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三年生編 第105話(7) [小説]

無事に授賞式が終わって、そのあと残れる人だけでレセプ
ションということになった。
参加費は一人千円だけど、校長がまとめて払ってくれたの
で、タダ。
もっとも食べるものとかはあまりなくて、ほとんど交歓会
の雰囲気だ。
そう、三校合同交流会のあの雰囲気だ。
懐かしいなあ。

僕がしみじみしていたら、小熊さんがいつの間にか隣に来
ていた。

「あ、こんにちはー」

「君が、プロジェクト創設者の工藤くんかい?」

「あはは。創設者って言っても、一人で何もかもやったわ
けじゃないので」

「ふうん」

「僕ら一期生が蒔いた種を、鈴ちゃんたちや一年生が立派
に育ててくれて、本当によかったです」

「安楽さんに聞いたんだが、いろいろあったそうだね」

「ありました。楽しいことも、悲しいことも、辛いことも、
頭に来ることも、お腹いっぱい」

「はっはっは!」

「でも僕だけでなくて、プロジェクトにいるみんながそれ
をライブで体感してきたんで、いろいろあった方がよかっ
たかなあと思ってます」

「タフだなあ……」

「いや、たくさんの人に手伝ってもらいましたから。とて
も僕らだけではこなせませんよ。校長にもずいぶんヒント
をいただきました」

「なるほどね」

そのあとしばらく黙っていた小熊さんが、こっそり探りを
入れてきた。

「なあ、工藤くん」

「はい?」

「君が助力を受けた人の中に、プロはいなかったのかい?」

ああ、そういうことか。
本当に僕らだけでやったのかどうかを疑っているんだろう。

「プロという言い方が合ってるかどうかは分かりませんけ
ど、最初の頃は何人かの方に助言をもらいました」

「……だれだい?」

「庭造りの基本。精神的なところ。そこは、グリーンアド
バイザーの波斗聡子さんにアドバイスをもらっています」

「!!」

小熊さんが、のけぞって驚いてる。

「うちの、隣家のおばさんなので」

「う……わ」

「僕は会長って呼んでますけどね。会長は、アドバイスは
くれるけど、僕らを突き放してる。君らで考えなさいっ
て。だから中庭の運営とかには、一切口を出さない……て
か、最初から君らの好きなようにやりなさいですね」

「ううむ」

「技術的なことは、尾花沢造園の親方と宇戸野ガーデン
アーキテクツさんに助言をもらってます」

「どっちも有名どころじゃないか」

「親方は、学校から植栽の剪定とかを受注してますし、宇
戸野さんは開学五十周年記念の庭造りを請け負ったうちの
オービーなので」

「ふうん」

「でも、親方も宇戸野さんも忙しい人ですよ。中庭にどっ
ぷり関わる暇なんかありません。アドバイスっていって
も、せいぜい一言二言。あとは、間違いなく僕らの自力活
動です」

「うーん……」

「信じられませんか?」

「有名どころをずらっと並べられてしまうとなあ」

「あはは。会長にしても、親方や宇戸野さんにしても、ア
ドバイスしてくれたのは最初だけですよ。まだ僕が一人で
ばたばたしていた時だけ」


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