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三年生編 第94話(5) [小説]

がたあん!!
永見さんとゆいちゃんが、そろって立ち上がった。

「そ、それって」

「校長の爆弾はそこだよ。夏休みじゃない」

「……」

「違反したことを摘発するための監視じゃなく、その前。
予防措置としての相互監視の導入。そんなの、絶対にやっ
て欲しくなかったけどね」

「う」

「でも、校長が何度も警告し、風紀委員会でも具体例付き
で注意喚起を徹底してたのに、これだもん。僕が校長でも
爆弾を落としたくなるよ」

「でもさあ。実際、どうなるんだろ?」

ゆいちゃんが、心配そう。

「こればかりは僕にも予想付かない。警告としては最大の
ものだから、さすがに効いて欲しいけどね」

「一人違反者が出ただけでもアウトじゃあ……」

「それはないな。多分」

「ないよね」

しゃらも僕の意見に同意。

「一人違反で全員アウトなら、逆にみんなが暴発すると思
う」

「あ、そうか……」

永見さんが納得したようにうなずいた。

「だから、そこはぼかしたんだ」

「そう。停学期間が終わって出てきたやつが、ハクが付い
たって自慢しないように先手を打った。そういうことじゃ
ないかなー」

「それにしてもえげつない」

ゆいちゃんが、ぷうっと膨れた。

「それが安楽校長だよ。決して僕らの味方にはならない。
でもそれでいいと思う」

ノートをぱたっと畳んだ永見さんが、大きな溜息をついた。

「はあああっ……生徒会も、あとが大変だあ」

「まあね。でも、顧問の瞬ちゃんが目を光らせるでしょ」

「わたしらはいいけどさ。後輩はびびっちゃってるから」

「そこらへんは、根性鍛えてもらうしかないよなー」

「ねえねえ」

僕としゃらを見比べた永見さんが、ぐいっと身を乗り出し
てきた。

「プロジェクトの一年で、いい子いないの?」

思わずしゃらと二人で叫んだ。

「プロジェクトは、生徒会役員の養殖場じゃないってば!」


           −=*=−


僕と鈴ちゃんは、校長から前もって審査員特別賞の受賞を
予告されてたけど、実際に受賞が確定したら喜び千倍万倍
だった。
コンテストサイトにもでかでかと高校名が載り、受賞理由
や僕らの集合写真がどどーんと掲載されて、気分がごっつ
盛り上がった。

放課後全部員と顧問の中沢先生が視聴覚室に揃って、全員
で万歳三唱。雰囲気最高!

鈴ちゃんが目をきらきらさせて、ぶちまかす。

「ええと! これで終わりじゃないです! 来年どうする
かは、一年生の間で話し合ってください。来年の主役は一
年生ですから!」

うおおおっす!
一年生部員の間から拳がぽんぽんと突き上げられた。

「そして、もう秋冬花壇の設計スタート! 照準は学園祭
です。他の高校の生徒も中庭を見に来ます。実務班は花壇
の設計と作業予定、企画班はJVのセッティングを急いで
詰めてくださいね。やることはいっぱいありますよー!」

ぱん! ぱん!
あちこちでハイタッチの音が聞こえて、気分が盛り上がっ
たまま臨時総会は解散になった。



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