SSブログ

ちょっといっぷく その143 [付記]

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

久しぶりにお送りしたSS。クリスマスバージョンにしては
かなりえぐい内容で、申し訳ありません。(^^;;

短いんですが、それほど単純な話ではありませんので、内容
にしっかり踏み込んでおきたいと思います。


           −=*=−


ぐりーんふぃんがーずくらぶ日誌には、主人公いっきとその
彼女であるしゃらのカップルを含めて、たくさんのカップル
が登場します。

でも、同学年のカップルはほとんど出てきません。
シャイに服を着せたようなかっちん、なっつのカップルは、
その付き合いの中身が親しいいっきにすら見えませんし、そ
れ以外にどんなカップルがいるのかは、いっきには分からな
いんです。

もう彼女がいるから興味ないってのもあるんでしょうけど、
やきもち焼きのしゃらへの配慮も多分にありますね。(^^;;

唯一の例外が、今回取り上げたマカとゆいちゃんのカップル
なんです。

いっきは二人がくっつくプロセスに深く関わりましたし、そ
の後の経緯もよーく見ています。
それはマカやゆいちゃんにとっても同じで、二人は先行カッ
プルであるいっきとしゃらをよく観察してるんです。
ですからマカとゆいちゃんは、いっき+しゃらのカップルと
自分たちとの間に大きな違いがあることは認識しています。

彼氏彼女ともに訳ありという点ではたいした差はありません
が、カップル成立に至るプロセスがまるっきり違うんですよ
ね。

この小説の冒頭、いっきの前向き思考に惹かれたしゃらから
の告白で付き合いを始めた二人。でもその時にはまだ、いっ
きにしゃらへの恋愛感情がありませんでした。
いっきには恋愛に突き進めるだけの精神的余裕がなかったの
で、しばらくはしゃらの片想いに近かったんです。

初期のいっきとしゃらの関係は、恋人同士というよりむしろ
相互依存関係。いじめに抵抗し疲れた二人が、プロテクター
を外してそっと寄り添える精神空間を確保すること。
二人には、どうしてもそれが必要だったんです。

いっきが中庭プロジェクトを立ち上げ、しゃらが過去のしが
らみを吹っ切ったところで、初めてお互いを本気で意識し、
恋人としてのプロセスを踏み始めました。
そこまで進むのに、半年以上かかっているんですよね。

でも、マカとゆいちゃんのケースは違います。
想いは最初から双方向。そして二人の恋愛感情には余計なバ
イアスがかかっていませんでした。ごくごく普通の両想いで
すね。
ですから、ゆいちゃんの事件があってもなくても、何かきっ
かけさえあれば付き合いは始まっていたでしょう。

そういう両想いの場合、引力は非常に強力なんですが、相手
の実態や感情を確かめながら距離を縮めていくという中間プ
ロセスを全部すっ飛ばしてしまうことがあるんです。

しかも告白のきっかけはゆいちゃんが巻き込まれた事件でし
たし、その時のマカの家庭環境は最悪でした。
二人は、自分への好意を確認出来た時点で相手に逃げ込んで
しまったんです。
そらあ、ベタ甘になるのなんか当たり前ですよ。(^^;;

極度の共依存を、『大恋愛』と書かれたシールをべったり
貼って隠してる。
それが……マカとゆいちゃんのカップルなんです。


           −=*=−


本小説には、いっきたちより年上のオトナのカップルがたく
さん登場します。五条さんとタカは言うに及ばず、中沢先生
とかんちゃん、えびちゃん(旧おぎちゃん)と江平さん、
リックさんとしずちゃん、宇戸野さんと半田さん、行長さん
と糸井先生、山崎さんと阿部さん……。

こんなにカップルにしてええんかいなって感じもしますが、
経済的にも精神的にも成熟している大人は、単なる好き嫌い
だけで伴侶を決めません。相手に何を求めるか、自分が何を
提供出来るか、それを地に足つけて考え、二人での生き方を
模索します。

誰がどういう動機で伴侶を探すにしても、そこには自身の経
験や人生観が色濃く反映されます。本話の登場人物にも、当
然そういう背景を割り振ってあります。

でもね、いっきたちのような高校生はまだ被扶養者。
単純な好き嫌い以外の感情が入り込みにくく、カップルであ
ることの必然性がオトナに比べてうんと薄いんです。

行き来する感情はピュアなんですが、何せ線が細い。
好意を持続させるためのエネルギーが全然足りません。
だからラブ以外の不純物が入ると、こじれやすいんです。

未成年に発生しやすい恋愛熱と現実との落差。
それが分かりやすいのは、新潟旅行編での片桐先輩と八代目
(日浦準規)のエピソードですね。

運命的な出会いを経て恋愛感情がぱんぱんに膨れ上がった二
人は、一緒になりたい一心で『結婚』を口にしました。
その二人に、準規の父親や七代目宗喬が揃ってでっかい雷を
落としました。

生活する苦労も仲を持続させる苦労も知らないくせに、何が
結婚だ! ガキがのぼせやがって、バカヤロウ!
まあ……当たり前です。いっきも呆れてましたね。(^^;;

いっきの親は二人とも孤児。ですから、生活の苦労が骨の髄
まで染み込んでいます。
いっきは、質素で堅実な生き方を徹底する親の背中をずっと
見続けてきましたので、現実を置き去りにして恋愛感情だけ
が先走ることをものすごく恐れているんです。

でも。
彼女であるしゃらの家庭も逼迫した経済事情を抱えています
ので、しゃらは現状をよくわきまえています。
状況がいっきとよく似ていて価値観を共有出来るので、二人
のバランスはとてもいいんですよね。
# 苦労人同士のカップル。(^m^)

