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てぃくる 1188 横顔 [てぃくる]


「どうした。悩ましい横顔だぞ」
「いや……言ってもしょうがないことだから」

「俺に話してみろ。気が楽になるぞ」
「おまえの気が重くなると思うが」

「かまわないさ。俺はお気楽様なんだ。はっはっは!」
「じゃあ、教えてくれ」

「うむ。なんだ?」
「……」


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「どうしておまえの横顔は俺と違って崩れてるんだ?」




余計なお世話だっ!

(^^;;






 悩みの相談なんてものは、悩みがないから受けられるんです。
 ひどく悩んでいたら、自分の分だけで精一杯ですよ。
 ったく。

 まあ……ケヤキの種子が悩むことはないと思いますが。(笑




  煩悩に塩振りかけて樽に詰め






横顔しか知らない by ハンバート ハンバート




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てぃくる 1187 お味はいかが? [てぃくる]


 枝ごとちぎれて落ちたクロガネモチの実が、路上にぽとりと落ちていました。


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 色だけ見ればおいしそうに見えるんです。でも、鳥が寄ってたかってせっせと食べているというわけではないようです。

 モチノキの仲間は、葉、茎、実……どの部位も苦いです。罰ゲーム並の苦さですから、人間だけでなく他の動物も喜んで口にするものはいないでしょう。

 わたしは、モチノキ、タラヨウ、ナナメノキ、ソヨゴと一通り実を食べてみました(もちろん、赤く熟したものを)が、味は予想通りだったものと意外だったものとに分かれました。
 モチノキ、ナナメノキ、ソヨゴの実。しっかり赤くなって地面に落ちたものを拾って齧ってみたんですが、苦くないんです。酸味がなく、わずかに甘い。熟すと苦味が消えるんですね。ただ……味も素っ気もありません。決しておいしくはないです。
 タラヨウの実。どうしようもなく苦かったです。色が赤くなっても、熟すまでまだ時間が必要だったのかもしれません。

 で、画像のクロガネモチなんですが。まだ試していません。モチノキより開花や結実が遅いので、まだ苦いんじゃないのかなあと齧る前からびびっています。
# いや、本当に苦いんですよ。(^^;;

 モチノキの仲間には飲料として使われているものがいくつかあり、いずれもかなり苦いのが特徴です。タラヨウの新芽を加工した苦丁茶、南米でよく飲用にされるマテ茶は、機会があればぜひ試してみてください。美容と健康にいいノンカフェインの健康茶です。……苦いけど。(^^;;




  現実以上に苦いものはない






Bittersweet by Blanks



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てぃくる 1186 嫌われ者が黄金になる [てぃくる]


 誰であっても、最初から嫌われたいと望んでいるわけではない。出自なり生い立ちなりが性格形成に干渉して、嫌われ者になってしまうことが多い。そして。全ての嫌われ者が嫌われ続けることを是としているわけではないのだ。むしろその逆であろう。愛してほしい、理解してほしい、受け入れてほしいと強く望んでいるのに、差し出せば届くはずの手は誰にも届かず、逆にどんどん遠ざかる。最後まで隣に留まっているのは、孤独という名の始末に追えない餓鬼だけだ。

 嫌われたくないという願望と嫌われているという現実がかけ離れている人間と異なり、他の生物には嫌われることを生き延びる術にしているものが多い。棘を備えたり、悪臭を放ったり、毒を帯びたり。それらを歓迎する者は極めて少ない。しかし、彼らが生涯嫌われ続けるとは限らない。
 そこに生きて残り続けることと子孫を新天地に導くことは、時として背反する。それゆえ、嫌われ続けた者が突如として美の化身へと変身することもあるのだ。



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 ヘクソカズラの果実。まさに黄金の雫です。
 完熟すると悪臭が薄くなり、実をついばむ鳥も現れるのでしょう。美味しくないと思うんですが、冬の間に少しずつ消費されていきます。
 つやつやの粒は乾かしても劣化しにくいので、リースの材料にも使われます。我々もまた、彼らが臭い臭い嫌われ者であったことをすっかり忘れるのです。

