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三年生編 第100話(6) [小説]

いろいろ考え込んじゃって、勉強に今いち集中出来なかっ

けど、昨日の分も取り返さないとならない。
午前中いっぱいは机に向かった。

「うー、腹減ったー」

母さんは、今日シフトに入ってなかったはず。
昼飯が当たるかな?

のたのたとリビングに降りたら、醤油系の匂いが部屋いっ
ぱいに漂っていた。

「へー、晩ご飯以外に和食は珍しいかも」

鼻をひくひくさせていたら、やっぱり鼻をひくひくさせな
がら実生が降りてきた。

「お醤油の匂いだー」

「うん。昼に和食は久しぶりだよな」

とか。
話しているとことに、母さんが複雑な表情で登場。

「あれ、どうしたの?」

「いや、裏の河野さんの奥さんから、採れ過ぎちゃったか
ら少し手伝ってくれって言われたんだけどさー」

「へー、野菜?」

「そう。ニラをいっぱいいただいたの」

「わ! ニラかあ」

うちは、全員ニラ、ネギ、ニンニク系は大好き。
臭いの全然平気軍団なんだよね。
でも、母さんの表情が微妙ってことは、もらった量がめっ
ちゃ多いんだろう。

「茹でて冷凍するにしても、ある程度は今日明日で使って
減らさないと」

「そんなにいっぱいもらったの?」

「牛や馬に食べさせるくらいある」

「げー」

いろんなメニューにニラが侵入してきそう。

「で、昼はニラの卵とじね」

「わあい! 大好きー」

実生がはしゃいだ。うん。僕も大好き。全然問題なし。

「いいねー」

「夜はニラギョウザ。あんたがたも包むの手伝ってね」

「うーい」

「ねえ、お母さん。焼くの? 水餃子?」

「焼くわ。水餃子だと、それだけでお腹いっぱいになっちゃ
うし」

「わあい! わかったー」

一ヶ月ずっととかならあれだけど、一日くらいニラたぷり
のメニューなら全然おっけー。

ダイニングテーブルの上には、ほかほかと湯気を立ててる
出来立ての卵とじがたっぷり。
うん、たまにはこういうお昼ご飯もいいよね。

「ねえねえ、お母さん」

実生が、テーブルに着くなり母さんに質問を投げかけた。

「なに?」

「ニラってさ、精がつくからお坊さんが食べたらだめなん
だっけ」

「そうなんじゃない? ニンニクとかもそうでしょ」

「ふうん。精がつくってのがよく分かんないんだけど」

「元気になるっていうことよ」

「ええー? お坊さんは、元気になっちゃだめなの?」

「必要以上には、ね」

「うーん……」

実生にはぴんと来ないんだろな。


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