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二年生編 あらすじ(7) [あらすじ]

二年生編 第百十七話〜第百二十一話 二学期中盤編 学園祭前後



 十月十三日。早朝。ぽんいちの中庭に関係者が集まり、い
よいよ封鎖儀式が始まった。舞い方、祓い方、止め方が配置
に付き、片桐時枝の祝詞を皮切りに、舞い方の二人が舞いを
始める。舞いのテンポが早まるとともに、荻尾の全身から
『糸』が放出され、それは時枝の手によって『蓋』に編まれ
た。
 荻尾が狂乱状態で踊る中、祓い方による呪術が始まり、
桐揺錘
の面前に亀裂が引き寄せられた。秀峯を一閃させてそ
れを切り広げる揺錘。その直後に、広がった裂け目から莫大
な邪気が吹き出した。
 結界ごと吹き飛ばそうとするかのような猛烈な邪気の圧力
に、いっきたち止め方は必死に耐える。そしていっきは、腰
が引けていたみのんがなぜ危険な止め方を引き受けたかを覚
る。みのんは片桐が好きだったんだ、と。
 初圧が下がった邪気を、何者かが上空に抜き去った。いっ
きは、それがようこの手助けだろうと考える。邪気の猛威で
ぼろぼろになっていた揺錘とみえりだったが、機を逃さず、
亀裂の邪眼を『蓋』で塞ごうとする。最初は瞬時に燃え尽き
ていた『蓋』は、みえりの手で重ねて被せられるうちに邪眼
を覆って鎮めて行った。邪眼が眉のように『糸』で覆われた
のち、揺錘は強力な符を用いて邪眼を異界の果てまで吹き飛
ばした。
 封鎖は見事に成功したが、関係者の疲弊は極限に達してい
た。意識を失ったみえりと荻尾。保健室に運び込まれた二人
のうち先に目覚めた荻尾は、そこで初めて自分の出自と特殊
能力を知る。驚く荻尾。しかし、みえりが意識を取り戻すこ
とはなかった。

 儀式翌日。みえりの容態を気にしたいっきたちは、しゃら
も誘ってみえりの見舞いに出かける。意識は取り戻していた
みえりだったが、封鎖をしのぎ切った達成感はなく、逆に自
分の弱さを思い知らされていた。私には祓い師は出来ない。
心が弱すぎる、と意気消沈するみえり。
 へたってしまったみえりを両親が慰めた。あまり思い込み
過ぎるなと。そして、時枝にはみえると同じような『目』が
あり、それがもとで実家に十六年幽閉されていたことを明か
した。仰天するみえり。時枝を解放したのはみえりの曾祖父
長与(ちょうよ)で、それは跡継ぎを拒む揺錘の懐柔策の
駒であったことを知って、みえりは絶句する。
 しかし揺錘は、知り合った経緯よりもその先の方が大事だ
と、時枝との結婚後に二人で生き方を話し合って決めたこと
を伝え、時枝は自分が欲しかった運命を手に入れられればそ
れが最良の出会いだと結論付ける。さらに、時枝が先視を使っ
て、みえりに近々いいことがあると予言する。
 あまりに荒唐無稽な話に唖然としていたいっきたちだった
が、みのんが突然みえりに告白した。みえりは二人の弱さが
重なることを指摘して、それを柔らかく断った。
 そして……。いっきの手元に刃が砕けて見るも無惨な姿に
なった秀峯が戻ってくる。いっきは秀峯を労い、その供養を
考える。

 封鎖儀式の成功で中庭の脅威が低下し、気分よく学園祭の
初日を迎えたいっき。その勢いでクラスイベントのステージ
発表に臨む。出演者は思い思いの仮装でウケと笑いを取り、
場内は大盛り上がり。中でも、頭を丸刈りにした北尾の思い
切った仮装は、クラスメートにも衝撃を与えた。
 ステージの大成功に気を良くしたいっきは、中庭で翌日行
われる平舞いのリハに立ち会う。舞い手の荻尾の前に現れた
のは、封鎖儀式で負傷して満身創痍のようこだった。ようこ
を抱きしめて身を案じる荻尾の体から最後の糸が現れ、それ
がようこの傷を癒した。ようこは堪えきれずに泣き崩れる。
ようこがモニュメントに隠れなかったことを見たいっきは、
ようことの別れが近いことを覚る。
 校内展示を見に行ったいっきは、新聞部の特集号に釘付け
になる。佐倉が、恋人である天交の厳しい指摘をこなしてま
とめたシビアなルポ。学校側の無理解をあげつらうだけでな
く、生徒側の心構えの甘さも鋭く突き、警察への取材で生徒
に事実を突き付けて、自主独立の意味を問う厳しい内容だっ
た。展示教室でルポの内容を話し合う二人だったが、佐倉が
突然強姦事件の噂が漏れ始めたことを嘆く。いっきは、リハ
ビリにたとえて、体は元に戻らなくても心は戻せると説く。

