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三年生編 第106話(4) [小説]

「あ、そうか!」

高橋くんが、ぱちんと手を叩き合わせる。

「ブースを出す人に、責任持ってお客さんをさばいてもら
えばいいってことすね?」

「そ。それが出来るのは個人じゃなくて、同好会や部のレ
ベルになるでしょ? 去年みたいに時間決めて総入れ替え
とかばたばたやらなくて済むし、雨の時の対応もブース出
すグループで話し合って決めてもらえばいい」

「じゃあ、わたしたちは本番までの準備を手伝えばいいっ
てことですねー?」

「そう。出店数をうんと絞り込んで、事前準備の手伝いだ
けにすれば負担は小さいでしょ?」

「そっかあ」

「花壇に人が入り込まないようにするのは、ロープ張るく
らいで済むし、お客さんへの注意とか立ち番も各ブースで
やってもらえばいい。そうしたら、人と時間の資源を俺ら
の独自イベントに多く回せる」

「すげえ……」

「他部の小間使いがいやなら、奉仕のレベルを下げればい
いじゃん。手伝うよーくらいにして。それでも、他の弱小
部にとっては十分ありがたいんだから」

今までなんとなく不満感があった部分がすっきりしたんだ
ろう。
その時点で、一年生たちのモチベーションがどかんと上がっ
た。

それにしても、イベンターとしてじょいなーの能力は全く
錆びてない。すげえなあと思ったんだ。

じょいなーが知恵つけた部分。
本当は後輩たちに自力で突っ込んで欲しかったけど、タイ
ムリミットがあるからしょうがないよね。

何から何までじょいなーが仕切ったわけじゃなく、発想を
転換したらとアドバイスしただけだから、後輩たちの気後
れはほとんどなかった。

まとめ役の高橋くんが馬力を発揮して、他部との交渉とプ
ラン作りを一気に仕切り、一年生を三つの班に分けて部の
アピールをすることにした。

二、三年生部員も、ばらして三つの班に振り分ける。
具体案作りの指揮は二年が、案出しの補助は三年がやるこ
とにした。
庭管理の仕事の義務から外れてる三年だけど、僕らにとっ
ては三年間のプロジェクト活動の集大成になるんだ。
最後まで主役として輝きたいよな! そういう意識は共通
だった。

三つの班。
一つめは、今年のコンテスト受賞までの中庭造営プロセス
をパネルで見せるグループ。
かっこいいパネルにするっていうより、お絵描き感覚で目
いっぱいデコっちゃえ!
じょいなーとわだっちが、がっつりあおった。

二つめは、プロジェクト主催のアイデアコンテスト。
庭を見に来てくれたお客さんから、こんな庭にしたらど
うっていうアイデアを募集する。
その日のうちに結果発表して、最優秀の応募者には豪華鉢
花をプレゼント。
参加してくれた人には、先着順になるけど参加賞として秋
まきのタネを渡す。

三つめは、ガーデニング相談会。
こっちは準備がいらないから楽だけど、引きもない。
そこをどうするか、だな。
素人の僕らが相談に乗るっていうより、プロのアドバイ
ザーに来てもらいたいよね……そういう話になった。

一番頼みやすいのは会長なんだ。
でも出産からまだそんなに経ってないし、小さなこどもが
二人いるのにお願いしますとは言いにくい。
それは、もう臨月になってる宇戸野さんも同じ。
あてにできそうなところがダブルでダメっていうのは、辛
いよなあ。

コンテストの実査に来てくれた先生に頼むっていう案も
あったんだけど、謝礼どうするかとか、スケジュール調整
とか、問題が山積み。断念せざるをえなかった。

で。
焦げ付いちゃった後輩たちのレスキューは、人脈を持って
る僕にお鉢が回ってくるわけで。
はあ……しゃあない。


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