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三年生編 第68話(1) [小説]

7月24日(金曜日)

一学期が終わる寸前に、プロジェクトやしゃら絡みで小さな
ごたごたがあったけど、どれも一応決着が付いた。
僕としてはほっと一安心だ。

追試を受けた実生は辛うじてそれをクリアして、なんとか明
るい夏休みが送れることになったらしい。
ずっと前からバイトを探していた実生は、結局無難にリドル
のウエイトレスをすることになった。

それまでは行きがかり上しゃらが代行してた部分を、完全に
実生が引き継ぐ形になったわけ。
他の二人のアルバイターとのシフト制だからアルバイト代は
知れてると思うけど、客対を覚えるには手頃だと思う。
マスターは優しいしね。

マスターからアルバイト許可申請用の書類に署名とハンコを
もらってきた実生が、書き落としたところがないかどうかを
何度も確認していた。

「お兄ちゃん、これでいいかなあ」

「どれ」

今日提出して担任から確実におっけーをもらわないと、バイ
ト出来なくなるから、実生は真剣だ。

バイトでやる仕事の内容。
雇用者の名前と印鑑、事業所の所在地、連絡用の電話番号。
勤務時間と期間。時給。

うん。問題なし。
てか、マスターって小此木正伸(おこのぎまさのぶ)ってい
う名前だったのね。
みーんなマスターとしか言わないから、名前知らんかった。
だははっ!

「書類はばっちり。それよか、早稲田先生ってめっちゃいい
加減だから、必ず書類出したその場で許可印もらってね。先
生の後でやっとくは、やらないと同じ。それじゃ、なんか
あった時に困るよ?」

「う……そうだあ」

ぎりぎりになっちゃったからなあ。
追試がなければもう少し余裕持って書類出せたんだろうけど、
しょうがない。
ま、こういうのも経験ということで。

「さて、さっさと行こう」

ひょいとカバンを担いだ僕を見て、実生が慌てて書類をカバ
ンにしまった。

「待ってよう!」

「先行くでー」

「えーん」

妹と肩並べて仲良く登校なんてことはない。ちゃりだからね。
それでも、実生にとっては兄妹で一緒に行動できる数少ない
機会だ。
僕は、後ろで必死にちゃりを漕ぐ実生の姿を振り返って、思
わず苦笑いする。

そうなんだよなあ。

僕が高校に上がってからは、どっちかと言えば僕と一緒の行
動を避けてた実生。
それは、僕にしゃらっていう彼女が出来たから遠慮してって
いうだけじゃないと思う。

こっちに越してきてからは、僕が実生を庇わないとならない
事態が起こらなかった。
実生はそれを、本格的な自立を始めるきっかけにしたんだろ
う。

困った時はお兄ちゃんに頼ればいい。
実生が小さい時には、確かにそういうところがあった。
だけど、僕に頼ったり庇ってもらうのが必ずしも自分にはプ
ラスにならないってことを、少しずつ悟ったんだと思う。
だって、学年が違う僕らはずっと一緒にはいられないもの。

ただ、転校ばっかしてた頃はそれが実生のやせ我慢という形
になっちゃって、すぐ実生の体調に跳ねてしまってた。
結果として、実生が僕を頼り、僕が実生を庇う構図は変えら
れなかったんだよね。

でも。
こっちに来てからいじめの圧力が消えて、実生は無理しない
でのびのびと自分の我を出せるようになった。

自分と僕をいっしょくたに考える必要がなくなったから、自
分の好きなことやりたいことだけに集中出来て、好き嫌い以
前に僕のことを特別意識しないで済んだ。
それだけだと思う。

だけどね。
僕と実生とでは、父さん母さんの中での位置付けが全然違う
んだよね。

僕に対しては、二人とも早くから距離を置いてる。
男の子なんだから、自分のことは自分で決めなさいよって。
そこがものっそドライ。

高校の入学式で分かるでしょ。
僕ん時は、母さん、買い物帰りにジャージ姿で来たんだよ? 
今でも信じられんわ。
それなのに、実生の時にはドレスアップして、フルメイクし
て行ったからね。

でも、それは愛情の差じゃない。心配の差だ。

僕の周りに父さん母さんが立ててくれた防御壁は、もうどん
どん取っ払われてきてる。
そうしないと僕が外海に出られないから。

でも、実生の自立心は父さん母さんに信用されてないんだ。
まだシェルターの中に囲っておかないと、怖くてしょうがな
いって見られてるんだろう。
だから、母さんがちゃんとマンツーマンの対応をしてるんだ。

