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三年生編 第111話(1) [小説]

10月5日(月曜日)

「ぐぎぎ……」

いだい。はんぱなく、いだい。
ぎんにぐづうだ。

やっぱり、軽く体ほぐすくらいにしときゃよかった。
いきなりぶっ通しで長時間のスパーリングは無謀だった。
どんなにもやもやが溜まってたって言っても、あれはやり
過ぎだった。

とほほ。

「おい、いっき。どした?」

背後からヤスにばしんとどつかれて悶絶する。

「ぐ……お」

「は?」

「ちと、ぎづい」

「風邪でもひいたか?」

「その方がマシ。からだ……ばらばらになりそう」

僕が悶絶していたのを見ていたのか、立見がバカじゃない
のかって顔で見てる。

「いきなりフルコースをやらかしたんだろ」

「フルコースぅ?」

「トレーニング」

「はあっ?」

ヤスが絶句してる。

「おいおい、いくらいっきがスポーツセンスいいって言っ
ても、普段まともに基礎トレしてないのにフルコースはき
ついぞ」

「そ、その通りで。ございます」

わかっとるわ! ぐぎぎ。
ここんとこ机に向かってばかりで、筋肉ぶったるみきって
たからなあ。

机に突っ伏して悶絶していたら、違和感が。

「あれー?」

珍しい。まだしゃらが来てないな。
いつも予鈴がなるかなり前に学校に来てるんだ。
どうしたんだろ?

と、首を傾げている間に予鈴が鳴って、ホームルームに
なってしまった。
体調崩したとか? いや、それなら昨日の夜に電話かメー
ルで何かアクションがあったはず。

「おはようございます!」

軽やかに教室に入って来たえびちゃんは、ちらっと僕の顔
を見たあとで、事務的に言った。

「御園さん以外は、みんな揃ってるわね。御園さんは体調
を崩されて今日はお休みだそうです」

いや……違うな。
風邪引いたとか腹を壊したとかなら、僕にそう言うはず。
家で何かあったと見た。
体調を崩したのはしゃらじゃなくて、お母さんの方じゃな
いだろうか。

帰りに家に寄って、様子を見てこよう。


◇ ◇ ◇


放課後職員室に寄って、えびちゃんからしゃら用のプリン
トとか配布物をまとめて受け取る。

「引っ越しがあったから、疲れが出たのかしらね」

「そうかもしれません」

えびちゃんは、スリムだけど体力だけはあるしゃらがぽん
と休んだのが心配だったんだろう。
本当にしゃらが体調を崩していると思ってる。
そう思ってくれてた方がいい。

「じゃあ、配布物渡すついでに様子見てきます」

「よろしくね」

「はい」


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