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三年生編 第106話(2) [小説]

僕には僕なりのアイデアがあったけど、今回ばかりは最後
まで黙っていようと思った。
僕が何を言おうと、舵取りは一、二年生でしっかりやるだ
ろう。
そこは心配してないけど、できるだけいろんなアイデアを
自分たちの中で出し合って、揉んで、調整するっていう訓
練をもうちょい積んで欲しかったから。

でも、真っ向反対向きのベクトルが正面衝突したまま、話
し合いの雰囲気がどんどんきな臭くなってきて、生徒会へ
のイベント申し込み期限も近づいてきて。
たまりかねたじょいなーが、九月二回目の会合の時に助け
舟を出したんだ。

「まあ、みんな落ち着けって」

旧デザイン班の重鎮わだっちとともに、映える花壇の設計
に才能を惜しみなく注ぎ込んできたじょいなーだけど、も
ともとすっごいお祭り好きなんだよね。
智美さんの花屋のプロデュースやったみたいに、アイデア
出すだけでなくて段取りをちゃんと仕切れるんだ。

デザインの実権がもう下級生に移って、わだっちもじょい
なーもつまんなかったんだろう。
なら任しとけって感じでしゃしゃり出た。

「お祭りってのは、楽しんでなんぼなんだよ。俺らが楽し
くないことやっても意味ないよ。まず、そこまで戻れ」

「ええー?」

中庭の公共性を損なうな。
そういう学校側の制限に引っかかりそうな発言に、後輩た
ちが一斉に非難の目を向けた。
でも、じょいなーはどこ吹く風。

「おまえら、なにも分かってねえなー」

それを、ものすごく押しの強いわだっちが言えばかちーん
とくるんだろうけど、ひょろっなよっとしたじょいなーが
口にするとなーんも威圧感がない。得だよなー。

「お祭りするのにどうしても必要なのは、場所と金と人と
やる気。それは、どれも資源なの」

資源。
うん、確かにそうだ。

「じゃあ、その資源を一番俺らが楽しめる形に配分すれば
いいじゃん」

にやっと笑ったじょいなーが披露したアイデア。
それはもう、お見事の一言だった。



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