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三年生編 第86話(9) [小説]

僕や母さんのどやしが、どれくらいさゆりちゃんに効いたか
は分からない。
でも、僕らはそこまでしか出来ないよ。

さゆりちゃんにとっては、まだしんどい状態が続いているん
だろう。でも、さゆりちゃんはまだ自分しか見てない。
その視線を早く外に向けないと、どんどんリセットしにくく
なるんだ。

本当はさ、しゃら、あっきー、恩納先輩……ハードな状況を
努力して乗り越えてきた子たちの話をしてあげたかった。
でも、健ちゃんやさゆりちゃんが僕や実生の辛さを理解出来
ないのと同じで、こんな子もいるんだよって話をしても今は
何の役にも立たないだろう。

それより、これからをどうするか。
目を前に向けて、ゼロからプランを立てた方がずっとマシだ
と思ったんだ。

健ちゃんやさゆりちゃんが同情を……シンパシーが欲しいの
はよーく分かる。
でも、それじゃあ時間だけがだらだら過ぎる。

どんどん……立て直すのがしんどくなっちゃう。

「ふう」

問題集を解く手を止めて、窓際に立った。
窓から、会長んちの庭の一角がくっきり鮮やかに浮き上がっ
て見えた。

咲き誇っているルドベキア。
野生化することもあるくらい、タフで明るい太陽色の花。

僕や実生より、健ちゃんやさゆりちゃんの方がずっと明るく
てタフだったんだよ。
アクシデントがあったって言っても、持ってるエネルギーの
レベルは全然桁が違うと思う。

それを……早く、上手に使って欲しい。

ねえ、さゆりん。
咲かない花はむしられるよ?
たとえ、それがものっそ元気な花だったとしてもね。

「高校の夏休みも、これで最後かあ……」

いろいろな人から元気とやる気をもらってきた日々。
僕は、それを少しくらい二人にお裾分け出来たかな?

まだたっぷり残ってるもやもやを部屋の隅っこに放り投げて、
自分自身に気合いを入れ直した。

「さて……もうちょい踏ん張るかあ!」




rudbec.jpg
今日の花:ルドベキアRudbeckia hirta




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