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三年生編 第93話(5) [小説]

練習は充実してたし大場さんと試合も出来て、すっごいリ
フレッシュした感じ。やっぱ、体動かすのはいいわ。
大学行ったら、サークルはスポーツ系にしようかなあ。

とか考えながら。
真っ直ぐ帰るのはもったいないなーと思って、ジャージの
まま他のフロアを見に行った。

「お?」

打撃系のトレーニングとかも出来るみたいで、パンチング
ボールやサンドバッグなんかが置いてあるコーナーがある。

で。
そこではんぱなく激しい勢いでサンドバッグに蹴りを入れ
てる人が……。

ずしん!
ずしん!

響いてくる音の強さが、その威力を物語っていた。

「すげえ……」

でも、すごいのは蹴りの強さだけじゃなかった。
全身から激しい闘気が噴き出してる。
それも……かなりえげつない。

自分の前にぶっ倒してやりたい奴がいる……そういう標的
がある時の闘気。ひりひりする。

黒いウインドブレーカーのフードを被った状態だったから
顔がよく見えないんだけど、僕と同じくらいの年齢かなあ。

僕がじっと見ていたその視線に気付いたんだろう。
その男の人が振り返って、もろにしまったという顔をした。
僕も、それで誰かすぐに分かった。

「わ! 後野さんやん」

「くどーさーん、なんでここにー?」

にょいーん。とろーん。
さっきの闘気とのギャップあり過ぎ。
思わず腰が砕けそうになった。

「スカッシュコートでたっぷり汗を流してきたとこ」

「そっかあ」

「後野さん、空手とかやってたの?」

なんか、すっごいばつが悪そう。

「いや、俺のは我流っす」

「すごいわ。蹴りが重い。はんぱないわ」

「がりがり削り合いしてたっすから」

あ、ケンカかあ……。
あの双子ほどのがたいはないから、キレとかスピードと
か、そういうところで攻め込む感じだなあ。

「ちょっと……むしゃくしゃしてて」

後野さんが、肩を落としてべっこりへこんだ。

「どしたん?」

「アグリ部の俺の後釜」

「二年生?」

「そうっす。しっかりしたやつだったんで、信用してたん
すけど」

「なんか……やらかした?」

「この前、飲酒とケンカで捕まりやがって」

ぎょえええーっ!?
思わず、その場にしゃがみ込んでしまった。

「そっちもかあ!」

「え? 工藤さんとこも?」

はあ……。
立ち上がって、僕もサンドバッグに思い切りハイを叩き込
んだ。

ずどん!

「わ!」

のけぞる後野さん。

「ぶちのめしてやりたいよ!」

「男?」

「そ。一年生。まあ、ぽんいちはこれまでゆるかったから、
そういうイメージがまだ残ってたんだろうけど」

「補導されたんすか?」

「私服で深夜徘徊。補導員にとっ捕まりやがって! そん
なの、昔はいっぱいいたんだろうけどさ。今は捕まったら
即アウト! 前部長の僕が風紀委員長やってんだから、少
しは立場ぁ考えてくれって」

ごおん……。後野さんが思いっくそぶっこけた。


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