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三年生編 第106話(5) [小説]

「会長に頼めないのは辛いよなあ」

みのんが、どうにも残念という顔で首を何度も振る。

放課後、生物準備室に相談会担当のメンバーがぞろっと集
まって、対応を協議することにしたんだけど。
もうのんびり交渉してる段階ではないわけで、特に一年生
たちが激しくテンパっていた。

「わたしたちにできる対応はするけど、先生役はどうして
も他に要るもんなー」

星野さんもシブい表情。
で、最後にみんなの視線が僕のところに集中するわけだ。

でも会長も宇戸野さんも、今は外部対応ができる状況じゃ
ない。
直接講師を頼めなくても、誰か適任者を紹介してほしいと
お願いできればよかったんだけど、それすら言い出しにく
いんだ。

「うーん……」

僕も頭を抱えてしまう。

そう。僕の持ってる人脈が広いって言っても、起点は会長
なんだよね。
尾花沢さんも菊田さんもそう。
宇戸野さんのルートだって、気づいたのは僕だけど交渉や
パイプ作りは会長がやってくれた。
その会長のルートが使えないと、あらゆるパイプが詰まっ
てしまうんだ。

うーん……。

「ん? 待てよ」

直接お出まし願うことは無理だけど、アドバイスもらえそ
うな人が一人いるじゃん。

「ちょっと待って」

みんなに待機してもらって、一度部屋を出る。
廊下で、菊田さんに電話をかけてみた。

「あ、菊田さんですか? お仕事中すみません。工藤です」

「あら。久しぶりね」

「ご無沙汰してますー。今、大丈夫ですか?」

「平日だし、お客さんが来るピークは過ぎてるからね」

「すみません。ちょっとご相談があるんです」

忙しい菊田さんを、僕らの一方的な都合でわずらわせるわ
けにはいかない。
僕は、単刀直入に学園祭での園芸相談に乗ってくれる人が
誰かいないかを聞いてみた。

「ふうん……なるほどねえ」

「僕らだけでもできなくはないんですけど、やっぱりプロ
がいてほしいんです」

「うん。それは賢明だと思う」

「会長や宇戸野さんには今頼めないので、どなたか引き受
けてくれそうな方をご存知ないかなあと思いまして」

「はははっ! そうか波斗さんも宇戸野さんもお子さんが」

「そうなんすよ」

「ちょっと待ってね。あてはあるんだけど、引き受けても
らえるかどうかは話してみないと分からないから」

おおっ!!

「助かりますっ!」

「一度切るね」

ぷつ。


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