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ちょっといっぷく その162 [付記]

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

本編再開後、初のいっぷくになりますね。
夏休み合宿編の前半四話を続けてお送りしました。

量としてはそれほど多くないんですが、とても重要な部分な
のでアップした分を振り返っておきたいと思います。


           −=*=−


まず、合宿スタートの第六十九話。
本来ならば、気合い十分で乗り込まなければならないはずの
いっきなんですが、どうもエンジンがかかりきれません。

それでも、住職さんの重光さんはとんでもなく曲者っぽいで
すし、気合いが入りすぎている立水が一緒ですから、合宿の
準備と打ち合わせであっという間に時間が過ぎてしまいます。

そのままの勢いで夏期講習に突っ込めればまだよかったんで
すが、予備校へ下見に行ったいっきは、エンジンのかかりが
悪いことを講師の高橋先生に見破られてしまいました。

予備校の講師は、高校の教師とは全く性質が違います。
受験生を志望大学に合格させるのが予備校の仕事ですから、
成績を下げる要素を徹底的に排除しに行きます。
そこはものすごくドライなんです。

なんのために大学へ進学するのか。
そのもっとも肝心な動機が弱いいっきの不安を、高橋先生は
あっさり一蹴してしまいました。

「そんなの、後で考えればいいじゃん」

まあ……いっきは絶対に聞きたくなかったでしょうね。
でも、それを無視したり反論するだけの強い意志や方針が、
今のいっきには何もないんですよ。

もやもやだけが増幅してしまいました。


第七十話。
夏期講習初日に、いきなり試練です。
講習の雰囲気が、自分の想定よりもずっとゆるい。
厳しい特訓だろうと覚悟してきたのに、中身が予想以上に
あっさりだった。事前のリサーチが甘すぎた。

それは予備校のせいではありません。
進路コース別にカリキュラムが組んでありますから、コース
選択を誤ったいっきのせいです。
ここで、最初からかかりの悪かったエンジンがストールして
(止まって)しまいます。

それがまずいということは、理屈では分かっているんです
が、心がついていきません。
座礁してしまったところを、講師の高橋先生に再びどやされ
ましたね。

悩む暇があったら、理屈ではなく数値目標を掲げてそれをク
リアしろ。べき論、原則論からさっさと遠ざかれ。
初日のどやしはまだマイルドだったんですが、二回目は容赦
ありませんでした。
いっきは、べっこりへこんでしまいます。

これで気合い入りまくりの立水と比較されたら、本当に撃沈
してしまったかもしれません。
しかし住職の重光さんは、いっきだけではなく、立水の心の
歪みも決して見逃してはくれませんでした。

進学の動機が弱いいっきと、動機が歪んでいる立水。
てめえの人生だろ? どう使うかくらいてめえで決めろ!
重光さんのどやしは恐ろしく直球で、いっきにも立水にも逃
げ場が一切ありません。

今まで自分をごまかしごまかし歩んできたいっきは、ここで
原則に立ち返らざるを得なくなります。


           −=*=−


第七十二話。
それでも夏期講習の期間は、悩みをずっと引っ張れるほど長
くはありません。
コストパフォーマンスを上げないことには、本当に時間と金
の無駄遣いに終わってしまいます。
いっきは、やる気の立て直しに着手しました。

重光さんのどやしが直球ならば、高橋先生のサポートは変化
球でした。
本人がすぐ決められないものを無理に目標にすると、かえっ
て効率が下がる。長期目標なしでかまわないから、目の前の
ことだけに集中したら?

高橋先生の論調は、実は最初から何も変わっていないんです
よ。
でも、まだやる気があった最初は先生の言葉に反発を覚えた
のに、重光さんのどやしで心がくじけたあとは同じセリフの
違う側面が見えるんです。

おもしろいですよね。

そしていっきのエンジン再始動のきっかけは、立水が先にリ
スタートしたことでした。

いっきは、本心では自力で立て直したかったでしょう。
でも高校に入ってからの挫折としては、しゃらともめた時以
上に規模が大きかった。ショックがでかすぎたんです。
それが一回きりのヘマではなく、自分の内面の弱さの蓄積か
らくるもの……身から出た錆でしたから。

あいつには負けたくない。
他力本願な反発ではありますが、まずは転んだところから立
ち上がる方が先。強制的に気持ちを切り替えましたね。

そこらへんが、いっきの成長したところかなあと思います。


そして第七十三話。
エンジン再始動に合わせて、自分の思考も切り替え始めた
いっき。
やっとその馬力が活かせるようになってきました。

家出少女による騒動も、もしいっきが一、二年の時ならお節
介に発展したかもしれません。
でも、自分の人生くらい自分で使えという重光さんのどやし
をきっちり実行します。

実際、出足からつまずいて出遅れているいっきは、今それど
ころじゃないですから。


           −=*=−


文量的には比較的コンパクトな四話でしたが、中身はずっし
りシリアスにしたつもりです。

進学で全てが決まるわけではありませんが、ずっと親の庇護
下で育ってきた子供にとっては、初めて自分自身の意思で未
来を選びとろうとする大きなチャレンジになります。
いっきも、その例外ではないということですね。

わたしはその学年の時にどうだったかなと。
往時のことをいろいろ思い出しながら、受験生としての悩み
と苦闘をコンパクトにまとめたつもりです。

ちなみにわたしは、将来の職業につなげるという目標設定型
ではなく、自分の興味あること、おもしろそうなことがあり
そうという観点で進学先を決めました。

いっきではなく、陵大付属の武田くんの発想に近かったです。


           −=*=−


さて。この後再び夏期講習合宿編の後半をお届けします。

前半は迷いや葛藤はありつつも、勉強に集中していたいっき
でしたが、後半には予期しなかったアクシデントが発生しま
す。それを軸に三話続けてお届けしてまいります。


ご意見、ご感想、お気づきの点などございましたら、気軽に
コメントしてくださいませ。

でわでわ。(^^)/




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空に届かぬ 手を伸ばし

空に届けと 目を見張る



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JUNKO

枝を空高く広げる木のシルエット、大好きです。希望を感じるのです。
by JUNKO (2018-02-22 11:22) 

水円 岳

>JUNKOさん

コメントありがとうございます。(^^)

今は空を透かしている枝の景色も、あと一ヶ月ちょっとで
青葉の傘の下に隠れますね。(^^)
少しずつ、春が萌してきました。

by 水円 岳 (2018-02-22 23:58) 

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