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三年生編 第100話(5) [小説]

素美さんのことから離れて、自分をチェックしてみる。
変化が欲しかった僕は、自分で変化を作ったし、その変化
をこなせてきてると思う。
……そう、『こなせてる』なんだよね。

変化に挑んではいるよ。後込みはしてないつもり。
でも、それが本当にチャレンジかどうか自信ないんだ。

守るべきもの。壊すべきもの。
チャレンジで身につくこと、失うもの。
まだまだ僕にはわからないことばかりだ。

「はあ……」

ただ。
黙っていても変化はする。
そして、変化させられるよりは、変化を力に変えたり、楽
しんだ方がいいよね。

きっと素美さんも、考え方をそんな風に切り替えたんじゃ
ないかな。

いつまでも変化に挑まず、それどころか変化に翻弄され
て、どんどん危険水準に近付いてる悪い例が二つ。
しゃらのお兄さんと長岡さんのお兄さんだ。

いきなり海外に飛ばされることになった長岡さんのお兄さ
んは、変化というにはあまりにえげつない大波をかぶっ
ちゃった。
変化に一切逆らわないで、ただその運命に乗っかってどん
ぶらこと流されてきたしゃらのお兄さんは、自我を激しく
すり減らしちゃった。

望ましい変化と望ましくない変化がある。
だからこそ、ただ一方的に変化を受け入れるだけじゃ、自
分自身が劣化しちゃうと思うんだ。

特に、しゃらのお兄さんは厄介だよ。
今、タカにど突かれど突かれしながら働いてることは、何
もお兄さんのためになっていないと思う。
命令されてしょうがなくやってるだけ。機械と同じ。
強制労働が嫌だって反発する、その気力すらないってこと
なんだもん。

だから、こらあかんとタカが手を引いた途端に、どこかに
またどんぶらこと流れていくだろう。
それで……本当にいいのかなあ?

もうサポーターはいないよ。どこにもいない。
ヤクザにすら役立たずって言って見放されてるのに、どこ
に自分の置き場があるの?

人の憐れみとか善意をあてにするなら、それがないと生き
てけないっていう演技くらいは必要だと思うんだけど、そ
れすら出来てない。
しゃらは……兄貴の将来なんか、考えたくもないだろうな。

挑んでるけど、なかなか変えられない出来損ないの自分。
でも、僕もしゃらもまだ諦めてない。アクションしてる。
だから、全体としてはいい変化の波に乗れてるんちゃうか
なあと思う。

いつか。
今でなくてもいいけど、いつか。
しゃらの兄貴もそう考えてくれればいいなと、心底そう思
う。

「そうじゃないと、しゃらがかわいそうだよ。全部兄貴の
とばっちりなんだからさ」



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