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三年生編 第93話(2) [小説]

先生のどやしに気合いが入ってたのは、その生徒のことを
案じてるからだけじゃないね。

プロジェクト立て直しの時に先生がしでかした、とんでも
ないヘマと僕らへの裏切り行為。
僕らは絶対に忘れないよ。
中沢先生も、僕らの信頼を失いかけていたんだ。

先生が名誉挽回するなら、この機会を絶対に逃すわけにい
かないだろう。
僕らにだけでなく、安楽校長にも自分の覚悟を見せること
が出来るからね。

説教は、中沢先生の自発的なアクションていうより、校長
から先生たちに出されていたオーダーだったのかもしれな
い。

処分者の人数が多くなると、自分が処分されたってことの
マイナスインパクトが薄まっちゃう。
だからこそ安楽校長は、大規模な処分発動には慎重だった
んだ。
でも校長は、反動は覚悟の上で今回の処分を決めたんだろ
う。
悪質度を問わず、違反者は厳正に処分するっていう事実を
僕らにきっちり突き付けるために。

それに合わせて、クラス担任や部活の顧問に、処分のイン
パクトが薄れないよう個別指導をしっかりやってくれって
いうプレッシャーをかけたんじゃないかな。

うちはきっちりやってきたけど、人数が多くなるとどうし
ても隅々まで目が届かなくなる。
ホッケー部お取り潰しの時に顧問の先生にまで責任が跳ね
たのを見てたから、中沢先生も万一には備えていたはずだ。

そして、中沢先生の雷は説教だけでは済まなかった。

顧問の裁量で、部員資格、部活参加の二週間停止と、反省
文の提出をその子に科した。
顧問教師として、校則違反した生徒への厳しい処分をみん
なに示したっていうこと。
三月に、これからは顧問として目を光らせるぞって宣言し
たことをしっかり実行したんだ。

僕は、先生がきちんと筋を通したことにものすごくほっと
した。

僕が最初に先生を全力でどやした悪影響が残ると、部員が
中沢先生を軽視しちゃって、大所帯になった部の監督が難
しくなる。実生に指摘された通りだ。
でも先生怒らせたらただじゃ済まないんだぞっていう強い
姿勢が一、二年生からしっかり見えれば、違反の再発は防
げるからね。

二年生部員も全員集合で、校則遵守と基本原則の堅持を改
めて再確認した。その話し合いの内容をもとに、四方くん
から全部員にもう一度厳しく警告するらしい。
まあ、プロジェクトの方はそれでオチが付くと思う。

それよか、僕が気になったのは処分の重さと違反内容だ。

停学くらった二十三人のうち十五人は、プロジェクトの子
とほぼ同じ内容の違反だった。
だから処分としてはまだ軽くて、みんな三日間の停学。

短くても停学は停学。
前科が残ると、大学進学の時に推薦が受けられなくなるん
だよと、校長直々に厳しい現実を突きつけられて。
違反者へのお灸としては、決して軽くなかったと思う。

それでも、そっちはまだいいんだ。
問題は、ほかの八人さ。

えげつないナンパ行為で、絡んだ女の子に被害届を出され
てしまった二人は、無期停。

……論外。

残る六人のうち三人は、窃盗。つまり万引きだった。
これも警察のご厄介に。

三人とも中学で前科があって、再犯だ。
問答無用で三か月の停学。

たかが万引きくらいでそんな重い処分なの?
そう言う子がいたら、そいつも一緒に処分して欲しいな。
初犯ならともかく、前科があっての再犯は反省の色がないっ
てことだよ。高校に来ないで、刑務所行けば?
僕ならそう思っちゃう。

大人でも刑務所にぶちこまれる犯罪で、有期の停学で済む
ならまだ温情処分さ。御の字なんだよ。

あと三人は、飲酒と喫煙でアウト。
十日から二週間の停学になった。
これもね……自己責任がどうたらじゃなくて、法律違反し
てるんだっていうことを理解しろよな。

「ふう……」

僕は、思わず頭を抱えてしまう。

今はぽんいちだけじゃなくて、市内のどこの高校も厳しい
引き締めをやってる。
街中での婦警さんや補導員の巡回頻度もはんぱない。

そういう状況になってるんだってことを風紀委員会を通し
てちゃんと情報提供してるし、学校からも再々警告が出て
る。これでもかと自衛を呼びかけてるんだ。

それなのに、こんなくだらない違反のオンパレードで大量
処分者が出たんじゃ、大高先生も確かにアタマに来るだろ
な。

来週は風紀委員会の顧問が瞬ちゃんに代わって、学校側か
ら綱紀粛正の効果を上げるための叩き台が出る。
そこで、ぎしぎし詰めることになるだろう。

瞬ちゃんが望んでいるような、風紀委員会の骨抜きは出来
そうもないね。

はあ……。


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