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三年生編 第94話(1) [小説]

9月7日(月曜日)

まあ……身内のこともプロジェクトでもいろいろあるけど。
リカバリー出来ないことではないし、これ以上事態が悪化
するってこともないだろう。

せっかくフォルサで暴れてすっきりしたことだし、集中力
を取り戻してアゲアゲで行こう。

「うーっす!」

「おっはー」

しゃらも表情が明るい。
今の仮暮らしも残り一ヶ月を切って、新しい家での生活が
始まるのが楽しみなんだろう。

ただ……朝礼がなあ。
各月最初の定例朝礼だけど、処分の発表直後だし、校長か
らかなりきついお達しが出そうな気がする。
残念ながら、完全に視界良好ってわけには行かないね。

「さて、朝礼に行くかー」

「かったるー」

みんなも、あまりいいことは待ってないだろなーっていう
感じで、だるそうに教室を出ていく。

ぞろぞろぞろ……。


           −=*=−


体育館に生徒と先生たちが全員揃って、整列。
静まり返った体育館に、大高先生の大きな声が響いた。

「校長挨拶!」

いつもと変わらない表情で、すたすたとステージの真ん中
に出た校長は、マイクを外して手に持った。
特に厳しいことを言いだしそうな感じではないけど……ど
うかな?

「おはようございます!」

おはようございまーす。
生徒の声のトーンもなんとなくどよっている。

「本日の朝礼ですが、一番最初にとても嬉しいニュースを
みなさんに報告します」

お? なんだろ?

てっきり処分関係の話が出るかと思ったら。
おやー?

「本校の部活動は近年全体的に低調で、個人部門での入賞
者は輩出しても、部として高い成績を収めることがありま
せんでした。ですが……」

ああっ!
もしかして!

体育館の中が、大きなざわめきで満たされた。

「静粛に!」

大高先生のでかい声で、警告。
体育館内が再び静まる。

「本校が誇るプロジェクト。ハートガーデンプロジェクト
が応募した高校ガーデニングコンテストで、本校は入賞の
みならず、審査員特別賞を受賞するという栄誉を獲得しま
した!」

どおおおっ!!

各クラスの部員が、一斉に弾けた。

奇声をあげる子。
ぴょんぴょん飛び跳ねる子。
拳を突き上げる子。
部員どうしで抱き合う子。

いつもならすぐに制止の声を上げる校長が、少し間を置い
た。

「お静かに」

まだ余熱とざわつきを残しながら、体育館の中が徐々に落
ち着きを取り戻す。

「まだ活動歴の浅いプロジェクト。庭作りのノウハウや完
成度は、上位校のレベルには達していません」

し……ん。

「しかしプロジェクトは学校主導ではなく、生徒主導の活
動です。学校は一切後押しをしていません。審査員特別賞
をいただいた中身は、まさにその自主性の部分なんです」

どおおっ!
体育館の中の熱気が一気に弾けた。



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