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てぃくる 1139 色のない花火 [てぃくる]


「いやいやいやいや、地味な色、平凡な色でも、色があるからの花火であって、色のない花火ってのはありえんだろ」
「そうでもない」

「どういうことだ?」
「俺らは精一杯ばんばん打ち上がって花火してるんだよ」

「もちろんだ」
「だが、だあれも俺たちに気づいていない」

「……」
「情けなくて、色を失ってるんだ」



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 色を失う。
 本当に色がなくなることを意味する場合もありますが、一般には顔色(がんしょく)を失う……驚いたり、恐れたりして顔が青くなる意味で使われる言葉です。
 失われるのは平常の顔色であり、無色になるわけではありません。恥ずかしくて消えてしまいたいと言っても、消えないのと同じですね。(笑

 マサキの花。飛び出した雄蕊の様が火花のように見えて、なかなか美しい造形だと思うんですが、なにせ小さくて地味です。どんなに満開になっていても目に留める人がいません。花火を見に集まってくるのは虫たちですが、いつもいつも来客があるわけではないようです。
 ギャラリーのいない梅雨曇りの下でひっそりと散る花火。ちょっとかわいそうな気もしますが、秋以降真っ赤に実る果実は人も鳥も集めます。花火の本番は、まだまだあとのようです。




  蟻塚の門番は入れ替はってゐる






Silent Fireworks by Dapayk & Padberg



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てぃくる 1138 ひげを剃れ! [てぃくる]


「見苦しいひげだな」
「おまえこそ」

「さっさと剃れよ」
「おまえが先に剃れよ」

「剃るといいことあるのか?」
「女の子にモテる」

「そういうおまえはモテたことがあるのか?」
「ひげを剃ったことないからなあ」

 以下、無限循環。(笑


ams.jpg


 アミスギタケ
 木の切り株などを腐らせて、そこから子実体を出すポピュラーなきのこです。見かけは普通のきのこっぽいんですが、これでもサルノコシカケの仲間。傘の表面のくっきりした鱗片が特徴ですね。傘の縁部のもけもけには個体差があるようで、まるっきりおけけがないものもあります。

 食べられそうに見えるんですが、硬いし小型なので食用にはされていません。
# 出汁くらいは出そうな気がするけど、そこまで無理をするつもりもないような……。





  忘れられないことをしでかしたやつが
   過ぎたことは忘れろと言う






June by Spock's Beard



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てぃくる 1137 ひっそりと [てぃくる]




ひっそりと咲きたいわけじゃない

咲いている場所がひっそりなだけ




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 ヒメシャラ
 ナツツバキ(シャラ)よりも一回り花が小さく、優しい印象です。一斉に咲くとそれなりに見応えがあるんですが、常緑のツバキ類と違って花期も短く、あっという間に咲き終わってしまいます。それに、葉陰に隠れるように咲くのであまりアピールしません。どうしてもひっそり寂しげなイメージになりますね。

 それでも。
 わたしはこのヒメシャラやシャラの花が好きで、何度も創話のモチーフにしています。花はほんのひとときを飾るもの。造花でない限り、どんな美しい花も散り、くたり、姿を失います。ですから、限られた華の時期ならば艶やかに咲けばいいのにと憐れむ人に、わたしならこう答えます。咲けること自体が華やかなのであって、咲き方や咲き姿にはそれほど意味がないわ……と。





  飾る者はなく 飾られる要もない 沙羅の花






Walk Quietly By by Bert Jansch



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てぃくる 1136 失礼ね! [てぃくる]


「どうしたんだ? 不機嫌じゃないか」
「どっかのクソガキがわたしのスカートめくろうとしたのよ!」


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「そんなシースルーのエロいスカートはくからだよ」
「しょうがないじゃない! これがわたしのアイデンティティなんだもの」

「で、そのガキはどうしたんだ?」
「足が一本しかない、お化けだあって叫んで逃げたわ」

「根性のないやつだ。スカートも足も美味しいのに」
「頭はクサいけどね」



(^^;;