所帯じみていてじじむさいいっきですが、現実を見据えた上
で将来像をきっちり描こうとする姿勢は、しゃらにはっきり
見えます。それが、しゃらの信頼感、安心感に繋がっていま
す。

マカとゆいちゃんのカップルは、全然そのレベルに到達して
いません。
互いに対する好意だけがカップルを支配していて、先を考え
る余裕が二人にはまるっきりないんです。
# まだ高二だしね。(^^;;

僕は、ゆいに起きたアクシデントを気にしないよ。
そう言ってくれるおおらかなマカの姿勢は、ゆいちゃんには
確かにありがたいんですが。
ゆいちゃんのマカに対するリクエストは、本当はもっともっ
とデリケートなんです。

『わたしをもっと気遣って欲しい。心の傷に配慮して欲しい』

……なんですよ。

でもゆいちゃんは、それをマカに言い出せません。

なぜ? そりゃそうですよ。
ゆいちゃん自身が、新聞部のえぐい記者として他の子のデリ
ケートな案件を無神経にかき回してきたからです。
# ある意味、自業自得。
# 病室でも、いっきにきっちりねじ込まれてましたね。(^^;;

隠すという意図はなくても、事実として見える気持ちと見え
ない気持ちとがありますよね。
意思疎通が足りないことで生じる微妙なアンバランスが大き
な好意の流れの影に潜んでいて、いつか自分たちに向かって
牙を剥くんじゃないか。
そういう不安を、マカもゆいちゃんも漠然と感じているんで
す。

でも、互いの心の奥底に突っ込んで真意を確かめられるとこ
ろまでは、付き合いが深くなっていません。

しかも。二人の間にかなり大きな意識差があります。
しんどい状況の割には、お菓子のことをのほほんと考えてた
りするお気楽お子ちゃま気質のマカ。
マカに寄り添うために、無理は承知の上で歩き出そうと悲壮
な決意をするゆいちゃん。

男の子と女の子の精神発達速度のズレが、こういうところに
も顔を出しますね。

そして。
ゆいちゃんの自立は、心のリハビリが進んでからスタートで
すから、まだまだずーっと先の話。
でもマカの自立はゆいちゃんのこととは関係なく、もう待っ
たなしなんです。

そういう立場の差、危機感の差が、二人の間できちんと認識、
共有されていません。
これじゃあ、いっきでなくとも心配になりますよ。
危なっかしくてかないません。

今回アップした小さなクリスマスストーリーでは、好意以外
のものをどうやって盛り込むか、そのために自分はどうすれ
ばいいのかという『次』の視点を、ちょっとだけ二人に意識
させました。

いっきとしゃらのカップルも通ってきた道です。
少しだけ視点を先に置く……それが、二人の付き合いをより
深めることを切に祈りたいと思います。


           −=*=−


短いSSでしたが、『普通』という言葉や概念を多義的に
使って展開してみました。

何をもって『普通』と称するか。
実は、それには確固とした規定も概念もないんです。
普通ってのは、とても恣意的に使われる言葉なんですよ。

普通であると位置付けるのが、良いことにも悪いことにもな
りうること。
わたしたちは、今一度その意味を精査すべきなんじゃないか
なあと思ったりします。

自分を、無意識のうちに『普通』の檻に閉じ込める前に。


           −=*=−


さて。この後またしばらくの間、てぃくるでしのぎます。
本編再開までもうちょいお時間を頂戴します。m(_"_)m



ご意見、ご感想、お気づきの点などございましたら、気軽に
コメントしてくださいませ。

でわでわ。(^^)/



sk.jpg



「棚を吊ってみたんだが」

「何を乗せるんだ?」

「猿」

「お前用か」

「うきっ!」


(^^;;




サルノコシカケの仲間。
キノコとして見えるのは、まさに氷山の一角です。
キノコの本体である菌糸は、すでに材の中を縦横無尽に食い
荒らしています。(^^;;

 

 


nice!(82)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 82

コメント 6

ぽちの輔

我が家の梅の木にも似たような形の茶色いヤツが付いてます。
やっぱりサルノコシカケなのでしょうか^^;
by ぽちの輔 (2016-12-25 05:50) 

JUNKO

座りやすそうな腰掛ですね。
by JUNKO (2016-12-25 16:32) 

majyo

腰掛みたいなキノコはいっぱい見ます
白いのは無いかも?
皆、サルのコシカケの仲間でしょうか?
by majyo (2016-12-25 19:35) 

水円 岳

>ぽちの輔さん

コメントありがとうございます。(^^)

梅の木に出るサルノコシカケの仲間はいろいろある
んですが、大型のものだとコフキサルノコシカケが
有名です。梅の木に出るものがもっとも抗がん作用
が強いと珍重されて、高値で取引されたりします。

あ、実際には医学的根拠は何もありません。鰯の頭
も信心から、ですね。(^^;;


by 水円 岳 (2016-12-26 09:05) 

水円 岳

>JUNKOさん

コメントありがとうございます。(^^)

猿は座れると思いますが、さすがにわたしが座ったら
壊れそうです。(^^;;

毎年成長するタイプだと、大きいものは直径が30センチ
以上になるようです。(^^)

by 水円 岳 (2016-12-26 09:07) 

水円 岳

>majyoさん

コメントありがとうございます。(^^)

サルノコシカケの仲間(多孔菌類)は、ほとんどが硬い
キノコ。木を腐らせる菌ばかりなので、朽木から出て
いる硬いきのこなら、大半がサルノコシカケの仲間で
間違いないかと。(^^)

残念ながら、人間が嚙み切れる硬さのものはマイタケ
などほんの少ししかありません。(^^;;

by 水円 岳 (2016-12-26 09:11) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0