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三年生編 第98話(4) [小説]

僕の膝の時もそうだったけど、何も制約なくて動けてた時
のイメージをどかさないと、体が無意識に動いちゃう。
それが……無理につながるんだよね。
一段落としたところに自分を立たせるのも、大事な勇気な
んじゃないかなあと思ったりする。
僕も体が動き出すとぶっ飛ぶ方だから、しゃらのお母さん
のことなんか偉そうに言えないけどさ。

バスに乗らないでしゃらとしゃべりながらゆっくり歩いて
いたら、僕らを追い越して行ったバスが坂口のバス停に停
車して、お客さんを何人かぺっと吐き出した。

何気にそれを見ていたら、おじさんおばさんに混じって一
人だけ若い女の人が。

ショートヘアで、サングラスかけてて、ファッションは今
風。
すっごいスタイリッシュ。でも背筋がぴんと伸びてて、身
のこなしがきびきびしてる。かっこいいなあ……。

僕がその女の人に気を取られていたら、しゃらに全力で尻
をつねられた。

「ぎゃおうっ!」

「何、見てんのよ」

「ううー」

僕の悲鳴が聞こえたのか、その女の人がこっちを見てくすっ
と笑った。ちぇー、恥ずかしいよう。

「しゃらー、つねるなら場所を考えてくれよう」

「つねられるようなことするからでしょ?」

「バス停見てただけじゃんかー」

「んなわけないでしょ!」

こわこわ……。

その女の人は、バスから降りたあともそのままバス停で僕
らの方を見てる。その横を通り過ぎないとならないから、
ばつが悪い。ちぇ。

むくれたしゃらを従えてバス停の横を歩き過ぎようとした
ら、まるで僕らを待っていたかのように女の人から声をか
けられた。

「よう、お二人さん。相変わらずだなあ」

「はあっ?」

思わず声が裏返ってしまった。
ちょ、ちょっと。こんな知り合いなんかいないぞー?

しゃらの目がぐいんとつり上がって、不機嫌を通り越して
怒りモードに突入。
厄介なことになったなあと思ったら。

「おいおい、御園さん。妬くのもほどほどにしないと、本
気で工藤くんに逃げられるぞー」

女の人が、サングラスを外しながらしゃらに突っ込んだ。
むきになったしゃらが反撃しようとして……。

「あああっ! うっそお! 片桐先輩だーっ!」

……と絶叫した。


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