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三年生編 第104話(1) [小説]

9月26日(土曜日)

「明日、授賞式かあ」

高校ガーデニングコンテストへの応募や庭づくりは鈴ちゃ
んたち二年生が全部仕切ったから、関われなかった僕は
どっか不完全燃焼。
何かやり残した感がどっかにへばりついたままで、どうに
ももやもやする。
でも時間は巻き戻せないから、一方的に不満を膨らませて
もしょうがない。

授賞式の会場は東京だ。
ここからそんなに遠くないけど、レセプションとかもある
みたいだから一日潰れるだろう。
その分、今日は根を詰めておかないとね。

目覚ましかけて早起きした僕は、早朝からびっしり数学と
英語の勉強に没頭してた。
集中して勉強するっていうのとはちょっと違うけどね。
僕は、なかなか消えてくれないもやもやのことを一切考え
たくなかったんだ。

昼前にカバンをパッキングして、制服に着替える。
夕方まで記述式の模試だ。
もう、がっつり実戦式の模試になってくる。

苦手で点数が目標に届かない科目、得点が安定しない科目
に時間資源を集中させなさい。
それが、えびちゃんや瞬ちゃんのアドバイスだ。
僕の場合、それは数学と英語になる。

だから、今日受ける模試も数学と英語だけ。
生物はいつもいい点が取れてるし、化学は半分取れていれ
ばいいって言われた。
それより、配点の大きい数学と英語で絶対取りこぼさない
ようにって。

うう。その通りなんだよなー。
数学は、問題集や過去問のわかりやすいところはだいたい
行けてるけど、ちょっとでもひねりが入ると正解率ががく
んと下がる。
英語は、えびちゃんにどやされた出来のムラがまだ解消し
てない。
模試のたびに点数が乱高下してて、自分でもヤバいなあと
思うんだよね。

えびちゃん曰く。
勉強時間を多く割くだけでなく、実戦形式の模試で時間配
分や解くコツをつかみなさい!
瞬ちゃん曰く。
ただ漫然と模試をこなすだけじゃだめで、一つ終わったら
結果をもとに勉強方法を見直して弱点解消に努めろ!

ごもっともな指摘が、容赦なくどかどか降ってくる。
そして、次はがんばりますの『次』が、もう残り少ないん
だよね。

『どうしたらいいか』の部分をいくら考え込んでもしょう
がない。やるっきゃないんだ。
さあ、一踏ん張りしますか!

忘れ物がないかをもう一度確認し、家を出て玄関の鍵をか
ける。鍵を引き抜いた時に、ふと思った。

父さんは仕事。母さんはパート。実生はバイト。
そして……僕は模試だ。

我が家は、空になる。
日常っていうのは、どんどん変化しちゃうんだなあと。
そんなことをちらっと思いながら家に背を向け、ちゃりに
またがる。

「さて、と。いっちょ踏ん張りますか!」


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