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二年生編 あらすじ(6) [あらすじ]

二年生編 第九十六話〜第百十六話 二学期前半編



 波乱の夏休みが明けて、まだ微妙にぎくしゃくしたまま新
学期に臨んだいっきとしゃらを待っていたのは、驚愕の事態
だった。無神経な試験制度変更に不満を持つ三年生が再考を
求めて全員授業をボイコットし、それに激怒した校長と生徒
会会長の大村が体育館で対決するはめに。いっきたち下級生
もほとんど全員が体育館に揃い、大村と校長との激しい応酬
を見守った。有償参加の夏期講習への配慮がなかったことを
徹底的に突いた大村は、校長をやり込めて交渉に持ち込む。
 教室に戻ってから斉藤に裏事情を聞かされたいっきは、生
徒側は校長との交渉で実利を取れないだろうという厳しい予
測に驚く。

 プロジェクトも、学園祭に向けたリアレンジとイベントの
提案を受けて動き始める。話し合いは順調に進んだが、集会
後職員室に鍵を返しに行ったいっきは、騒動における中沢
中立のスタンスに疑問を抱く。それに対し、二元論の弊害を
説いた中沢は、いっきにこう答えた。判断材料が出そろうま
では拙速に動かないよ、と。
 いっきは、校長、教師、生徒会それぞれのスタンスについ
て熟考する。

 新学期早々の波乱の一週間をしのいだいっきは、ちゃりで
フォルサにスカッシュの練習をしに行き、そこでベテランの
おじさんに声をかけられる。練習後、博物館のバイトに出向
いたいっきはクラスメートの毛利もーりー)がバイトに来
ていたことに驚くが、仕事に集中する。
 帰り際、調子が悪かったちゃりのチェーンが切れ、修理の
ために自転車屋にちゃりを持ち込むが……。ちゃりには、あ
ちこちに細工された跡があり、修理不能なほど壊れていた。
ちゃりを壊した犯人が人間ではないことに勘付いたいっきは、
片桐を呼び出してちゃりを見てもらうことに。
 片桐の診断は、依り代を失った中庭の邪気がちゃりを標的
にして破壊したというものだった。肝を冷やすいっき。

 その翌日、体力不足解消のためジョグに出かけたいっきは、
その足で小野塚稲荷にお参りに行き、ご神体の狐を見て和む。
だが、そこに突然ようこと名乗る小学生くらいの女の子が現
れ、しきりにいっきに絡んだ。付いてこようとする女の子を
たしなめたいっきだったが……。
 中庭の見回りにいったいっきの元に、先ほどの女の子が再
び現れて、中庭が羅刹門の吹き出しの直近だと説明した後、
突然モニュメントの中に入って消える。呆然としていたいっ
きのところに血相を変えた片桐がふっ飛んでくる。なぜ、小
野塚稲荷の主がここにいるのか、と。
 ようこが恐ろしい妖怪としての顔を持つことをいっきに警
告した片桐だったが、ようこが羅刹門の吹き出しに言及した
ことをいっきから聞いて考え込む。中庭の不吉な縁起。その
凶事の原因がとうとう明らかになったのだ。
 対策をどうするか思い悩む片桐のもとに英語教師の荻尾
現れ、ようこは荻尾に無邪気に絡む。荻尾が中庭を去った後
ようこは、荻尾が今は廃社になった思宮という神社の巫女
の末裔で、夢魔封じの糸を作り出せることを二人に説明し、
羅刹門の亀裂封鎖にその力が使えるのでは、と提案した。根
本解決に向けて、即座に対策に乗り出す片桐。
 中庭からの帰り道、しゃらの見舞いによったいっきは、小
野塚稲荷と中庭で起きたことをしゃらに説明した。いっきの
周囲がざわざと動き始めた。

 週明け、生徒会から校長との衝突の経緯について詳しく書
かれた速報が配られ、いっきたちはそれを食い入るように読
む。そこには、校長の不退転の決意、頑迷さ、そして交渉の
厳しさが余さず書き出されていた。それをネタに、速報にこ
められた大村会長の意図を汲もうと、いっきとクラスメート
たちは真剣に話し合う。

 その週末。プロジェクトメンバー総出で中庭の改植作業を
行ったいっきたちのもとに、突然ようこが姿を現す。いっき
たちの作業には関心を示さなかったようこだが、しゃらを見
てしょんべん臭い小娘とあげつらい、いっきは渡さないと宣
戦布告する。激高して詰め寄るしゃらをあざ笑うようにモニュ
メントに消えたようこを見て、関係者は絶句する。
 ようこの態度が面白くないしゃらだったが、いっきからそ
の正体を聞かされ、稲荷社の秋の豊穣祭が絶えていることを
思い出す。そして、学園祭の時に中庭を稲荷社の分社として
祀ることをいっきに提案する。俄然乗り気になるいっき。

