てぃくる １０３０ 濡れ衣 [てぃくる]
「お主、祟られた草だそうじゃの」
「誰がそんなことを言った？」
「儂ではない。じゃが、名に負っておろう？」
「俺が名乗ったわけじゃない」
「そうじゃな。にしても不憫じゃのう」
「別に。俺は俺の生き方をするだけよ。誰の助けにもならぬが、誰の邪魔をもせぬ」
「ふむ。お主の目の前で惨劇があったと聞くが」
「阿呆。世の中に兄弟の鷹匠がどれだけいるか知ってるのか？」
「鷹匠自体が絶滅危惧種じゃな」
「そうだろ？ 俺の顔についた斑は油点という。血飛沫とは関係ねえ。祟られてるってのは濡れ衣だ」
「そうか」
「ついでに言うなら、俺の薬としての有効性にも疑問符がついてる。あてにすんな」
「鷹の傷には効いても、人には効かぬということか？」
「さあな。俺は医者じゃねえし、薬として生まれてきたわけでもねえから、知らん」
ということで、オトギリソウです。
弟切草。物騒な名ですね。鷹匠が鷹の傷を癒す妙薬として門外不出としていた薬草。それを鷹匠の弟が他者に漏らし、激怒した兄が弟を斬り殺してしまいました。その時の血飛沫が草にかかって染みついた……というのが名の由来なんですが。人より鷹の方が大事なのかよ。とほほ。(^^;;
由来の真偽はともかく、古来から傷薬として用いられてきたのは洋の東西を問わず同じのようです。英名はセントジョンズワート。聖ヨハネ祭の頃に花が咲く薬草というのが由来だそうで、日本とはだいぶ違いますね。(^^;;
傷薬以外にも様々な薬効があるとされていますが、薬理が強く、他の薬品との交互作用も大きいので、素人判断での服用は控えた方がいいようです。
オトギリソウの仲間は、園芸植物としてもたくさん用いられていますね。薬としてより、観賞用として楽しんだ方がいいかもしれません。
時を経て心の傷からミント香
Time In A Bottle by Christine Collister
恐ろしいお話じゃのう( ﾟДﾟ)
オトギリソウ、化粧水などの成分表示に見たような
ヒペリカムの仲間でしたか？
by mitu (2023-07-13 07:31)
こんな可愛いオトギリソウにも怖い過去が有るんですね、この赤い斑点を見ると思いだしそうですね。
by kousaku (2023-07-13 11:16)
すごいドラマがあるのですね。初めて聞きました。
by JUNKO (2023-07-13 17:28)
＞mituさん
コメントありがとうございます。(^^)
セイヨウオトギリソウの抽出液は、化粧品や健康食品な
どに使われているようですね。
ご指摘のとおりで、ヒペリクム類がオトギリソウの仲間
になります。(^^)
by 水円 岳 (2023-07-13 23:34)
＞kousakuさん
コメントありがとうございます。(^^)
名付けも結構えげつないものが多いようで。(^^;;
有毒なもの、棘のおおいもの、役に立たないと
されているものには容赦がありません。(^^;;
by 水円 岳 (2023-07-13 23:35)
＞JUNKOさん
コメントありがとうございます。(^^)
語源にはいろいろ脚色が入りますので、どこまで
が本当かには疑問符がつきますが。
それでも、一度聞いたら忘れられないショッキング
な語源であることは確かです。(^^;;
by 水円 岳 (2023-07-13 23:37)
この小さな赤い点が弟切草の由来なのですね。ひどい話‥
でもそういえば昔、聞いたことあるような（笑）
最近、ビヨウヤナギのことなど調べていた時にオトギリソウって何？御伽？と、ふと思ったこともあったのですが‥忘れてました。
ヒペリカムは、魔除けの柱の上に飾るというような意味だったかしら。イメージ違いますね^^;
by sana (2023-07-15 01:05)
＞sanaさん
コメントありがとうございます。(^^)
オトギリソウ以外にもイヌノフグリとかママコノ
シリヌグイとかブタノマンジュウとか、変なネー
ミングの和名は結構多いんですよね。(^^;;
もっともラテン語の学名にしても、チョウマメや
キツネノタイマツのように「おいおい」という
ものはありますが。
by 水円 岳 (2023-07-15 23:41)
そんな怪奇な由来があったとは驚きです。でも赤の斑点があるからこそ可愛いし無かったら普通の黄色の花っていう感じです。
by beny (2023-07-18 08:45)
＞benyさん
コメントありがとうございます。(^^)
油点はチャーミングポイントですね。(^^)
オトギリソウの仲間にはどこかここかにあるので、見分
けるのにも役に立ちます。
一回、お茶を作ってみようと考えているんですが、
はっと気づくともう花が終わっているという……。(^^;;
by 水円 岳 (2023-07-18 21:56)