 初日の中庭イベントに大きなトラブルはなく、警備に自信
を持ったいっきたちは一般客の出入りがある二日目に臨んだ。
いっきとしゃらは、二日目最初の時間枠の警備を受け持ち、
迷子やナンパ男をさばいて次の当番と交代する。
 学園祭を楽しみにしていたようこを伴って、しゃらと校内
のイベントやステージを駆け足で見に行ったいっき。昼前に
行われる平舞いを見に駆け戻る。荻尾、片桐の母、しゃらの
友人家原の三人で行われた優雅な舞いは、伴奏を引き受けた
岡辺江平の好サポートもあり、来場者の耳目を集めた。舞
いに見入るようこは、自分に捧げられた玉串を見て涙するの
であった。舞いの終了後、談笑する荻尾と江平を見た片桐の
母は、そこに縁がつながったといっきに告げて、いっきを絶
句させる。

 無事に舞いの奉納が終わってほっとしたいっきたちは。中
庭にブースを出した調理部の稲荷ずしを味わう。ようこは早
食いにチャレンジして優勝間違いなしの記録を叩き出した。
しかし、盛況のブースに乱入してきたのはゴナンの札付き三
人組。売上金をかつあげしようとする彼らに、いっきではな
くようこがキレる。三人組を挑発して中庭から誘い出したよ
うこは、彼らを同士打ちさせて排除した。その後、早食いの
優勝者の発表があり、ようこは副賞の狐の置物に無邪気に喜
ぶのであった。

 午後から、イベントを全制覇する勢いで見て歩くいっき、
しゃらとようこ。いっきは、ようこの後ろ姿にどうしようも
ない寂しさを見て取る。美術部の展示を見に行った三人は、
わだっちじょいなーの作品がないことに驚くが、部運営の
難しさやスランプを素直に嘆くわだっちに、逆に感心する。
わだっちはようこを見て即興で塑像を削り出し、『神が降り
てきた』と言い残して去った。

 そして学園祭も大詰め。ステージにラークスが登場した。
メンバーの中に住田と伊藤がいないことに驚いたいっきたち
だったが、市商の学園祭と重なって参加出来なかったのだ。
代わりにタカと加賀野をサポメンに加えたラークスは一発勝
負を仕掛け、聴衆を扇動してがんがん盛り上げた。いっきた
ちは完全燃焼する。

 ステージの熱気がまだ冷めやらぬ中、体育館を出たいっき
を五条が待っていた。五条はいっきを単独で校長室に連れ出
す。校長室で五条がいっきに告げた事実。それはぽんいちの
学生の乱れた風紀に対する厳しい警告だった。繁華街での未
成年取り締まりを強化するので、校長から学生に釘を刺して
欲しいという五条の要請を、校長は深刻に受け止めた。さら
に五条はいっきにも、事件に巻き込まれた佐倉が再度犯人グ
ループに狙われないよう警護しろと要請した。
 後夜祭に出るため校庭でしゃらと合流したいっきだったが、
五条の要請が気になって佐倉と天交を探すことに。その目に
飛び込んで来たのは、殴られ気を失って倒れていた天交だっ
た。慌てて佐倉を探すいっきたち。佐倉たちが学校関係者の
盲点になっている中庭にいると勘付いたいっきは、全力で中
庭に走った。

 中庭には佐倉の他に、以前しゃらと恩納先輩を襲った市工
の学生二人と、プロのヤクザがいた。レイプの動画を売って
カネにする、そう言い放って中庭を出ようとしたヤクザを、
ようこが足留めし、録画したDVDのディスクを壊してヤク
ザを挑発する。元データを含めて全てを消去されたことに激
怒したヤクザは、ナイフでようこの首を切り落とすが、よう
この胴体がそれを拾って元通りに。あまりのおぞましい光景
に、腰が抜けるいっきたち。中庭を穢すものは許さないとヤ
クザを一喝したようこは、ヤクザの足下を泥沼に変える。ヤ
クザの助命嘆願を一蹴したようこは、市工の学生には償えと
チャンスを与える。

 絶命したヤクザを五条たちが事故処理し、いっきたちが凍
り付いている間に後夜祭は終わっていた。全員おもらしして
しまったいっきたちをよそに、ようこは中庭を振り返ってし
みじみと漏らす。楽しかったなー、と。

 学園祭翌日の代休日。最後の惨劇のショックがまだ残って
いるいっきだったが、中庭に出かける。ちょうどしゃらも中
庭に来ていて、夏休みのトラブル後も二人が引きずっている
ぎくしゃくした関係を思い返すことになった。
 二人で中庭を見ているところに学園祭を欠席した片桐が現
れる。儀式の時の恐怖からまだ回復していないと愚痴った片
桐は、いっきから前日の惨劇のことを聞き、死んだヤクザが
まだ中庭をうろうろしていると指摘する。恐怖に怯えるいっ
きとしゃらだったが、実害がないと聞いて胸を撫で下ろす。
 三人で話をしているところにようこが現れ、片桐は一家を
代表してようこに儀式協力への謝意を表す。それに対して、
舞い奉納への謝辞で返すようこ。そしてようこは、中庭を
去って眠りにつくことをいっきたちに告げる。別れを惜しん
でようこを抱きしめるしゃら。すると突然ようこが美男子の
形(なり)に変わり、しゃらに長々とキスをする。呆然とす
るしゃらを残して、ようこは笑いながら中庭から消えた。
 ようこの暴挙にぶんむくれるいっきだったが、自室に帰っ
てから出会いの幸運と生命の意味について、深く考え込むの
であった。



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