てぃくる 1108 白鳩 [てぃくる]
てぃくる 1107 陽の雫 [てぃくる]
満開のサンシュユ。
葉が開く前に咲く黄色い花は数多いんですが、サンシュユの黄色は輪郭が淡くて圧迫感がないのに、しっかり存在を主張するんですよね。
それは、まるで零れ落ちて四方に散りゆく陽光の雫のよう。
春爛漫が来る少し前に膨らむ暖かさを、そこはかとなく予感させてくれます。
春光に絹糸結び放ちけり
Honeydew by Singto Conley ft.Hikaru Station
てぃくる 1106 これでも [てぃくる]
「散ったあとの桜?」
「桜の開花はまだ先だよ」
「じゃあ、梅が散ったあと?」
「梅もまだ咲き残ってるって」
「じゃあ、これはなに?」
「まさに満開の花だよ」
「散った後じゃなく?」
「今がまさに満開」
「ええー?」
「嘘じゃないってば」
早春の樹木の花は、意外に地味系が多いんです。
これなんか、まだ目立つ方ですよ。
ハナノキが一斉に開花しました。
ハナノキはカエデの仲間ですが、他のカエデ類が開葉と同時くらいに花を着けるのに対し、開葉前に一斉に花を開きます。見ての通りで決して派手な花ではないんですが、地味系の多いカエデ類の中では花が目立ちますね。だからハナノキと名付けられたのかなと。ただ花期は短く、展葉するまでは地味な枝に戻ってしまいます。
日本の固有種ですが自然分布域がとても限られていて、天然記念物に指定されています。紅葉もとてもきれいですよ。(^^)
卒園児頬膨らませ花を待つ
They Say It's Spring by Tommy Flanagan
てぃくる 1105 太陽のほつれ毛 [てぃくる]
フサアカシアやギンヨウアカシアの黄色いぽんぽんが、ゆっくりほつれてきました。
まだ背景に寒々しさを感じますが、垂れ落ちてきた日差しの糸が絡まり合って小さな毛玉になる時期が来たのでしょう。
春早くに黄色い花をどっさりつけるアカシア類。一般にはミモザの名の方が通りがいいのですが、ミモザははっきり別属になります。花の形はよく似ているんですけどね。本当のミモザでもっとも馴染み深いのはオジギソウ(Mimosa pudica)です。アカシア類によく似たぽんぽん型の花をつけますが、花は黄色ではなくピンクです。
はちみつ色のぽんぽん。可愛いんですが、花のあとに実る種子が散らばると、あちこちから芽が出てきます。放置すると恐ろしい勢いで大きくなりますので、ご用心ください。
ちなみにばっさり切り倒しても根から芽吹きして再生するので厄介です。庭に植えたはいいけれど、難儀しているお宅は結構多いんじゃないかと。(^^;;
アカシアの花房捧げニケ通る
Venceremos by Working Week
てぃくる 1104 食べごろ [てぃくる]
「なあ、俺、前々から気になっていることがあるんだ」
「なんだ?」
「夏みかんてのは、いつ食べるものなんだろう」
「夏ってついてるから、夏が旬なんじゃないのか?」
「でも、今もぷりっぷりに実ってるよな」
「まあな。でも、今はまだ酸っぱいんじゃないのか」
「ふうん。じゃあ、夏になれば甘くなるのか」
「どうだろ。年中酸っぱいような気がするけど」
子供の頃。夏みかんが大嫌いでした。皮が厚くて剥きにくい上に、とにかく口が*(アスタリスク)になるくらい酸っぱいから。誰がこんなものを喜んで食べるんだろうと不思議に思いました。
じゃあ、今は? 今も大の苦手です。もともと酸味のきつい果物は得意じゃないので、夏みかんが天敵なのはずっと変わっていません。ぎりぎりセーフなのがハッサクで、それでも買ってまでは食べません。
ただ。加工品となると話は別です。生食ではただ酸っぱいだけの柑橘類もジャムやコンフィチュールに加工すると、とたんに別の顔を見せます。爽やかで香りがよく、味の輪郭がしっかりしているのでとってもおいしい。ハッサクはよくジャムにするんですが、機会があれば夏みかんでも作ってみたいなあと思っています。皮やさのうに苦味があるので、マーマレードにするには少し手間がかかりますけどね。
画像の夏みかんはよそさんの庭に生っていたもの。残念ながら穫ることも採ることも盗ることもできません。写真に撮るだけです。
名を知らぬ新顔ばかり春柑橘
Once An Orange, Always An Orange by Al Stewart
てぃくる 1103 枯れ穂 [てぃくる]
暦の上ではとっくに春なのだ。早春花はすでに盛りを過ぎつつある。今はまだごく浅い緑も、日を追うごとに膨らんでくるだろう。
その中にあって、枯れ残っていた者たちは徐々に姿を消しつつある。枯れた時点ですでに終わりなのだ。意地を張って残り続ける意味はどこにもないのだ。だが、枯れてしまえば自らは動けない。ただひたすら在り続けるしかない。
