てぃくる 1061 おいしそうですね [てぃくる]
「今年は猛暑だったけど、その分ぶどうが甘くなっておいしかったですねえ」
「ええ、そうですね」
「高級品だったシャインマスカットが手頃な値段になったのも嬉しかったけど、やっぱり王道の黒ぶどう系が好きでしてねえ」
「なるほどー」
「巨峰系……巨峰とかピオーネとか藤稔とかもいいんですが、少し粒が小さいベリーAがまたいいんですよ」
「ほーほー」
「あの……察していただけませんか?」
「なにを?」
「いえ、おいしそうなものを目の前にぶらぶらされると、ほら、つい手が伸びそうになるじゃないですか」
「ああ、これは気が利きませんで。お好きなだけどうぞ」
「え? いいんですか?」
「うちでは誰も食べませんので」
「なんともったいない。こんなに良形で。色も見事だし、ブルームが吹いて甘そうなのに」
「小さいですから」
「では、遠慮なく」
「どうぞどうぞ」
ぐわあああっ!
まずいーっ!
なんじゃこりゃあっ!
まずいーっ!
なんじゃこりゃあっ!
「ああ、それね。そもそもぶどうじゃないんです。アオツヅラフジと言ってね。まずいだけでなくて……」
毒です
渋柿を手に食べ頃を思案する
Miniatures by Yan Volsy