そして勘のいい実生はそれに気付いてる。
気付いてるだけじゃない。実生自身も自分からシェルターを
出る勇気はまだないんだよね。

高校に入ったばっかなんだから、焦る必要は全然ないと思う
けど、いずれは実生もこの家から出なければならない日が来
るだろう。

それを考えたくない。
ずっとこのまま、居心地のいい『今』を抱きかかえていたい。
本当なら、年頃的に僕との距離がもっと開くはずの実生が最
近妙に絡んでくる背景には……そういう先への恐れみたいな
意識があるんじゃないかなと思う。

その恐れの気持ちは、僕にもあるけどね。

家族としてのスクラムをがっちり組んできた僕らは、それを
解くのに苦労してるんだ。
僕も苦労してるよ。

自立して家を出ることは、家族の間の信頼や愛情の終わりな
んかじゃないよね。
でもそれだからこそ、どこかに遠心力が働かないと家を飛び
出す踏ん切りがつかないんだ。

たぶん。
僕の場合は、しゃらとの今後のことがその遠心力になると思
う。てか、僕はそうするつもりでいる。

それを実生がどう思うか。どう考えるか。

……僕には分からないんだよね。



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三年生編 第67話(7) [小説]

「まあ、これだけ生徒がいるんだから変わり者も何人かはい
るんだろうが。困ったもんだ」

「そうですよねえ。校長は、どう返事されたんですか?」

「くだらんことをほざく前に、ちゃんと勉強しろと言い渡し
た」

おっと。門前払い?

「『勉強』の中身を考えてくれると嬉しいんだが、あれじゃ
望み薄だなあ……」

いや、さすがは安楽校長だ。
ちゃんと勉強という意味を膨らませてある。

成績がどうのってことじゃない。
なぜ今のプロジェクトがあるのか、その成立過程をきちん
と学びなさい、そういう意味での勉強も含めてあるんだ。
でも、彼がその意図を汲めるとはとても思えないんだよね。

「しばらく用心するしかないですね」

「まあな。勝手にいじるなという警告は出したんだろ?」

「出しました。中庭の整備は学校からの委託事業ですから」

「そうだ。まず、そこからなんだよ。それが理解出来ん間は
何も認められん」

「彼……大丈夫ですかね?」

「クラスでも孤立してるようだな。その対応は担任と詰める
よ」

うん。それなら、僕らも安心出来る。

「すいません。厄介ごとを増やしちゃって」

「いや、そういう問題を抱えた子がいるという情報は貴重な
んだよ。あらかじめ分かっていれば、トラブルが起こる前に
いろいろ対応策を考えられるからな」

安楽校長のように考えてくれるのは、本当に助かる。

「追加情報があれば、また教えてくれ」

「はい!」


           −=*=−


人と人が繋がる。
それは、ものすごく簡単で、ものすごく難しい。

人が二人いて互いに繋がろうと思えば、それはあっけなく実
現する。何の苦労も努力も要らない。
でも片方がそれを拒否すれば、何をどうやっても繋がらなく
なる。

アプローチする方がいくら工夫を凝らしても、受け入れ側の
ドアが一度閉ざされてしまうと、それはおそろしく堅く、重
くなってしまう。
ドアを開ける努力をするのがばからしく思えるほどに。

ましてやアプローチが雑で無神経だと、開くはずのドアすら
全部閉ざされてしまうんだ。

「ふう……」

なんだかなあという面接を終えて帰宅した僕は、帰る途中で
見つけて撮った奇妙な画像をじっと見つめていた。
それは、ほとんど手入れされていない古い家の庭に、一面に
はびこっていた草の画像。
最初ツユクサかなと思ったんだけど、花が白かったんだよね。

「ミドリハカタカラクサ……かあ」

通称トキワツユクサ。
元々は園芸植物だったのが逃げ出して、野生化したらしい。
それは全然珍しくないんだけど……。
タネが出来ない植物なのにどうして雑草として広がれるのか、
とても不思議だ。

ちぎれた茎の破片からでも芽と根を出して増えることが出来
るから……ってことなんだろう。
ものすごい生命力だよな。

庭一面にびっしり広がって白い花を上げている光景を見て、
ふと思ったんだ。
プロジェクトっていうのもそれに似てるなーと。

いろいろ危機はあったけど、プロジェクトのメンバーが団結
し、知恵を寄せ合って乗り越えてきた。
本当にしぶとくて、打たれ強い。タフだと思う。

滝沢くんの中では、プロジェクトのメンバーが一面に咲き広
がっているミドリハカタカラクサの花に見えているんだろう
か?

