめでたいことなんだけどね。本当に喜んでいいのかど
うかって」

!!
ピンと来た。

「もしかしてっ! 素美さん、一発逆転っ?」

「あたりー。さすが、いっき。勘いいね」

「うわあ! でも、親が全力阻止するんじゃ……」

「うん。まだすっきり解決ではないみたい」

「そっかあ」

「でも、慎重な素美さんが、しかも一度ふられてるのにそ
こから盛り返したってことは、もう引き返せない状況なん
だと思う」

「うがあ。すげえ……」

「りんも、びっくりしてたわ。まさか、あそこまで思い切
ると思わなかったって」

「そっか。りんにも内緒にしてたってことか」

「うん」

「そらあ……間違いなく本気。まじってことだな」

「だと思う」

「じゃあ、あとは関係者の説得、かあ」

「関係者っていっても、素美さんの親だけでしょ?」

「そう。でも、お父さんがものすごく囲い込んでたからな
あ」

「そうなんだよね。大丈夫かなあ」



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