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三年生編 第106話(3) [小説]

まず、発想を思い切り変えろ。
じょいなーは、そこから話を始めた。

中庭ってのは、スペースが小さい上に、イベントスペース
としての利用制限がプロジェクトにだけかけられている。
主従で言ったら、これだけ図体のでかい僕らが従の位置に
下がらないとならない。
そもそもそれは資源の無駄遣いなんだ。全力で楽しみよう
がないじゃん。

もっともだ。
そうなんだよ。

中庭は、学園祭以外でも野点やミニコンサートなんかのイ
ベントに使われるようになって、ミニイベントスペースと
しての利用価値がみんなに浸透してきた。

狭い上に自力で動けないプロジェクトが、無理やりそこで
のたうちまわらなくてもいいでしょ?
じょいなーの割り切りは、これでもかと鮮やかだった。

じゃあ、プロジェクトとしてどうお祭りを盛り上げるか。
中庭をプロジェクトで直接使えないなら、直接使えるとこ
ろで盛り上がればいい。

「あっ!」

後輩たちから、一斉に驚きの声が上がった。

「だろ? これまでの活動の履歴を見せるとか、ガーデニ
ング相談コーナーを作るとか、苗の即売をやるとか。中庭
にこだわらなければ、なんぼでも出来るじゃん」

「でもぉ、じゃあ中庭は放置……ですか?」

黒ちゃんが、ぶつぶつ。

「いや、さっき俺が資源て言った意味を考えてみて」

じょいなーはすぐに種明かしをしなかった。
一、二年生がうんうん言いながら頭をひねる。

「去年のブース式。一番重荷になったのは警備なんだよ。
騒動があったらさばかないとならないし、花壇を踏み荒ら
されないよう、ずーっと見張ってないとならないから」

「そっすね」

高橋くんが大きく頷く。

「じゃあ、そこを軽減すれば楽しめるじゃん」

「軽減、すか?」

「なんで俺らが警備をやらなあかんわけ?」

にっ。
じょいなーがいたずらっぽく笑った。

「去年のは、沢渡校長とのど突き合いをクリアするための
妥協案さ。あんなん、もともとおかしいんだよ」

「どうしてですかー?」

一年生の女の子から質問が飛んだ。

「学校の管理は生徒の仕事じゃなくて、先生の仕事だよ。
それを俺らが肩代わりすること自体がそもそもおかしいん
だ」

「あ……」

「だから、去年も何かトラブルがあった場合は、必ず先生
を呼べってことになってたでしょ?」

「そう」

僕が即答する。

「それしかできないからね」

「そんなん警備じゃないよ。係員さ。係員なら、俺らがや
らなくてもいいじゃん」

ううむ。さすがだなあ。


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