 時として嫌われても、時として好かれる。そんなのがいいなあと思うものの、なかなか思うようにはいきませんね。それが、動かしにくい感情に縛られる人間のもっとも厄介なところなのかもしれません。





  朝陽を受けて輝く黄金の露は儚い






Dewdrop Cherryoak by Arborist



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てぃくる 1185 落日 [てぃくる]


 うーん……薄々そろそろじゃないかなあと思っていましたが。
 やっぱりSSブログ運用終了ですか。

 ノイズもトラブルも少ないし、のんびりしたとても素晴らしいブログサイトだったんですけどね……。


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 本館のアメブロと違い、こちらは長編小説アップ専用のサブサイト。文章は常にバックアップを取ってあるので、引越しは難しくありません。幕間繋ぎのてぃくるはnoteでバックアップを取っていますから、小説と与太話はカクヨムに持っていってもいいんですけどね……。悩ましいところです。

 とりあえず一旦は推奨移転先のseesaaに持っていき、そのあとどうするかをじっくり考えようと思います。本編の文章はかなりがっつり朱を入れないとならないんだけど、時間がなひ……。本編そのものが止まっちゃってるし。(^^;;

 即時性や速報性重視のサービスがSNSを席巻しつつある今、記事を書くのに手間暇がかかるブログは衰退しつつあるのかもしれません。でも、多様な表現を可能にしてくれるブログのスタイルは、わたしの性に合ってるんですよね。

 これまでも、アクシデントや運営元の方針転換が元でプラットフォームが廃止されたことがありました。その経験があるので、今回のことも想定範囲内。粛々と移行準備にかかろうと思います。


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 出発が華々しいのに比べ、幕引きはいつも寂しいですね。熱を失っていく落日の向こうに何が見えるかを……しばし思い浮かべています。





 終わらない物語はない
  終わるからこその物語なのだ






Until The End Of Time by Sarah Brightman



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てぃくる 1184 こっそり彩る [てぃくる]


 常緑樹の木立は、見かけが季節によってそれほど変化しません。いつもと違うなと思うのは芽吹きや開花の時期くらいでしょうか。あとはいつでも同じような顔です。

 わたしのように画像ネタをすぐ積み上げてしまうものぐさにとって、変化の少ない常緑樹の画像はすごくありがたいんですが……季節性を出そうとすると一気に難しくなります。
 映り込む空で象徴させればいいと考えがちですが、実際には夏に筋雲が見られることも冬に綿雲が見られることもあるのです。もちろん、空の青は季節よりもその時の撮影条件で動くので、あてにできません。

 でもね。よーく見ると、ちゃんと季節に応じて変わっているものもあるんです。



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 わたしがよく定点で撮る、クスノキの木立です。11月の画像ですが、見た目にはどの季節なのかよくわかりません。
 しかし。中央の木の一部がわずかに赤みを帯びているのがお分かりでしょうか? これ、ナツヅタなんです。ナツヅタは落葉樹。秋の深まりとともに真っ赤に紅葉します。晩秋〜初冬以外は色を主張しませんので、ナツヅタの紅葉が写っていれば撮った時期が秋遅くということがわかります。

 決して派手な自己主張ではありませんが、我々と同じでまとった服が秋色になると考えれば楽しいかなあと。

 クスノキの樹下ではぼつぼつ熟した果実の落下が始まっています。林床も、この時期ならではのささやかな彩りで飾られ始めました。




  見上ぐれば常葉の松にも冬の鳥






Reverie by Tim Weisberg


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てぃくる 1183 タイミングがずれてる [てぃくる]


 ヒガンバナの、しゅんしゅんとひげが伸びた姿が素敵だなと思ってさ。

 俺も真似してみたんだけど。どう?




