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三年生編 第103話(5) [小説]

河西さんが、すぐに正解を出した。

「そっかあ。斉藤先生みたいな顧問の先生に助言をもらえ
ばいいってことですね?」

「ぴんぽーん!」

「わあい!」

無邪気に喜ぶ河西さん。ははは。

「でも、生徒会を生徒代表と位置付ける以上、生徒会顧問
の先生は学校側代表って位置付けじゃまずいんだよ」

「そうか。それがさっきの話なんですね?」

森下くんが大きく頷いた。

「そう。顧問の先生も含めて、生徒会を学校側の対極に置
いておかないとならないの。学校側の手のひらの上に生徒
会を置くなら、そんな生徒会は要らないんだ」

「はいっ」

「で、まじめな斉藤先生は、生徒会顧問の役割をきちんと果
たしてる」

そこでちょっと間を取った。
じっと考え込んでた森下くんが、さっと顔を上げた。

「工藤先輩の言いたいことが見えてきました」

「言ってみて」

「斉藤先生が生徒会と風紀委員会の顧問を兼任するってい
うのは、めっちゃくちゃ矛盾してるんですね?」

「お見事! 大正解!」

「うーっす!」

「わたしもわかったー!」

河西さんが、開いていたノートにがりがりといろんな図を
書き込んだ。

「そういうことだったのかー」

学校。僕ら生徒。斉藤先生。校長先生。顧問を降りた大高
先生。
それぞれの間を線で結んで、どういう関係にあるかを考え
てみたら分かりやすいよね。

「部活や委員会の顧問なんかどうでもいいと思ってる先生
ならともかく、ちゃんと生徒を指導しようと思ってる先生
は、学校の方針をちゃんと示すの。つまり、先生は学校側
にしか立ちえない。その唯一の例外が、生徒会の顧問なん
だ」

「すっごい特殊なんですねー」

「んだ。だから誰でも出来るわけじゃない。斉藤先生の前
の手塚先生も七年やってたって聞いてる」

「うわあ!」

「すごいでしょ?」

「そっすね。学校側と生徒側のつなぎ……ってことですよ
ね?」

「ばっちし!」

森下くんがガッツポーズを取った。
少し、自信がついてきたって感じかな。

「だから、斉藤先生は絶対風紀委員会の顧問なんかやりた
くないの」

「じゃあ、なんで引き受けたんですかー?」

「大高先生以上のワンマンが風紀委員会の方針を捻じ曲げ
たら、それで終わりだからさ。実際、そうなりそうになっ
たでしょ?」

し……ん。
二人して、真っ青になっちゃった。

「だから、斉藤先生がめっちゃ怒鳴ったんだよ。おまえ
ら、その危険性を分かってんだろうなって」

「そっか……」

「風紀委員会っていう物騒な入れ物は、もう出来ちゃった
の。それは簡単にひっくり返せない。それなら、風紀委員
会が警察や裁判所にならないように、『僕らが』しっかり
備えないとならないの。これからずーっと、ね」



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