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二年生編 あらすじ(5) [あらすじ]

二年生編 第八十四話〜第九十五話 夏休み後半編



 ジェニーの滞在最終日。伯母の、妹の実生、そしてしゃ
らと一緒に空港までジェニーを見送りに行ったいっきは、別
れの挨拶でジェニーと握手しようとするが、突然ジェニーに
唇にキスされる。
 帰りのバスの中。いっきには、嫉妬を爆発させたしゃらを
直視する勇気はなかった。憤怒の激情をたぎらせるしゃらと
冷静に話をする自信がなかったいっきは、妹の実生にちゃん
とフォローするようにと勧められる。しかし、しゃらから送
りつけられてきたのはとんでもなくアブナいメールだった。
 いっきは、事態打開のためには冷却期間を置くしかないと
考える。

 お盆。受験や学校生活を優先させたまたいとこたちは、墓
参への出席率が悪かった。また、いっきや実生と仲のいい
藤さゆり
が進路のこと父親とで正面衝突しているのを知り、
二人はは心を痛める。それを過渡期にはよくあることだとさ
らっとかわした大叔父、大叔母のどっしりした姿勢に、安心
感を覚えるいっきたちであった。

 お盆が冷却期間になって、しゃらが機嫌を直すことを期待
したいっきだったが、実際のところ関係修復の切り札を見出
せないでいた。話し合いのためしゃらの家に出向こうとした
いっきは、会長に呼び止められてトラブルの内容を説明する。
会長の諌めも届かず、いっきは無力感に苛まされていた。
 そして、しゃらの家。呼び出しに応じて出て来たしゃらは、
全く態度が変わっていなかった。その凄まじい怒りを見て、
いっきの中に溜まっていた不満感が爆発する。ジェラシーを
コントロール出来ないなら別れる。いっきはしゃらに一方的
に付き合いの解消を宣言し、立ち去ろうとした。しゃらは、
その豹変を見て慌てて引き止めようとするが、いっきの強い
不快感はもう止めようがなかった。
 無理やりしゃらの部屋に引きずり込まれたいっきだったが、
僕にはどうして欲しいのかが分からないとぶち切れる。それ
に対して、しゃらが全く予想外の行動に出た。服を脱いで全
裸になり、抱けと迫ってきたのだ。いっきの理性が吹き飛び、
抑え込んできた肉欲が爆発した。二人は……最悪の形で体を
合わせることになった。

 行為の後逃げるように帰宅したいっきは、自分の欲を制御
出来ずにしゃらを傷付けたことへの罪悪感でのた打ち回った。
家族との接触を断ち、食事も摂らず、自室に籠って心を閉ざ
した。
 しかし、どうしても罪悪感を自力で処理し切れなかったいっ
きは、翌日堪え兼ねて設楽寺の光輪に会いに行った。光輪は
いっきとしゃらの間に何があったかを嗅ぎ付け、人の欲はい
じれない、だからまず自分の始末をしろといっきを突き放し
た。

 どうしても頭の中を整理出来ないいっきは、予備校の夏期
講習に行くことで気を紛らわせようとする。そして、しゃら
との接触を一切遮断し、講習に臨んだ。
 講習帰りに中庭に寄ったいっきは、そこにえも言われぬ嫌
な気配を感じて逃げ帰る。

 講習の最終日。夏だというのに異常な冷雨が降る中、いっ
きは講習に逃げ込んだところで何も解決しないことを思い知
らされ、意気消沈していた。夜遅くなって、いっきのところ
にしゃらの父親から切羽詰まった電話がかかってくる。家を
出たきり帰ってこない、と。しゃらが中庭にいることを予想
したいっきは、真夜中ちゃりで学校の中庭に行く。
 中庭は点灯しているはずのガーデンライトが一つ残らず消
えていて真っ暗だった。それだけでなく、嫌な気配で埋め尽
くされていた。
 中庭に流れ込んだ邪気がしゃらを依り代にしようとしてい
る。そう気付いたいっきはモニュメントに住み着いていた
がしゃらをかばっていると考え、冷たい雨が降りしきる中、
必死にしゃらがなぜ中庭に来たのかを考えた。仲直りの願掛
けのためにしゃらが植える提案をしたはしばみ。しゃらがそ
こにいると思い付いたいっきは、鳳凰がかばっていたしゃら
を中庭から助け出すことに成功する。
 しかし、病院としゃらの実家への連絡を妨害するような異
常事態が続き、病院に担ぎ込んだ後もしゃらを診察した医師
の診断は不可解なものだった。投薬と点滴治療を受けて帰宅
したしゃらだったが意識は戻らず、いっきは意識が戻るまで
付き添うことを決意する。