花の一つ一つは、地味な目立たない白い花だ。
どれかが突出しているっていうわけじゃない。
それが無数に咲き揃うと、淡くふわりと地面を彩ってプロ
ジェクトという景色を作る。

彼はそれを見て思ってしまうわけだ。
こんだけ人数がいるんだから、そんなちんけな花じゃなく
て、もっと派手にばあんと咲けよ!
……ってね。

まあ、彼の言う理屈にも一理あるんだ。
プロジェクトの独自性や個性をもっと強く打ち出せないの
かっていう意見は、僕らの中でもあったからね。

でも、咲かせる花はやっぱりプロジェクトとしての花でない
と意味がない。
みんなが白い小さな花を咲かせようとしているところに、一
本だけヒマワリをどかんと生やしたって、浮くだけさ。
枯れ果てた庭の真ん中で、一本だけヒマワリが咲いていたら。
ものすごくみじめじゃないか。

一本だけで咲くことを選択した須山先輩みたいに、孤立する
ことをきっぱり受け入れてしまえば、周りのひんしゅくは買
うかもしれないけど、それはそれでありだと思う。
でも、ヒマワリ畑にしたいからヒマワリのままで俺を受け入
れろっていうのは、どうしたって無理だよ。

僕的には、見せる花の形なんかどうでもいい。
見事な全景を作るためには、一人一人が踏ん張って生き残ら
ないと意味がないんだ。
そして、一回咲いてそれで終わりじゃなくて、ずっと咲き継
いでかないと意味ないじゃん。

滝沢くんには、花が咲いている景色よりも、それが咲くまで
の過程に目を向けて欲しいんだけどね。

「まあ、いいや」

あの極論を取り下げない限り、彼をプロジェクトに受け入れ
ることは絶対に出来ない。

来年卒業していなくなる僕らの心象はともかく、顧問の中沢
先生の心象をすごく悪くしちゃったのは致命的だったんだ。
あれじゃあどんな手段で再アプローチを試みても、先生の方
でぎっちりブロックしてしまうだろう。
役員交替に乗じて入り込んで牛耳ろうっていう目も、もうな
くなったと思う。

もっとも、彼のは明らかなSOSだ。
それを誰がどんな風に汲むのか。汲めるのか。
僕には全く予想出来ない。

派手だけど、花が終われば枯れてしまうヒマワリの危うさ。
一年草の悲しさが。

じわりと意識の下に忍び込んでくる。

「……ったく」




tokiwat.jpg
今日の花:ミドリハカタカラクサTradescantia fluminensis 'Viridis')



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三年生編 第67話(6) [小説]

「そうだな」

「僕は逆で、我が強いくせに何でも飲み込んでしまおうとす
る。選ぶのも苦手で、人の渦に埋まっちゃう」

「わはははははっ!」

先生としのやんが大笑いした。

「でも、彼は僕と先生の悪いところがセットになってるんで
すよ」

「あっ!」

それで、先生にも分かったんだろう。

「そうか! そういうことか!」

「でしょ?」

「ああ。感情的なやり取りが苦手な癖に、選ばないで丸呑み
しようとするってことだな?」

「そうです。しかも僕以上に我が強い」

「見るからに……だもんなあ」

「自分を下げてバカをやらないと、丸呑みは無理っすよ。で
も、それが分からないんじゃなくて、出来ない。どうしても
出来ない。でも、友達は欲しいんです。それがああいう極端
な言動に化けちゃう」

