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三年生編 第102話(3) [小説]

「いつきくん、みんな、居る?」

僕がリビングじゃなく、自分の部屋でもさもさ昼ごはんを
食べていたら、伯母さんから直電が来た。

「いやー、母はパート。父は買い物。実生はバイト。しが
ない受験生の僕だけが家に缶詰ですー」

ぶっ。吹き出す音のあとで、探りが入った。

「じゃあ……そっちでちょっと話をさせてくれない?」

は? なんじゃろ?

「弓削さんに絡んだ話ですか?」

「いや、違う。でも弓削さんがいるから、こっちじゃ出来
ないんだよ」

あ、そう言うことか。

「僕は構わないですけど、伯母さんプラスワン、ですか」

ちょっと返事が来るまで間が空いた。

「かなり人数が多いんだ。私入れて六人」

げえっ!

「ちょ、どういう話し合いですか?」

「話し合いってのとは違うかもね。めでたいことなんだけ
ど、それをちゃんとめでたくしないとさ」

めでたいことー!? なんじゃろ?
ううう、何がなんだか。見当が付かない。

「僕以外誰もいないので、会議場代わりに使うのはかまわ
ないですよ。でも、僕が同席できるんですか?」

「いつきくんは事情知ってるからね。同席してほしい」

うーん……誰が来るんだろ?

「じゃあ、お待ちしてます。すぐ、ですよね」

「そう。悪いね」

伯母さんは、すぐに電話を切った。
大慌てって感じじゃなかったけど、しゃんしゃんでは終わ
らない、めんどくさい話なんだろう。

リビングに降りて床にフローリングワイパーをかけ、お茶
の準備をしたところでドアホンが鳴った。

「はあい、今開けますー」

玄関ドアの鍵を外してばたんと開けて。
すぐに事情が分かった。

そういうことかー。

なんだかなあという表情の伯母さん。
泣きそうな顔をしている素美さんのお父さん。
もうしょうがないでしょって開き直ってる素美さんのお母
さん。
そして、佐々木さんと素美さんは、きりっとした表情をし
てる。榎木さんは、オブザーバーなのかな。

つまり。
佐々木さんと素美さんが、ゴールインしたってことなんだ
ろう。

「どうぞー。お入りください」

「お邪魔します。ごめんね、勉強の忙しい時に」

伯母さんが、『勉強』のところを強調した。
何が何でも短時間で決着つけるぞっていう意思表示なんだ
ろう。
もちろん、ゴネてるのは素美さんのお父さんなんだろなあ。

僕の苦笑に、苦笑を重ねた伯母さんが全員の着席を促した。

「まあ、見ての通りです。佐々木さんと素美ちゃんが、い
きなり籍を入れるっていう話をしたから、それを私がどや
したとこなの。順序が違うよって」

えっ!?
伯母さんのアクションは、僕の全く想定外だった。



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