 深夜。いっきがずっと手を握っていたしゃらの容態が急変
する。激しく痙攣し、何かから逃れようとうわ言を繰り返す
しゃら。いっきは何も出来ず、ただ手を握りしめるしかかな
かった。その後、しゃらの容態が落ち着き、眠ったことを確
認したいっきは、うたた寝をする。だが、その間にしゃらは
高熱を出していた。
 翌朝、しゃらの様子がおかしいことに気付いたいっきたち
は、救急車を呼ぶ。肺炎寸前だったことを医師に咎められた
いっきたちは、昨日の病院の対応が不誠実だったことを逆に
なじる。該当する医師が存在しないことに慌てる病院関係者
たち。しゃらは病院での処置が功を奏して容態が落ち着き、
意識を取り戻した。それを見届けたいっきは気を失った。
 目を覚ましたいっきは、見舞いに来た片桐に中庭への鳳凰
招聘の真の理由を聞かされる。鳳凰は守り神ではなく、単な
る保険だ、と。そして、中庭の邪気を律するには、これまで
のように陽の気を送り続けるしかないと諭される。片桐は、
中庭でうかつに自我を捨てるのは邪気を呼び込む、危険だと
しゃらにも警告を発し、去っていった。

 その後しゃらは順調に回復した。安心したいっきだったが、
罪悪感が消えたわけではなかった。家族の腫れ物に触るよう
な対応も、かえっていっきの悩みを刺激した。
 自室で塞ぎ込んでいたいっきのところに、突然スイカを持っ
て光輪が訪ねてくる。いっきがまだ何も消化出来ていないこ
とを見抜いた光輪は、スイカを食べただけで何も言い残さず
に帰る。光輪の穏やかなケアで、いっきの心は少しだけ軽く
なった。
 気晴らししたいいっきは、田園風景が残る板倉地区に出か
け、そこで光輪の妻である見波に出会う。見波の口から、光
輪も見波もかつて少年院にいたことを聞かされ、驚くいっき。
しかし、一見悟りを開いているように見える光輪が、実は何
も変わっていないことを知らされ、驚く。帰りにしゃらを見
舞ったいっきは、まだしゃらにかける言葉が見つからなかっ
た。

 しゃらが退院し、きちんと心の整理を付けないといけない
と決心したいっきは、しゃらの自宅に見舞いに行く。いっき
から別れるつもりはないと聞かされたしゃらは、逆に自分の
愚かな行動を恥じることになり、激しく泣く。
 気持ちが後ろ向きになって、プロジェクトからも逃げよう
としたしゃらに、いっきは秀峯を覗かせる。心が砕けてぐちゃ
ぐちゃに潰れた自分の姿を見せつけられ、ひどく怯えるしゃ
ら。いっきは、逃げても解決にはならない、自分の弱さと戦
うしかないと諭す。
 二人は中庭に出かけ、鳳凰の去ったモニュメントに向かっ
て再出発の誓いをするのであった。

 関係修復の道筋がついてほっとしたいっきに偏頭痛の発作
が起きて佐古丸総合病院の頭痛外来に行くはめになり、そこ
できびきびと働くレンと再会する。しかし、いっきを昼食に
誘ったレンの口から衝撃的な事実を知らされる。いっきの膝
のリハビリを指導していた藤崎が、ガンのために亡くなって
いたのだ。自分を監視する目だけしか残してくれなかったと、
藤崎の義眼を見つめるレン。レンは、亡くなった藤崎の遺志
に報いるためにもリハビリを中途半端に放り出すことは出来
ないと、いっきに決意を語った。
 大きなショックを抱えたまましゃらの見舞いに寄ったいっ
きは、藤崎を失った悲しさに耐え切れず号泣する。

 夏休みも残り少なくなり、いっきがプロジェクトのスケ
ジュール組み立てを模索する中。自信を失い、迷走している
かっちんのサポートをりんに依頼される。
 自室にかっちんを呼んだいっきは、夏休み中に自分としゃ
らとの間に何があったかを暴露し、かっちんに覚悟を求めた。
付き合うのなんか簡単。そこから気持ちを重ねるのが本当に
大変なんだ、と。恋愛の苦さを噛み締めるいっきだった。

 夏休み最終日。何かを変えたいいっきは、体を動かしてス
トレス発散しようと、受験勉強で煮詰まっていた妹の実生を
誘って、開業したばかりの総合レジャー施設フォルサに出か
ける。いっきはそこでスカッシュに魅力を感じ、きちんとト
レーニングしようと考えてフォルサの会員になる。
 帰り際に寿庵に寄ったいっきは、店主の中村長岡を厳し
い研修会に送り込んだ話を聞き、しゃらの家に寄った時にそ
の話を持ち出す。自立のために、自分のレベルを上げなけれ
ばならない、と。
『独りが嫌なら、独りでなくすることだけでなく、独りに耐
えるってことも出来ないと、これから保たない』



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