「うーん」

「自分を下げるか、孤立を受け入れるか、どっちかを選ばな
いとならないと思うんだけど、どっちも嫌、じゃあねえ……」

しばらく考え込んでいた先生は、ひょいと顔を上げて僕に聞
いた。

「で、工藤くんは、彼をイジるの?」

「まーさーかー。僕がまだ一年なら考えますけど。受験生で
すから」

「そうだよねえ」

「それに、半端に関わって大失敗したことがあるので、僕は
関わりません」

「誰? まさか御園さんじゃないよね?」

どて。

「ちゃいますがな。先生の知らない人です。去年僕がバイト
してたとこの関係者。女子大生」

「ふうん。それは御園さんは?」

「知ってますよ。しゃらと二人でどやしたから」

「ど、どやしたあ!?」

「そう。ストーキングされたんです。半年以上つきまとわれ
ましたからねー。ひどかったっす」

しのやんが、興味深そうに首を突っ込んできた。

「なんでまた」

「さっきの彼と同じさ。友達は欲しいけど、自分は絶対に下
げない」

「なるほどね」

先生が納得したみたいだ。

「僕の前にも、いろんな男子学生に付きまとって彼らを壊し
てきたんですよ」

「ぐげえ」

「館長さんとちゅんさんから、最初にがっつり警告されたん
で、僕は徹底的に無視しましたけどね」

「へー。桂坂にそんなのがいたんだ。知らんかった」

「たまんないっすよ」

「でも、さっき大失敗って言ったじゃない?」

「ええ。最後まで徹底的に無視すりゃ良かったんですけど、
うっかり情けをかけて、本気でどやしちゃったんです」

「ははん。いい加減にしろだけじゃなくて、何かアイデアを
出したのか」

「そうです。善意のアドバイスのつもりだったんですけど、
彼女には中途半端な情けに思えたんでしょうね」

「どうなったの?」

頭の上に手を伸ばして首を吊るまねをする。
白目を剥いて、ベロを出す。
先生はそれで理解した。

「ひでえ……」

「未遂で終わったのがせめてもの幸いです」

「たまらんね」

「そうなんです。だから、さっきの彼にも関わりたくないん
ですよ」

「分かる。関わるなら徹底的に関わる覚悟がないと、どっち
も壊れるってことだな」

「はい」

「厄介だなあ……」

三人でなんだかなあと脱力していたら、ドアがノックされた。

「はい?」

「こっちにいると聞いたんだが、工藤くんいるかい?」

あ、校長だ。
さっと席を立って、校長を招き入れた。

「二年生の滝沢くんという子がそちらに行きませんでした?」

「来たよ。私のところに行けって言ったのかい?」

思わず苦笑する。

「まーさーかー。プロジェクトを好きにさせろっていうトン
デモな理由で入部希望を出してきたんで、やりたきゃ自分一
人で最初からやれって突き放しただけです」

「ああ、そうか。それでか」

校長が、納得したらしい。



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三年生編 第67話(5) [小説]

「うわ……」

「ちょ、いっき。校長はなんて言うんだ?」

「決まってる。君は、なぜ中庭をいじらせろと言うんだ?」

「まあ、そうだよな」

「きっと、滝沢くんはこう答えるよ。中庭を僕の好きにした
い」

「言っちゃう? それ言っちゃう?」

「言うね。間違いなく」

中沢先生が、呆れ顔でぽんぽんと椅子の背を叩いた。

「校長がそれでうんと言うわけないよ」

「もちろんです。でも、それだけじゃ済まさないと思う」

「え? どういうこと?」

「中庭は学校のものであって、君のものじゃない。その理由
では君にいじらせることは出来ない。私を納得させられる理
由を考えなさい。最初に僕に言ったのと同じ」

「無理だろさ。あの俺様じゃ」

「無理ですよ。でも校長は、その後の彼の返事や行動次第で
彼に監視を付けますね」

「あっ!」

中沢先生としのやんが顔を見合わせた。

「滝沢くんの極端な態度が、単なる性格の偏りから来てるの
か、それとも病的なものか。行動がエスカレートするような
ら、親を通して警告を出すんじゃないかな」

「ううー。絶対に、そんなやつを入れたくないね」

「まあね。でも、異常性のところはまだなんとも言えない。
極端な自分勝手なら、なんでプロジェクトにこだわるの? 
それこそ、ごちゃごちゃ言わないですぐに一人で中庭に穴掘
り始めるでしょ」

「む……確かにそうだね。俺様なのに、プロジェクトにこだ
わってるのは変だな」

中沢先生が、腕組みして首を傾げた。

「彼が本当に王様になろうと企んでいるのなら、最初は猫を
被りますよ。俺は何でもやりますって」

「ああ」

「それが出来ない。つまり王様になりたいってわざと誇示す
るのは、僕はサインだと思う」

しのやんが頷いた。

「そうか。確かにな」

「何のサイン?」

うーん……中沢先生には分からないのかあ。
ってことは、中沢先生がまだぼっち体質を引きずってるって
ことなんだよね。

『わたしは独りでいい。ほっといて』

そういうネガな部分をかんちゃんにぶつけないように、注意
しないと。
結婚したら、かんちゃんはきっと先生にべったり引っ付くよ
うになるよ。かんちゃんは、独りにされるのが寂しくて寂し
くてしょうがないんだから。
それを、甘く見ないようにしないと。

引っ付き虫のしゃらがいるから、僕にはよーく分かる。
中沢先生とかんちゃんは、ちょうど僕としゃらの男女逆パター
ンになってるんだよな。

僕がそんなことを考えてちょっと黙ってたら、しのやんが代
わりに答えてくれた。

「先生、トモダチガホシイ、ですよ」

「へっ? ありえんだろ?」

「いえ、間違いなくそうです」

しのやんも、中沢先生の悪癖には気付いてる。
意識が自分自身に向いていると、生徒の微妙な心の動きを見
逃す。見抜けない。

鈴ちゃんのフォローを先生だけにお願いしなかったのは、そ
ういう背景があるから。
先生自身が悩みや不調を抱えていると、そこから全然目が動
かなくなるんだ。僕らの方をまるっきり見なくなる。
それが怖くて怖くてしょうがない。

だから、会長で保険をかけたんだ。

今回もそうなんだよね。
最初に会った頃の先生なら、滝沢くんの抱えている心のひず
みはちゃんと見抜けたと思う。

先生は今上昇期。沢渡先生絡みのごたごたもすっきり片付い
て、プロジェクトでもきちんと監督役として機能し始めた。
そして何より、かんちゃんとのゴールインで達成感がある。
前よりずっと余裕が出来たと思う。