枯れ穂は。わずかな乾湿を繰り返しながら、少しずつくずおれてゆく。これまで残り続けてきた者もやがて地に倒れ伏すだろう。
それまでの一間。
湿った春の雨雲を乱雑に区切りながら、あるかないかの風に身を任せている。
春萌えを待つ草原は藁のまま
Turning Page by Sleeoing At Last
てぃくる 1102 新型迷彩 [てぃくる]
「隊長! 迷彩というのは、こうなんちゅうか。べろーんと引き伸ばしたジグソーパズルみたいな模様だと思っていたのですが」
「そいつは密林の中で有効なパターンだ。整った林内では逆に目立つ。散光を模したドット柄の方が目立たないのだ」
「なるほど! 迷彩というのは奥深いものなのですね」
「うむ」
「でもお……」
「なんだ」
「俺たち、とんでもなく目立ってると思うんすけど」
(^^;;
散り斑のアオキに真っ赤な実が生っています。
緑と赤は補色の関係ですので、赤い果実は葉の緑に引き立てられとても目立ちます。タネを鳥に運んでもらう必要があるので、目立ってナンボなんですよね。
でもアオキの実にはほとんど果肉がなく、味もよくありません。好んで食べようとする鳥はあまりいないようで、かなり長い間残っているんですが。在庫一掃セールでもあるのか最終的にはほとんどなくなり、薄暗い林内のあちこちにアオキの芽生えが見られるようになります。
斑入りのアオキは園芸種ですが、種子にそのまま性質が引き継がれるようで、林内でもちょくちょく見かけるんですよね。ちなみに、この散り斑。薄暗い林内では逆に目立ちます。真っ赤な果実だけでなく、葉っぱも迷彩にはなっていません。(笑
目立ちたくないと後方へ下がれば下がるほど
後ろでは目立ってしまう
Appeal by Kirk Franklin
てぃくる 1101 問答 [てぃくる]
てぃくる 1100 最後に残っているのは [てぃくる]
「そう、あれだよ。ドロップの缶。空っぽになったと思って、逆さにして叩いたら。ぽこっと一個出てきたみたいな」
「いいねー。それがハッカの白いやつだったら最高」
「うん。そのイメージで最後に残ってるやつを見たんだ」
「白いハッカみたいじゃん」
「見た目はね。でも、こいつは逆パンドラだよ」
「は?」
「パンドラが開けちゃった函に最後に残っていたのは『希望』だろ?」
「ああ、そう」
「最後に残ったこいつは『災厄』だ」
「げ……」
そこまで言われる筋合いはないと猛抗議されそうですが。
テイカカズラはものすごく厄介なつる植物でして。地面を這い回ればうっとうしいし、木に這い上ればモンスターグリーンと化します。
園芸用のゴシキカズラ(テイカカズラの多色品種)はきれいなんですけどね……。
ちなみに巨大なタンポポ綿毛みたいなのは、テイカカズラの種子です。結構長距離飛ぶみたいで、一度発芽してつるを伸ばし始めると駆除が難しくなります。
テイカズラは地面を這っている間はまず開花・結実しません。木に登ってでかくなると花と実をつけるんです。でも、花を見たいからとうかつに地植えにしないようにしてくださいね。式子内親王への執着で墓に取り憑くカズラと化した藤原定家の名を冠しているのは伊達ではありませんから。(^^;;
妄執は右巻きか左巻きか
Obsession by OK Go
てぃくる 1099 虎は死して皮を残す [てぃくる]
「虎は死して皮を残す、か。でも現実にはありえんよな」
「腐って跡形もなくなるよ。普通は」
「つーことはなんだ。皮を剥がれて、なめされて、敷物にされたから残るっつーことだよな」
「それを残るとは言わねえよ
「じゃあ、俺たちの方が偉いってことだな」
「え? 俺たちだって腐って消えるけど?」
「いや、ちゃんと残るんだよ」
「なにが?」
ガラス
ススキだけでなく、イネ科の植物にはケイ素を溜め込んで構造を強化するものが多いんです。わたしたちが食べているお米。そう、イネもそうなんですよ。ケイ素が足らないと植物体が軟弱になるので、環境によってはケイ素肥料を与えたりします。
植物体内のケイ素はプラントオパールというガラスのような物質になることが多く、ガラス様物質ですから簡単には風化しません。つまり、ススキのようなイネ科植物が群落を作っていたという歴史が土の中のプラントオパールでわかるということなんですね。
プラントオパールは植物種によって独自の形状を示すので、生えていた植物の種構成推定にも役立つようです。
ちなみに。ススキにもたっぷりケイ素が入っていますので、枯れているからと油断すると手が切れます。(^^;;
ススキは枯れてガラスを残す……なんですよね。
割れ硝子の下には春が早く来る
ブルーグラス by 美波