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三年生編 第105話(10) [小説]

「まあ、小熊さんの気持ちはよく分かるんだけど、こうい
うところでは言って欲しくなかったなあ」

「ど、どういうこと……ですか?」

「僕ら以外の各受賞校への講評。えらく素っ気なかったで
しょ」

「あ、そう言えば」

「いくらコンテストサイトで丁寧に書いてありますよって
言っても、受賞式でほとんどスルーみたいな扱いはとこと
ん不愉快さ。僕らだけがその逆。コンテストサイトでは独
創的な活動展開を高く評価するみたいな素っ気ない書き方
だったけど、授賞式ではすごく持ち上げたでしょ?」

「そっかあ」

「ああいう言い方じゃ、まるで僕らだけが受賞に価するみ
たいに聞こえちゃう」

「げー……」

「一生懸命にやってきて見事グランプリ取ったのに、なに
よその塩対応って、思っちゃうよね」

「うう、確かにー」

「まあ、どっちもどっちだと思うけどね」

「そうなんですかー?」

「審査委員からしてみたら、金をそんだけぶちこみゃ、そ
りゃあいいものできるでしょ。あんたら、そもそも考え方
がおかしくない? 少しはコンテストの意義を考えなさい
よ! 学校花壇コンテストじゃない。高校ガーデニングな
んだよ! ……ってこと」

「うん。わたしもなんかイメージ違ったなあって」

「でも、規定でそこを細かく制限してなかったってこと
は、応募した学校には責任がないよね? そこは、常識で
考えてくださいってことだったと思う」

「なるほどなー」

「うちは完全手作りだから、常識の線を引き直すガイドラ
インに使われたんでしょ」

「ぐえー」

頭を抱えた鈴ちゃんが、しゃがみ込んだ。

「えげつないー」

「あはは。会長がこそっと漏らしてたんだよね」

「え?」

「こういうコンテストには、いろいろあるよって」

「そりゃそうさ」

いきなり横から声がして、びっくりしてのけぞっちゃった。

「あ、桧口先生」

「賞を出す方にも受ける方にも下心がある。こういうコン
テストってのは、すべからくそういうものだよ」

先生の論評は、いつも通りでものすごくドライだ。

「そうだなあ。ミスコンを考えたら分かりやすいでしょ」

なるほど!

「自分が美人だっていう自己アピールをする。ミスコンは
そういうものでしょ?」

「はい」

「それにどんなメリットがある? 二人とも、それを考え
てごらん」

確かにな。すっごい分かりやすい。
うんうんと頷きながら、鈴ちゃんが答えた。

「ええとお。賞金がもらえたり、モデルさんとか女優さん
とかの仕事をもらえたりぃ」

「そ。主催する側は、いろんなニーズに適合する美女をコ
ンテストの名目で集めて、選抜することができるよね?」

「はい!」

「それはウインウイン、つまり双方に利益のあるとてもい
い機会のように思える」

「違うんですか?」

「お金が絡まなければ、ね」

「あ……」

鈴ちゃんが、ぐいっと腕組みした。



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