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三年生編 第102話(7) [小説]

「婚約……かあ」

正直、結婚決めてるなら婚約になんの意味があるのかなあ
と思ったんだけど、伯母さんの説明はとても分かりやす
かった。

まあ、僕には当分縁がないよな。まだガキだし。
問題は、それにしゃらが納得してくれるかどうかだけど。

さて。
脱線はそこまでにして、勉強を再開しようと思ったら、ま
たドアホンが鳴った。

「宅配かな?」

どたどたと階段を降りたら、家に戻ったはずの伯母さんの
姿が。

「あれ? 忘れ物ですか?」

「いや、別件」

そして伯母さんと一緒にいたのが、これまた予想外の人た
ちばかりだった。

弓削さんと赤ちゃん。妹尾さん。そして……なぜか会長。
ど、どういうメンツ?
訳がわかんないけど、何か話があるんだろう。

「いつきくん、ごめんね。うちでやりたいんだけど、今亜
希ちゃんをナーバスにするわけにいかないので……」

「は……あ」

理解……不能。なんだあ?
でも、込み入った話みたいだし。

「席、外します?」

「本当は恵利花さんの耳に入れときたいんだけど、今日は
いないみたいだから、代理で聞いといて」

ううー、またそんな微妙な。

「てか、僕がいて大丈夫なんですか?」

「ああ、だいぶ慣らしが進んだからね。直接強いやり取り
が発生しない限りは問題ないよ」

伯母さんの口調が落ち着いてる。
最初の最悪の奴隷状態からは、ずいぶん改善が進んだって
いうことなんだろう。

僕はしばらく没交渉だったから、なんとなくほっとする。

「じゃあ、上がってください」

「おじゃましますね」

◇ ◇ ◇

妹尾さんは弓削さんと赤ちゃんのお世話役で、この件には
直接タッチしないらしい。

僕らからは離れたところに三人が陣取った。

ということは伯母さんと会長の直接会談、プラス僕……と
いうことか。
もっとも僕は単なる伝令で、会談内容をあとで母さんに伝
えろってことなんだろう。

伯母さんが、会長に向かってすぱっと切り出した。

「時間が限られているので、単刀直入に」

「ええ」

「波斗さんのお宅では八内さんが家政婦をされていて、で
も高校を卒業される八内さんが来春大学進学と同時に家を
出られると伺ってます」

「そうです」

「そのあと、どなたか家政婦を雇われるご予定は?」

「迷っています」

会長が、ふうっと肩で息をした。


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