それでも、生活はこれまでとがらっと変わるよ。
私生活が忙しくなってきたら、意識は僕らにじゃなくて自分
自身に向けられる。事実そうなりつつある。
その分、猫拾いをしてた先生のアンテナの感度がどんどん下
がってるんだ。

ふうっ……。

「せんせー。もし先生が知らない環境にぽんと置かれたら、
自分から新しい人間関係を作りに行きます?」

「うーん」

考え込んじゃう先生。

「誰かがアクセスするまで待ってる方じゃないすか?」

「あたた、確かにそうかも」

「てか、先生の人脈を見ればすぐ分かりますよ。すっごい狭
いもん。先生がアプローチを慎重に選んで、いいと思ったも
のだけ受け入れてきた。いつも受け身」

「う……」

「つまり先生は、人との感情的なやり取りが疲れる。しんど
い。そこを出来るだけシンプルに、すっきりさせておきたい。
だから友達層がすっごい薄い」

「ううう、当たってるなあ」

「でも、それはスタイルの問題なんで、いい悪いじゃないっ
すよね?」

ほっとしたように、先生が頷いた。




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三年生編 第67話(4) [小説]

「君は、プロジェクトの部員募集ポスターをよく読んだ?」

一旦準備室に引っ込んだ中沢先生が、余部のポスターを持っ
て戻って来た。僕らの前でそれを広げる。

じょいなー渾身の一作。
その出来栄えは、ポスターにしておくのがもったいないほど。
気に入った先生が、鑑賞用として手元に保管してあったんだ
ろう。


『ハードガーデンプロジェクト部員募集

 中庭に心を植え、心を育て、心を繋ぐ。
 その理念に賛同して、中庭のお世話や活用をお手伝いして
 くださる部員を募集しています。

 学年、性別、経験は一切問いません。
 鈴木、四方まで、お気軽にお問い合わせください』


「君の目には、希望者は誰でも入れるっていう文章が見える
の? もし見えるとしたら、それは幻覚よ」

うん。
中沢先生、ナイス。

「問い合わせてくれって書いてあるよね? つまり、部長や
マネージャーが活動内容を説明するとともに、希望者の適性
をチェックして、そこで入部の可否を判断しても何もおかし
くない。違う?」

「……」

「嘘なんかついてないよ。ひとっつも」

しのやんが追撃。

「それにね。もし君が入っても、マネージャーの四方くんの
指示に従わなかった場合は、マネージャー権限で退部させら
れるの。それで君がプロジェクトに入る意味があるの?」

「……」

さすがに、一対三で、しかも相手が上級生と先生じゃ分が悪
いと思ったんだろう。

「もう、いいっす」

がたん!
乱暴に椅子を鳴らして立ち上がった。

その背中に声を掛ける。

「もし君が、僕らのプレゼン以上のものをやろうとして自分
勝手に中庭を破壊したら、学校から厳しい処分が下るよ。中
庭の整備は学校からの委託事業なの。僕らのお遊びじゃない」

「……」

「君がどうしても自分の思い通りにやりたいなら、まず校長
から中庭の整備許可をもらうところからやんなよ」

「出来るわけないじゃないすか。そんなの」

「はっ! だから、君は論外だって言ってるのっ!」

「……」

「僕はそこからやったんだよ。一人でね」

「!!」


           −=*=−


『入部願いは受理しません』

面接の結果を四方くんに流して安心させる。

「今時珍しいよなあ。あんな極端なジャイアン」

「空気読めてないし」

中沢先生は、思い切り不機嫌そう。

「大っ嫌いなタイプだよ」

「ですよねえ」

「あれは、私の親父そのものさ。あれがそのままでかくなる
と箸にも棒にもかからなくなる」

「うげえ……」

でも。
僕は、よーく似た人を知ってる。
それは橘社長でも、りんや加賀野さんの親父でも、糸井夫婦
でもない。高岡や市工のばかどもでもない。

工作部の須山先輩だ。

陰気でひっきー体質のはずの関口が、激しい敵意と嫌悪をむ
き出しにするほど、須山先輩のエゴ丸出しの姿勢はひどかっ
たんだろう。

僕らがそのエゴの直撃を食らわなかったのは、先輩に製作を
何もかも仕切らせたから。僕らを使って好きなように出来る
先輩が、ものっそ上機嫌だったからだ。
もし僕らの誰かがそれにけちを付けていたら、どう転んでい
たか分からない。

きちんと理詰めで考える関口でも、須山先輩には全く歯が立
たなかった。
それは、須山先輩に理屈が通用しなかったってことを意味し
てる。さっきの滝沢くんの姿勢と同じさ。

