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三年生編 第92話(7) [小説]

放課後。
副委員長の森下くんと書記の河西さんに視聴覚室まで来て
もらった。

「呼び出してごめんね」

「いえー」

「次のことですよね?」

「そう。僕が仕切るのは、今日が最後。あれが、君たちへ
の置き土産だから」

がたっ!
二人が、顔面蒼白で立ち上がった。

「そ、そんなあ」

「あのね。三年の委員は、今回のことにはもう関わりたく
ない。自分たちが違反する意味も機会も、もうないんだ。
それなのに口を出す三年の委員がいるとすれば、学校側に
対して強い感情的反発を持ってる人。そいつに議論を引き
ずられると、損するのは君らだよ?」

「あ……」

二人が顔を見合わせる。

「まだたっぷり高校生活を楽しめる君らがどうすればいい
かを考えないと、一部の人だけが得をしたり損をしたり。
そういうことになっちゃう。んでね」

「はい」

「てきとーでいいから」

「はあ!?」

二人が、口あんぐり。

「委員会のことに突っ込みすぎると、じゃあおまえがやれ
よってことになっちゃう。今日大高先生が言おうとしたみ
たいにね」

「ああっ!!」

がたあん!
椅子を倒して、二人が立ち上がった。

「そ、そっかあ……」

「いいの。委員会なんか何の権限もない。そこで何があっ
たって誰にも影響しない。そのくらいのスタンスでいい」

「うはあ」

「委員の仕事はメッセンジャーさ。そこに自分の考えや感
情を混ぜる必要はないから、きらくーにやればいいよ。本
来委員がしなくていいことを押し付けられそうになった時
だけ、押し返せばいい。そのための材料は議事録に全部あ
る。それだけでいいよ」

「ううー。僕には荷が重いっす」

「ははは。その場でライブでやる必要はないって。そのた
めにあれだけ人数がいるんだからさ」

「あ、そうか」

「そう。誰かが気付けば、次の委員会までに修正をかけら
れる。そんなの、てきとーでいいって」

それでもまだ不安なんだろう。
森下くんが、ちらちらと僕に視線を投げかけた。

「あの……議論の時に助言とか……」

「基本的に、しない」

「ううう」

「こういうのも訓練さ。訓練でスキルが上がるのは議論を
仕切った人。つまりこれから仕切る森下くんだけが、おい
しいところを持っていけるの」

「うわ、そう考えるんだあ」

河西さんが、びっくり顔。

「そりゃそうだよ。他の人よりがんばった人がおいしいと
ころを全部持ってく。そうじゃないと、誰も長なんかやら
ないさ」

「プラス思考ですね」

「んだ。もう一度言うね。委員会にはなんの権限もない。
気負い過ぎないで、しっかりおいしいところを持っていっ
て」

「うう、がんばりますー」


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