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二年生編 第80話(5) [小説]

「おしまい」

「うー、鮮やかやのー」

りんが腕組みしてうなる。

「ったく、こんなのは嬉しくもなんともねー。あ、北尾さん。
夏休みの間は、寝太郎の電話とメールを着禁にしといて。そ
の後どうするかは、北尾さんに任す」

小さくうなずく北尾さん。

ずっと黙ってたしゃらが、小声で確かめる。

「いっき。北尾さんの……調整……するの?」

今朝僕が爆弾落としてるから、嫉妬剥き出しにはできないけ
ど、気分はよくないんだろう。

「寝太郎は、そこまでずうずうしくないと思うよ。北尾さん
がノーって言わないから、どこまでもつけ込んで来てただけ。
僕が入ってめんどくさくなったら、他を探すでしょ」

「そ……か」

りんに突っ込まれる。

「さっき、北尾さんより強力なって言ってたのは誰? 天交
くんか誰か?」

「いや、リョウさんさ」

「あ、なある。人相変わりそうだな」

「ちったあ限界まで絞られりゃいいんだ。あんのばかった
れー!」

「ひひひ」

返す刀でしゃらにも一撃。
これもタイミングが合わないと言えないから、今のうちに。

「しゃら」

「な、なに?」

「おまい、タルボットのバイトで、北尾さんと全く同じ立場
やろ」

ぎくっとして、うつむくしゃら。

「僕には言いたいことを何でも言えても、まだ他の人に意思
表示しきれてない。言えないっていうストレスを、全部僕の
ところに持ってこられちゃ困る」

「……」

「北尾さんもしゃらもだけど。ちゃんと訓練して。僕は、そ
こまでは面倒見られない」

さて。

一件落着。

「じゃあ、僕は引き上げるね。あとはレディースでなんとか
してちょ」

りんやばんこにいじられないうちに、僕はさっさと退散した。
残りのメンバーでどういう話になるのか分からないけど、僕
はいっぱいいっぱいだ。

今日は、もう営業終了。

「ただいまー」

「けり付いたの?」

早速母さんのチェックが入る。

「付けたよ」

「あんたが?」

「そう。北尾さんを引っぱり回してる子に釘を刺した」

「恨み買わない?」

「いや、そう言うんはたぶんないと思う」

「ならいいけど……」

「せっかくの夏休みなのに、こんなんで時間潰されるのはか
なわんわ」

ジェニーにとっても、今日はしんどい一日だっただろうなあ
と思う。

でも……それが僕らなんだってこと。
理想的な、なんでもサポートしてあてがってくれる神様じゃ
ないんだってこと。
それは……分かってくれたんじゃないかと思う。

悩みも、マイナス感情もある同じ高校生だってことを……。
感じ取ってくれると嬉しい。

ピンクの小花がかわいいオジギソウ。
へたに触られるとヘコむ。
それは僕も、しゃらも、ジェニーも、北尾さんも、みんな同
じだ。

でも……オジギソウはそれだけじゃない。
枝にすっごいトゲを持ってる。
下手に手を突っ込めば、それはその手を傷付ける。

だから……ほんとは気付いて欲しい。
ちゃんとトゲがあるんだってことを。
ただ弱々しく萎れるだけじゃないんだってことを。




ojg.jpg
今日の花:オジギソウMimosa pudica

 


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ももんが

ご訪問ありがとうございます。
最近ようやく、少しゆっくりPCに向かう時間が取れるようになりました。
ぐりーんふぃんがーずくらぶ日誌も、さかのぼって読み進めています。
何か、いつも懐かしいようなうらやましいような切ないような気分になってしまします。
これからも、楽しみにしてます。
by ももんが (2012-10-22 23:20) 

水丸 岳

>ももんがさん

コメントありがとうございます。(^^)

これから段々また慌ただしくなってきますね。
どうぞご自愛くださいませ。(^^)

お話の方は、これから少しペースを落とします。
ゆっくりお付き合い下さい。(^^)/


by 水丸 岳 (2012-10-24 00:20) 

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