どこまでも直球で押し通される強い、堅い意志。
それは難局を切り拓く力になるけど、人を遠ざけて自分を孤
立させる毒にもなる。

滝沢くんにとっては、その力は何の役にも立ってない。
もったいないなあと思う。

「なあ、いっき」

「うん?」

「彼は、これからどうするんだろ?」

「むっちゃプライド高そうだからね。一人で僕ら以上のプレ
ゼンやってみろよっていう僕の挑発を真に受けるんちゃう?」

「げー」

「でも、さっき釘刺したことは無視できない」

「ああ、勝手に中庭をいじれば、僕らじゃなくて学校から処
分がってことか」

「そ。そうしたら、彼には出来ることが一つしかない」

中沢先生がにやっと笑った。

「ははは。工藤くんと同じ手続きを踏まないとならないって
ことだな」

「そうです。今、彼は校長に掛け合いに行ってるでしょう」

「えええっ?」

ずどん!
しのやんと中沢先生が、派手にぶっこけた。



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三年生編 第67話(3) [小説]

「そこらへんが鍵かなー」

「鍵、すか」

「そう。使えるか、使えないかのね」

「!! ちょ、先輩……」

「全ての可能性は排除しない。関口の時がそうだったろ?」

「う……」

「嫌なことから逃げたら、実を取れない。最初からお断りの
前提にはしないよ」

「……」

「まあ、四方くんの話を聞く限り、無理そうだけどね」

強張っていた四方くんの表情が緩んだ。

「じゃあ、放課後にここってことで話を振ってみるっす」

「おっけー。待機してる」

「迷惑持ち込んですんません」

「いや、厄介ごとは夏休み前に片付けないと、あとあと面倒
だからさ」

「そっすよね」

「夏休み中の当番表は確定?」

しのやんが、確認した。

「ほぼ確定っす」

「お盆明けなら、夏期講習終わってるから手伝えるよ。突発
的に穴が空いた時は声かけて」

「助かります!」

よし、と。
めんどいことは、さっさと片付けよう。


           −=*=−


そして、放課後。
僕としのやんの他に、四方くんから話を聞きつけた中沢先生
も参戦した。
中沢先生は、単なる野次馬だろうけどね。

実習室のドア付近の席で待ち構えていた僕らの前に、ノック
も失礼しますも何もなしで、いきなりがらっとドアを開けて
男子生徒がのしのし入ってきた。

うわ。
確かに、相当癖が強そうだなあ。

「入部希望で来たんですけど」

「ええと、学年、クラスと名前を教えて」

「2Eの滝沢です」

滝沢くん、か。

「プロジェクトの説明は、誰かから聞いてる?」

「いや、俺には必要ないです」

「どして?」

「それが入部に必要なんですか?」

これだよ。
思わず溜息が出る。

はあ……。

「あのさ。部活ってのは、それぞれの部にちゃんと目標と決
まりごとがあるの。うちだけじゃない。どこにもね」

「知らないっすよ。そんなの」

「あ、そ。それじゃあ、入部は認められないな」

ばしっ。
突き放す。

「誰でも入れるんじゃないんですか?」

「普通の子はね」

「……」

「あのね、なんでプロジェクトの説明を受けたかって、君に
確認したと思う?」

「知らないっすよ。そんなの」

「君が考えてるのとプロジェクトの性格が違ってたら、どっ
ちが優先?」

「……」

「君のやりたいようにやりたい。君一人で何もかもやるなら
それでいいさ。でも、うちは大所帯なんだ。そこで議論して
合議の上でいろんな活動を決めてるの」

「自分と意見が違うとか、気にくわないからこういう風にや
らせろっていうのはまず通らないよ。それでいい?」

「よかないです」

「だったら、最初から無理じゃん。論外だよ」

しのやんが、横から口を挟んだ。

「あのね。うちは部活としてはとても特殊なの。本来、自由
に活動出来るはずの部活としては異例なくらい、学校側の制
限が強くかかってる」

「それは、中庭っていう学校の施設を利用するだけじゃなく
て、それをいじるっていう性格上しょうがないの」

「こうやりたい、ああやりたいって君が勝手にかき回すと、
すぐに」

しのやんが首を切る真似をした。

「……ってこと」

「君は、この前のガーデニングコンテストのプレゼンがなま
ぬるいって思ったんでしょ」

「そうっす。あんなのガキのおままごとじゃないすか」

「ははは。ガキのおままごとか」

うんざり。

「じゃあ、あのプレゼン以上のものを、君一人で企画して実
行してごらん。それが出来たら入部させてあげる」

「そんな入部条件、どこにも書いてないっすけど」

「だって、僕らは今のプロジェクトを壊したくないもの。君
が勝手にかき回すことで壊れるのが分かってるのに、どうぞ
入ってくださいなんて人がいると思う?」

「じゃあ、部員募集のポスターは嘘ってことすね」

「どして?」

じっと僕らのやり取りを聞いていた中沢先生が、突然口を挟
んだ。



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三年生編 第67話(2) [小説]