 と。
 竹林の女王こと、キヌガサタケです。本家キヌガサタケではなく、根本の玉の部分が赤みを帯び、少し小型のアカダマキヌガサタケのようです。
 てっぺんの黒い部分(グレバ)は臭いんですが、本家と違って果物系フレーバー。ショウジョウバエに大人気のようです。画像のやつはハエではなくダンゴムシにたかられていますが。(笑

 キヌガサタケはしゃきしゃきした歯応えが楽しめる優良食菌。てっぺんを取り外し、中華風にお召し上がりください。あ、生では食べないようにね。(^^;;





  青竹の肌撫でてから伐り倒す






Short Skirt / Long Jacket by Cake




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てぃくる 1135 泡 [てぃくる]


緩やかな潮流に身を任せ
暗い水中をふらふらと彷徨う泡

泡は沈むことはない
ひたすら浮かび上がるだけだ

それなのに
なかなか水面には辿り着けない

水面に届かない限り
泡でいられる

安堵と不安を
くるくると入れ替えながら

泡はとめどなく
漂う



abr.jpg




 ……ときれいにまとめてみましたが。
 画像のいちもつはもちろん泡などではありませぬ。

 これね。





 ……なんです。(^m^)


 シラカシムネアブラムシというそうで。
 ちなみに張り付いたまま動きません。まだ小さいうちはうろつくようですが、オトナになると葉に固着してしまいます。カイガラムシと同じですね。排出する甘露がべたべたで、あとで真っ黒にカビるのもカイガラムシ類と同じです。


 泡のように消えてくれればいいんですが。
 なかなかそういうわけにはいかないようです。(^^;;





  白髭を麦酒の泡でパックする






Foam by Phish




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てぃくる 1134 ないしょの話はあのねのね [てぃくる]


 なになに、秘密の話があるんだって?
 どれどれ、おじさんに話してごらん。
 おやおや、急に黙っちゃったよ。
 そもそも、おじさんなんか守備範囲外だってか。
 こらこら、それなら何か言いたそうな顔するな。
 

hnmg.jpg


 いや、このおっさんはただ花粉をつまみ食いしてるだけなので、放置プレイで正解です。(笑
 ハナムグリたちが群れ飛ぶ姿も少なくなってきました。万花咲き乱れる季節が過ぎ去ると、虫たちも必死ですね。
 アベリアは花期がとても長いので、花粉食、蜜食の虫たちにとっては救いの神でしょう。訪花昆虫が多い割に結実しないのは、どうしてなのかなあ……。





  水蜜桃(すいみつ)の滴りに秘密溶き混ぜる






Best Kept Secrets by Rue Rosa



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てぃくる 1133 貨幣価値はサイズと重さで決まるか [てぃくる]


「ふん! ゼニアオイの分際で。今時、円以下の硬貨はもう存在しないんだ。花がでかいほど高貴になるのさ」
「へえー、サイズがものを言うんだね。それなら、あんたの持ってる五十円玉はわたしの十円玉より小さくて軽いから、低価値ってことだな。一対一で交換してあげるよ」



zao.jpg



(^^;;




 ゼニアオイの語源は、中国でかつて使われていた銅貨とほぼ同じサイスだったことだそうで。
 当然ですが、ゼニアオイより花が大きい木槿も芙蓉が高価値ということはありません。花が馬鹿でかいタイタンビスカスが万人に高評価されるわけでもなければ、花がゼニアオイより小さいヒメフヨウやマルバストルムが低評価ということもないんです。それぞれの花に個性と価値がある……貨幣もそうだといいんですが、そこはなかなかねえ。(笑

 金属地金の価格が高騰していて、貨幣の生産コストが額面を上回る時代が来そうな気配。今後、どうなりますやら。ねえ、ゼニアオイくん。





  風鈴の糸に五円をぶら下げる






Two Coins by City & Colour



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てぃくる 1132 雨の花 [てぃくる]