 翌日しゃらを誘ってフォルサにでかけたいっきは、前回も
来ていたベテランのおじさんに声を掛けられ、スカッシュの
試合をする。おじさんは、いっきたちに橘紀幸と名乗り、率
いている会社、橘ファルステックの説明をする。
 橘に進路希望を聞かれた二人は、まだ未定だと答えるが、
『でもしか』にならないようにと忠告される。まじめなしゃ
らは、それに強いショックを受ける。

 週明け、校内に校長との衝突の膠着感が漂う中、いっきは
は中庭で昼食を食べている時に、疲れた様子の校長に話しか
けられる。校長の意図を読み取った上で、直球が持ち味の校
長らしくないと突き放すいっき。そして、校長が明確な説明
をしていないことが事態をこじらせていると指摘する。それ
に対し、校長は説明を確約した。
 翌日、全校集会で校長が行った説明と見せた姿勢は、大村
らの圧力にも関わらず一切譲歩はなかった。そして、生徒会
を含む学生側との交渉は受けないと宣言した。殺気立ついっ
きたち。しかし、校長は『懇談』という形での窓口を確保す
ると提案。それを受けていっきと有志たちは、校長の不可解
な姿勢が何に由来するのかを校長に確認に行く。
 校長との懇談で、校長のスタンドプレイと調整不足を指摘
したいっきたちは、懇談から戻ってから今後の変化について
予想し合う。

 その翌日。クラスでもプロジェクトでも学園祭のプランニ
ングが始まった。しのやんと共にプロジェクトの中庭使用権
確保について対策を立てたいっきは、クラスイベントの方で
は二重指揮を避けるため、沈黙する。
 イベントの提案がなくクラスが重苦しい雰囲気になる中、
北尾が思わぬ提案をする。男女引っくり返してミスコンをし
よう。一気に盛り上がるクラスメートたち。そして、担任の
斉藤から、修学旅行の班作りと行動計画書作成に対する説明
があり、いっきの気分は高揚してくる。

 学園祭や修学旅行に向けて始動したことを体感して迎えた
週末。いっきは博物館でのバイトに出向き、釘谷に素材と加
工の話をされる。目標とその実現に向けた努力。どちらが欠
けても人生はうまくいかないと。バイトの後、ファミレスで
釘谷の言葉を反芻していたいっきは、突如現れた校倉の乱暴
な誘いを退け、スカッシュの練習で汗を流す。

 翌日曜日。散歩に出かけたいっきは小野川の堤防で中沢と
かんちゃんのカップルに出会う。紅白のヒガンバナが群生す
る場所。かんちゃんはそこで、自分がずっと抱えている業を
中沢に吐露し、それでももう自分を解放してやりたい、その
時間が欲しいと中沢に告げる。中沢をみずほと呼び捨てにし、
手を差し出すかんちゃん。中沢はその手を取り、二人の関係
が一つ進んだことを素直に喜んだ。証人として、二人の変化
を見届けたいっきだった。

 週明けの学園祭実行委員会で、警備を切り札に中庭使用権
を勝ち取ったいっきたち。一山越えて、祝日をのんびり自宅
で過ごしていたところに、かっちんから電話が入った。なっ
と一緒に行く、しゃらも同席して欲しいと。二人がまとまっ
たことを予感したいっきはしゃらを呼んで、二人が来るのを
待った。
 かっちんの言い方。それは、幼馴染みを解消することにし
た、だった。腐れ縁の友人にはもう戻らないという覚悟を見
て、いっきは自分としゃらとの付き合いにそれを重ね合わせ
る。そこを通ってみないと分からないことがある、と。
 リドルで昼食をとった彼らは、自由行動の一日を四人で神
戸に行くことに決める。いじめの影響で中学の時に修学旅行
に行けなかったいっきとしゃらは、その分も取り戻すと言っ
てはしゃぐ。

 学園祭もプロジェクトのイベントも順調にプランが動きだ
し、気分がいいいっき。九月最後の週末の土曜に博物館のバ
イトに出かけたが、元締めの遠藤の元気がないことを気遣う。
作業が終わってフォルサに行こうとするが、スカッシュで気
晴らししようとする遠藤も付いてくる。嫉妬深いしゃらに配
慮して連絡を入れたいっきだったが、しゃらがフォルサに来
るという。
 フォルサに現れたしゃらはしょげていた。居合わせた橘を
交えてミニゲームで汗を流したいっきと遠藤だったが、橘に
社長室に招かれる。橘は四人に新規採用に関して説明し、明
るくエネルギッシュな遠藤を高く評価して、面接を受けない
かと誘った。舞い上がる遠藤とは対照的に、ますますしょぼ
くれるしゃら。それは、バイト先の店員にセクハラ紛いのこ
とをされ、それを見抜けなかったことを気に病んだからだっ
た。橘はしゃらに、対人関係でのタフさを鍛えるようにと諭
し、職業体験を勧めた。