「あーほーかー。部員総出で全力でやって、あれで精一杯な
んだぜ? 一人で力んで何出来るっていうんだ?」

「俺もそう思うんすけどねえ……」

「ずれてるなあ」

しのやんが、鼻をぴくぴく動かした。

「臭う。臭うぞ」

「なにが?」

しゃらが、ほよよって顔で聞き返した。

「ぼっちの臭いだ。臭い」

ぎゃはははははっ!

「まあねえ。大人しいぼっちなら、こっちにおいでよって声
掛けやすいけどさあ。俺様はなあ……」

「むりー」

しゃらが、うんざりって顔で首を横に振った。

「まあ関口みたいに、自分でぼっちって言っててもそれほど
でもないやつはいるけどさ。派手な攻撃性がない関口みたい
なのはともかく、俺様を引き入れちゃうとプロジェクトがが
たがたになる」

「そうなんすよ。絶対お断りなんですけど、誰でもおっけー
を看板に出してる以上、俺からは……」

うん。
それが四方くんの苦悩だ。
今は、入部窓口が鈴ちゃんと四方くんになってて、女子は鈴
ちゃん、男子は四方くんがさばくことになってる。

四方くんは、絶対お断りの俺様にどうやって入部希望を取り
下げさせるかで苦悩してたってわけだ。

「しゃあない。僕の方で面接するか」

「工藤先輩でさばけるんすか?」

「まあ、どんな子か直接見てみないとさ。判断のしようがな
いなー」

「任せていいすか?」

「そういうのが僕の仕事さ。振ってた旗はまだ全部下ろして
ないよ。こそっと振ってる」

ぱたぱた。

「きゃははははっ!」

しゃらがそれを見て笑った。

「僕もサポで付くよ」

しのやんがひょいと手を挙げる。

「助かる」

「じゃあ、俺の方で段取りしていいすか?」

「今日出来るだろ?」

「いけると思います」

「四方くんは席外してね。責任が今の三役にかぶっちゃうの
はすごくまずい。僕らが標的になった方が、ずっと実害が少
ないからね」

「分かりました! お願いします」

「おけー」

「わたしはー?」

しゃらがひょいと首を突っ込んできたから、しっしっと追い
払う。

「しゃらはダメ。そういう俺様は、付け入る隙を探してる。
僕としゃらの関係を知ってる彼は、必ず部の私物化がどうの
こうのって言い出すよ」

「う……そか」

「そういう要素をぎりぎりまで減らして、削り合いしないと
ね」

「しんどそー」

「うけけ。そうでもないよ」

「そうなの?」

「うちのクラスの方が、よっぽどしんどい。一度片山とやり
合ってみ?」

「やだあああっ!!」

しゃらが全力で拒否。気持ちは分かる。

四方くんが、不思議そうに聞き返した。

「その片山先輩っていうのは?」

「うちのクラスきっての皮肉屋だよ。ただ口が悪いっていう
だけじゃない。屁理屈のこね方が尋常じゃないんだ。四方く
んじゃ、まだ全然歯が立たないね」

「うげえ……」

「片山に比べれば、ひたすら俺が俺がって言い続けるだけの
単純なやつは大したことないよ」

「タフっすねえ」

四方くんが、でっかい溜息をつきながらこぼした。
四方くんは馬力はあるけど、決して打たれ強い方じゃないん
だよね。むしろ、しのやんの方が見た目以上にタフだ。
ゴナンの連中にぼこられても折れないで、ちゃんとバネにし
たからなあ。

「問題は、彼の俺様部分がちゃんと自発的行動に繋がるかど
うかなんだよなー」

「えと。どういうことすか?」

「仕切り屋はどこにもいるよ。でも、仕切り屋はちゃんと自
分から動くんだよ」

「あ、そうか。確かにそうすね」

「でしょ? うちのクラスにも黒木っていうジャイアン系の
仕切り屋がいるけど、奴は口先だけじゃなくて段取りもしっ
かりやる。民主的かどうかはともかく」

しゃらが、ぷっと吹いた。


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三年生編 第67話(1) [小説]

7月23日(木曜日)

昨日のプロジェクトの集会。

ごちゃごちゃあったけど、一応けじめが付いて。
感情的な衝突に持って行かないで、建設的にやろうっていう
交通整理があって。
顧問の中沢先生もきちんと仕切ってくれて。
三年生部員の義務解除も滞りなく宣言され、最後はわいわい
案出しをするいつものスタイルで盛り上がれた。