雨の花は

紫陽花だけではない

雨滴が

花と化したものもあるのだ


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その花は

乾くことができない

ぽつりと置かれ

いつの間にか去る

小さな水滴の染みを

我々の脳裏に残して





◇ ◇ ◇

 キキョウソウ
 決して珍しくはない、路傍の雑草です。
 美しい青紫色の花は、小さいのでなかなか目につきません。
 晴れていても雨の中でも、ぽつりぽつりと咲いては消えていきます。
 誰の記憶にも残らずに、ひっそりと。




  入梅を報せる花を愛で歩く






Flower In the Rain by Jaci Velasquez



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てぃくる 1131 文句たらたら [てぃくる]


「軽飛行機をロケット打ち上げ場に誘導しないでくれ」
「文句あるなら着陸すんな」

「もさもさばっかでちっともジュースにたどり着かない」
「文句あるなら飲むなよ」

「駐機場の色が俺と同系なのはどうかと思うぞ」
「文句あるならおまえが色変えろ」

「俺はお一人様きらいなんだ。他の客はいないのか」
「文句あるなら客連れてこい」

「それにしても揺れて落ち着きのない駐機場だな」
「文句あるなら使うなって」



mel.jpg


 ああ。全て私のアテレコです。
 メランポジウムの花で食事中のホソヒラタアブさん。
 文句なんか言わずに、黙々と食事なさってました。




  黄身一つ地に落ちて咲く晴れの午後






Don't Complain by Everlast




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ちょっといっぷく その231 [付記]

 いつもお読みいただき、ありがとうございます。

 本編休止中です。
 本編再開にはまだまだ時間がかかりそう。てぃくるで埋める期間がしばらく続きますが、ご容赦ください。

◇ ◇ ◇

 なんでも値上がりの昨今、読書のお供として欠かせないコーヒーもじわじわ値上がりしてきました。大生産国ブラジルの霜害やコーヒー消費国の拡大による買い付け圧上昇の影響もあって、値段が上がる要素はあっても下がる要素がないという状態。コーヒー大好きのわたしには、ちとダメージが大きいです。
 それでも生豆を通販で買って自分でローストしている分、市販の焙煎済みコーヒーを買うよりは安く済んでいます。

 コーヒーマーケットが大きくなれば、それだけ換金作物としての価値も高まります。これまでコーヒー生産地としてカウントされていなかった国や地域でも作付け面積が増えているので、へえーこんな国でもコーヒー作ってたのかーという商品に出会えます。
 中国雲南省、ラオス、ネパール、マダガスカル、スリランカ、東チモール……。それぞれに個性的な豆を生産していて、とても楽しめます。グローバリズムには功罪あると思いますが、コーヒーで世界が繋がるっていうのはなんかいいなあと。(^^)

◇ ◇ ◇

 コーヒー豆の値上がりも痛いんですが、もっと痛かったのはコーヒーロースターの昇天。ん万円ですからねえ。まあ、うちの使い方だと相当負荷がかかっていたはずなので、六年保ったのは上出来なのかもしれません。後継機はこれまでと同じジェネカフェで、三代目になりました。少なくとも五年以上保って欲しいなあと祈ることしきり。

 ガス火が使えるなら手煎りするんですけどねー。その方が火力強いし。でも、オール電化だとどうしようもありません。(^^;;


◇ ◇ ◇

 別館のてぃくるをnoteに移動中ですが、なんとか1000話まで到達しました。あとはのんびり移行させていこうと思います。
 note移植分のてぃくるは、こちらでご覧いただけます。


 note:マガジン『てぃくる』



◇ ◇ ◇

 定番化させるつもりでコマーシャル。

 アメブロの本館で十年以上にわたって書き続けて来た掌編シリーズ『えとわ』を電子書籍にして、アマゾンで公開しています。第1集だけ300円。残りは一集400円です。
 現在、第29集まで刊行しております。ぜひお買い求めください。
 kindke unlimitedを契約されている方は、全集無料でご覧いただけます。








◇ ◇ ◇

 ご意見、ご感想、お気づきの点などございましたら、気軽にコメントしてくださいませ。

 でわでわ。(^^)/




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「ヒャクニチソウってさ。咲いたのが初日なのか百日目なのかわからんじゃん。カウンター付けてくんないかな」
「黙って咲け!」



  (^^;;


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