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三年生編 第102話(2) [小説]

僕が二年の時に感じていた、どうにも言い表しようのない
未来に対する不安感。
あっきーの感じていたのも、それに近かったんじゃないか
と思う。
そこを自力でこなしたように見えるんだ。

会長は、僕やしゃらを突き放してる。
その方針は、あっきーにも共通だろう。
亡くなった娘さんの身代わりとしてあっきーを見ているっ
てことは、ないと思う。
でも、突き放したからあとは何もしませんよじゃないんだ。

あなた方は、もう直接のガイドが必要な年齢じゃないで
しょう。
まず自分で考えて。それでも分からなかったら助言はする
けど、最後は自分で決めて。

そういうこと。

師範は最初がっちり抱え込んで、時間切れ直前にぽんと放
り出した。
あっきーは、その変化に付いていけなかったんだ。
でも、会長のはちゃんとステップを踏んでる。

近くと遠くの中間点で、あっきーがどっちにも動けるよう
にスペースを作った。
そういう細やかな調整は、会長だから出来るのか、それと
も男女の差なのか、そこは分かんないけど。

でもあっきーは、倒れかからなくても自分の周りに差し伸
べられた手があることを感じられるようになったんだ。
だから、安心したっていうか……。

会長のことだから、もしあっきーが家を離れて下宿して
も、何かあったらすぐ来なさいっていうだろう。
それなら、同居じゃなくてもあっきーが孤立することはな
い。

会長が、ではなくて、あっきー自身が会長の家との距離を
調整しながら、自活を模索するんじゃないかなと。
そう思った。

うん。あっきーは順調なんだ。
順調じゃないのは、最初あっきーのことを人ごとのように
考えてた僕自身さ。

進路だけでなく、しゃらとの今後も含めて、いろいろな方
針は固まりつつある。
でも、その中核にどっしりあるべき自分自身がどうにも不
安定。
去年と違って、開き直っちゃってるからその不安定をス
ルーしてるだけなんだよね。

本当にそれでいいのかなあと。
情けない自分自身に突っ込みを入れる。

「ふうっ」

そして。
そんな不安定な僕をぐらぐら揺らすように。
午後から思いがけないお客さんがいっぱい来たんだ。


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