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三年生編 第109話(7) [小説]


無事にお披露目が終わったということで、高校生メンバー
でリドルになだれ込んだ。

「それにしても。先生も相変わらずだよなあ」

僕がぶつくさぼやいたら、かっちんがすかさず突っ込んだ。

「いつも通りだろ。あんなもんだと思う」

「そう?」

「大上段にとか、かしこまってとかが苦手なんだよ。俺と
同じだ」

「それって、まるで僕は得意みたいな言い方じゃん」

「ちゃうの?」

なっつにも突っ込まれて、思わずうなる。

「ううー」

「きゃはははっ!」

しゃらと実生は揃って笑い転げてるし。

「お兄ちゃんてば、何気にじゃなくて思い切り偉そうなん
だもん」

「げー」

「でも、それはポーズなんだよね」

しゃらが、さらっと言った。

「先生がちゃらんぽらんを装うのと同じ。ポーズ」

しゃらは、僕だけでなくみんなを見回した。

「ここにいる全員、そうでしょ? わたしもだし」

「だな」

かっちんが、頭をばりばりかき回しながら認めた。

「そうやって自分を守ってるんだもん。しょうがないよ」

そう。
しょうがない。
しょうがないで済むこと、済まないことはあるけど。
でも、自分を壊してまで変えなきゃならないことは、そう
多くない。

かんちゃんの挨拶がそうだったよね。
もう削れないって。

弱いってことを武器にして欲しくはないと思う。
だって、その弱さを誰もが認めてくれるわけじゃないから。
でも、だからと言って自分を鉄筋コンクリートの建物に作
り直せっていうのは無茶な話だよね。

僕らが自己防衛のために使ってるポーズっていうのも、そ
ういうものなんだろう。
役に立つことも、害になることもある。
だから、効果を見極めながら自分で調整しなさい……それ
しかないんだろうな。

ポーズっていう言葉にトラップされて、みんな腕組みポー
ズをしてたところに、ドアベルの音が響いた。

ちりんちりん。

「ううー、肩凝ったー」

あ、中沢先生じゃん。

「あれ? かんちゃんと一緒でなくていいんですか?」

「林さんに捕まってる。わたしはちょい野暮用があって、
ここで待ち合わせ。ああ、さっきはありがとね」

「いえー、和服もすっごい似合ってましたよー」

しゃらがむふふ顔で先生を持ち上げる。

「あんなの、三十分が限界。式で和服着るやつの気がしれ
んわ」

どわはははっ! 大笑い。


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