どういう流れになるか読めなくてはらはらしていた僕らから
してみたら、ほっと一安心だったんだけど……。

そんなに甘くはなかった。

明けて今日の昼休み。
もうどうしていいか分からんと弱り切った四方くんが、生物
実習室の蛍光灯をぼんやり見上げてる。

「なるほどー……。確かに、こんなケースは想像したことも
なかったなあ」

「ありえんだろ。普通は」

「だよねー」

僕としのやんとしゃら。
三人で、四方くんと同じように天井を見上げちゃう。

「うーん……」


           −=*=−


事の発端は、四月にまでさかのぼる。

沢渡校長との衝突の直後から、鈴ちゃんはじめ、全部員が血
相を変えて走り回っていた頃。
オリエンテーションの後でプロジェクトに入りたいって言っ
てきた新入部員は、十二人しかいなかった。

まだプロジェクトが危機の真っ只中にあるのに、それでもい
い、やりたいって子ばっかだから、一番馬力もやる気もある。
サブマネ指名された江本さんも高橋くんも、そして実生もそ
の第一期生。

プロジェクトが落ち着いて、徐々に盛り上がってきた頃に、
主にみのん目当てで入ってきたのが二期生の十人。
まあ、みのんにはまるっきりその気がないから失望してやめ
る子が出るかなーと思ったんだけど、黒ちゃんみたいに後か
らプロジェクトのおもしろさが分かって、はまるんだ。

その十人、まだ誰もやめてない。活動にも熱心だ。
ただ、ちょい、軽いんだよね。
だから、四方くんがぶち切れた意味がよく分かってない。
それはまだしょうがないかなーと思う。これから徐々に鍛え
られていくでしょ。

んで、その後。
一期、二期の新入生の波が過ぎた後で、ぽつぽつ入ってくる
子がいる。

この子たちが……すっごい厄介。
つまり、クラスに居場所がないから逃げ込んで来る子なんだ
よね。

実生も言ってたけど、ゆがんだ受験の影響で一年生の間の学
力や意識のばらつきが大きくて、クラスではみる子が出やす
い状況は確かにあると思う。
でもそれとは関係なく、はみる子はやっぱりはみるんだ。

中学での人間関係は持ち越せないし、部活やクラスでの友達
作りを最初にしくじると、うまく行った子たちのグループに
は後からなかなか入れない。
そういう子が孤立感を深めて、逃げ場を探すようになるんだ。

規則や制限がゆるくて部員が多いプロジェクトは、そういう
子たちには格好の避難場所に見えるらしい。

いや、きっかけはそれでもいいの。
プロジェクトの中でゆっくり友達を作ってくれればいいし、
プロジェクトの仕事をしている間に楽しいなって思ってくれ
ればいいから。
北尾さんが、プロジェクトをうまく利用したみたいにね。

だけど、寂しいから誰かかまってくれっていうのは困るの。
それは自発的にやって欲しい。
黒ちゃんとかみぽりんとか、ゆるふわ系の先輩がなにげにサ
ポしてて、それなりになんとか持ち直してきてるけど。
いずれはちゃんと自立して欲しいんだよね。

そこが……部員の活動管理をしてる四方くんの頭痛のタネだ。

それだけでも十分に厄介だったんだけど、それ以上の災難が
どすんと落っこってくるとはなー。

「うーむむむ」

「ぐわあ」

「ううー」

「はあ」

四人揃って、頭抱えちゃった。

「聞いたことないよ。入部させてくださいじゃなくて、俺を
入れろバカモノっていばるやつ」

「だよなあ」

ってことなの。
信じられないんだけど、いるんだよ。そういうトンデモ系が。
しかも新入生じゃなくて、二年生で。

僕らの代でも、うっちーやももちゃん、星野さん、あっきー
が途中加入組だったけど、みんなプロジェクトがおもしろそ
うだから来てくれたわけで。
仕切らせろなんていう横暴な俺様は、そもそもゆるーいプロ
ジェクトなんかには来ないよ。

それが、なんでまた。

「相当変人なんでしょ?」

「間違いなくそうっす。元々ジャイアン系なんだけど、クラ
スではそいつをイジる物好きはいないので、放置プレイ」

「だよなあ……」

「この前の体育祭でも委員長の仕切りを無視して勝手に暴走
し始めたんで、先生がどやしたんですよ。おまえ一人のため
のイベントじゃないんだぞ。だあっとれって」

「ぐわあ……なんだかなあ」

「信じられないっす」

「それが、なんでまたうちのプロジェクトを標的に?」

「この前のガーデニングコンテスト審査のプレゼンを見てた
らしくて」

「うん」

「生ぬるいって」

どどどおっ!
全員、力いっぱいぶっこけた。




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