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悪くはないけど
もうとっくにヒガンバナの季節、終わってるし


(^^;;




 オオゴチョウ(黄胡蝶)
 マメ科の花の中には、こんな風に蕊(しべ)がしゅんしゅんと伸びるものがあります。自宅で育てているヒネムなんか、蕊しかありませんし。(笑

 ヒガンバナほど凝った造形ではありませんが、個性的で素晴らしいかと。ただ……もともと熱帯植物ですから、彼岸だけでなく年中咲きます。(^^;;

(京都府立植物園、熱帯温室で撮影)




 参加のタイミングも
  離脱のタイミングも
   合ったことがない





My Baby's Got Good Timing by Dan Seals



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てぃくる 1182 腐る [てぃくる]


「なんか、すっかり腐ってもうたな」
「しゃあないやろ。腐らせんのがわぃらの仕事や。わぃらもよう腐るさかい、例外にはなれへん」
「苦労して腐らせて、最後はわしらが腐って終いか」
「そう腐るなって」



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 腐ってぼろぼろの切り株に、腐ってぼろぼろぼきのこが生えていました。ミドリスギタケかな。木を腐らせるきのこですが、木よりもずっと腐りやすいので、すでに崩壊寸前です。もっとも、きのこ(子実体)は木の中にある膨大な菌糸のほんの一部にすぎません。材中の菌糸本体はまだせっせと木を腐らせていることでしょう。

 そうそう、このきのこ。オオワライタケに近い仲間で、有毒です。猛烈に苦いので、飲み下すのは物理的に無理だと思いますが。
# 食えるもんなら食ってみやがれという感じ。(^^;;





  豆腐は腐っておらず、納豆が腐っている

  腐敗は仕方ないが、勝っても腐るやつがいる






Rotten Candy by ぷにぷに電機



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てぃくる 1181 銀 [てぃくる]


「銀色って、どんな色か説明できるか?」
「ううん」

「金色はお日様の色だ。イメージしやすい。けど、銀色ってのはよくわからないんだよ」
「そうだね」

「何が銀色なのか、物でたとえられるか?」
「ええと、銀の匙」

「たとえになってない。そのまんまじゃないか……」
「うう」


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 ヒイラギモクセイの花が満開になっています。
 キンモクセイより少し遅れて咲き始め、キンモクセイよりもおだやかな香りを漂わせます。
 ヒイラギモクセイは、ヒイラギとギンモクセイの交配種。葉縁に棘があるものの、ヒイラギほど鋭くありません。キンモクセイの華やかさやヒイラギの鋭さを少し丸めたような、まさにいぶし銀のような存在です。
 深まりゆく秋の片隅でひっそりと花をこぼし続けます。





  柊の花を護りて風尖る






Silver Song by Anthony Phillips



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てぃくる 1180 ばちがあたる [てぃくる]


「このばちあたりめっ!」
「どうしたの?」

「こいつ、俺のばちを食いやがった!」
「食べられるようなばちなんか使い物にならないでしょ」



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 あ、あのー。
 木琴を演奏するのに使う用具は、マレットと言った方がいいかと。
 確かに日本語では枹(ばち)と呼ぶんですが、罰と読みが一緒なんですよ。ばちがあたるって言っちゃうと、何も悪いことをしていない木琴がかわいそうです。(笑

 ちなみに画像のマレットもどきはヤマボウシの果実。
 こいつで木琴を叩いても音が出ずに、潰れて汁が出るだけです。罰当たりと罵られないうちに食べてしまいましょう。甘いものの酸味が乏しいので、味的には今いちですが。(^^;;





  神罰も仏果も得ずに日々過ぐる






Downwind by Gong

 ロック畑でこれだけシロフォンやマリンバを前面に出すのは彼らくらいでしょうねえ……。


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てぃくる 1179 還る [てぃくる]


コスモスは
野生化したのではない
元々が野生なのだ


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我々は
その原点に
立ち戻っただけである






 園芸種が逸出して野草化するという話をよく耳にしますが、どうもおかしいなあと思うようになりました。
 だって、全ての園芸植物は元々野草だったのですから。





  コスモスが次々空に還る夕






Cosmos by Hazy




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