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三年生編 第93話(3) [小説]

「あれ? いっちゃん、出かけるの?」

「久しぶりにフォルサに行ってくるわ」

「へえー、珍しい」

「まあね。でも受験勉強ばっかで体動かしてないから、基
礎体力が落ちちゃってる。本番前に体調崩さないように、
少しだけ戻しとこうかなと」

「それもそうね。遅くなるの?」

「いやあ、二時間くらいかな。誰か試合してくれる人がい
るといいけど」

「分かったー。ちゃり?」

「ちゃりで行く。量があんまりないなら、帰りに買い物寄
れるよ?」

「助かる。まだ会長のサポートが要るから。あとでメール
で流すわ」

「分かったー。あ、母さんは司くんの顔見たの?」

「見たわよー。ご主人似ね。ハンサムボーイ」

「わあお!」

「ご主人が幸せそうだったわー」

「会長は?」

「爆睡してる。それどころじゃないみたい」

「うわ……」

「進くんもそうだったけど、夜泣きがひどいらしくてね」

「そっかあ……会長も大変だー」

「まあ、ずっとっていうわけじゃないし」

「会長が落ちつくまで、少し間を空けた方がいいかあ」

「その方がいいと思う。お義母さまにもすごく気を遣って
るみたいだし。顔を出すなら、同居生活が落ち着いてお産
疲れが取れてからだね」

「分かったー。楽しみだなー」

母さんが、ふうっと大きく息を吐き出した。

「大きな山はもう越えたと思ってたけど、やっぱりいろい
ろあるわね」

「……さゆりちゃんのこと?」

「それだけじゃなくて、勘助さんが亡くなったりとか、寿
乃さんの体調のこととか、他にもいろいろ」

「うん」

「でも、一つ一つベストを探るしかない。今回、いっちゃ
んが森本さんにつないでくれたみたいに、うちは使える縁
がうんと増えてる。それは活かしたいよね」

「そう思うわ」

「さ。時は金なり。さっさと行ってきなさい」

「おっと。行ってきまーす!」


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