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てぃくる 1013 雪のように白く [てぃくる]


「ただ白いのはいやなんだよ。雪のように白くなりたいんだ」
「ほう? 白いものは他にもいろいろあるのに。わざわざ雪か。何か理由があるのか?」

「白さを失うと同時に、色自体も失うだろ? その潔さが好きなんだ」
「そう見えるのはわかるが、実際は違う」

「え?」
「雪ってのはど真ん中に塵の核がある。それを起点に発達するんだよ。つまり融けても塵の色は残るのさ。ごく淡いから気づかないだけだ」

「知らなかった……」
「塵の色から解き放たれて白くなり、融ければ塵の色に戻る。自然でいいと思うがな」




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 満開のイボタの花は、どこまでも白く見える。まるで木に淡雪が降りかかったような白は、徐々にたくましくなる緑との対比がとても美しい。
 だが雪とは違い、花が白く見えるのはほんのわずかな間だ。そのあとは茶色くくたれて見苦しくなる。だからと言って、他の色に咲くことはできない。

 いいではないか。ほんのひとときであっても、雪の如く咲き乱れる様を誇るがいい。その時以外は、それがなんの木であるかさえ意識されないのだから。





  台木のイボタが今年も咲き匂う






How Was It for You by Snowy White



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