 翌日、しゃら、実生と一緒に会長宅に出向いたいっきは、
お百日で撮ったくんの無数の写真とともに、会長一家、そ
してあっきーの盛装の写真を見て、家族の意味をしばし考え
る。
 その帰り、突然片桐からいっきに相談が持ち込まれた。両
親込みでの相談。いっきに緊張が走る。しゃらと実生を遠ざ
け、片桐一家を自室に招いたいっきは、片桐の父揺錘(よう
すい)の口から、衝撃的な事実を次々に知らされる。ようこ
の正体。中庭がかつて広大な忌み地であったこと。その原因
が羅刹門の亀裂にあること。そこから漏れる邪気が凶事の原
因であったこと。そして、亀裂の封鎖が極めて困難であるこ
と……。
 しかし、封鎖に挑む決意を固めていた揺錘は、封鎖に必要
な条件をいっきに切り出した。鍵になる睡思宮の巫女の末裔
荻尾の説得、そして、封鎖儀式を補助する止め方四名の確保。
学園祭のイベントに舞いを見せ、それに荻尾を巻き込むこと
をいっきが提案し、さらに止め方の確保を揺錘に確約する。
封鎖儀式の日程が固まり、いよいよ事が動き出した。

 九月末日。いっきは、プロジェクトの盟友三人、かっちん
しのやんみのんを呼び出し、これまで中庭で起きた数々の
凶事に原因があったこと、それを封鎖しない限り自分たちに
もそれが降り掛かりうることを明かす。動揺する三人だった
が、片桐が自分の身命を賭して羅刹門の亀裂封鎖に挑むこと
を説明して、覚悟を求める。僕らは弱い。その弱さと戦わな
いと未来はない、と。各々が覚悟を決め、止め方が揃った。

 しゃらによる荻尾の説得も成功し、儀式に必要な陣容が全
て整った。荻尾と止め方四人は片桐の家に集合し、揺錘およ
びその妻時枝(ときえ)によって、儀式での手順の説明を受
ける。華やかな衣装に舞い上がる荻尾とは対照的に、張り詰
めるいっきたち。
 荻尾の帰宅後、止め方と揺錘との間で最終確認が行われた
が、儀式で使われる神剣の確保だけが未決になっていた。いっ
きは御神刀を打つ弥富の傑作秀峯が使えると考え、自分の持っ
ていた秀峯を儀式に提供した。

 儀式が近付いて緊張が高まる中、いっきは博物館でのバイ
トに出かける。元締めの遠藤は、橘の社への採用が決まって
喜んでいるはずなのに、まるっきり元気がなかった。そして、
作業が一段落したいっきは、遠藤が叶わぬ恋に耐えられずに
号泣しているのを見てしまう。恋。その狂わしいもの。いっ
きは自分がしゃらに恋をしているかと、思い返す。

 気持ちが決意と弱気の間で揺れる中、中間試験直前の慌た
だしい空気を避けて中庭に行ったいっきは、ようこと会話を
交わし、その寂しい心情を思い遣る。
 試験直前対策でしゃらの部屋に行ったいっきは、職業体験
でしゃらが妹尾さんという女性社員に相談に乗ってもらって
いることを知り、興味を持つ。

 今いち調子が上がらなかった中間試験を終えたいっきのと
ころに、聖メリア女子高理事長の若槻が、しおんを伴って訪
ねてくる。若槻は退学処分にした北尾のその後を気にしてい
たが、北尾がイベントとジェニーとの交流を契機に前向きに
なったことを知って安心する。
 一方、リハビリ担当医だった藤崎のガン死を知らなかった
しおんは、墓参は生きる力にならないという藤崎の遺言を聞
いて涙し、北尾の変身に負けていられないと再起の決意を新
たにした。

 封鎖儀式前日。気晴らしも兼ねて市工の学園祭に出かけた
いっきたちは、アグリ部の高度な活動の大半が手作りだった
ことに強い衝撃を受ける。しかし、高校生には高度過ぎて自
力では進めないのが欠点だと言う、アグリ部部長の藤原の懸
念を聞き、部活の自立性の重要さを改めて認識する。
 次期部長の後野に過重な負担がかかることを危惧して、配
慮を勧めるいっきたちは、自分たちのプロジェクトの今後に
ついても話し合う。

 そして……いよいよ封鎖儀式が……始まる。
 


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